平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

東野圭吾・手紙~人と繋がるということ

2011年05月26日 | 邦画
 強盗殺人で服役中の兄(玉山鉄ニ)のために、「殺人犯の弟」というレッテルを貼られた武島直貴(山田孝之)。
 直貴は様々な迫害を受ける。
 アパートのドアには「人殺し」の落書き、工場では差別、コメディアンとして成功するが、「殺人犯の弟」ということがマスコミに暴露されるのを怖れて引退。大好きで結婚したいと思っていた女性とも破局。
 「すべては兄さんのせい」と恨むようになった直貴は、刑務所から送られてくる兄からの手紙に返事を出さず、兄との関わりを断とうとする。
 そして……。

 原作は東野圭吾。
 犯罪者の家族というテーマを扱った作品だが、底流に流れるのは<人との絆>ということ。
 直貴は現実がうまく行かず、兄ばかりでなく周囲の人間との関係をどんどん切っていく。
 しかし、そこに救いはない。
 孤立した人間にとって、世界は自分を脅かす<恐怖>であり、倒すべき<敵>でしかない。
 そんな世界と和解する方法は、人と繋がることだ。
 繋がるは誰かといっしょにいるということだけではない。
 この作品の兄と直貴の関係の様に<手紙>で繋がる方法もある。
 繋がりたいと思っていた人から寄せられた手紙の束は、もらった人にとって生きる糧になる。

 だから直貴から絶縁状の様な手紙を送られた兄は絶望するし、この作品のラストシーンの兄の姿は見ている者の胸に迫る。

 どんな形でもいいから人と繋がること。
 電線で繋がっていない電柱はとても寂しい。
 

コメント (4)
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