平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

宮沢賢治のすごさ

2009年10月11日 | 小説
 宮沢賢治というのはオンリーワンですごい作家ですね。

 賢治が童話の中で登場させてきた素材は次のようなもの。
 <動物><鳥><植物><鉱物><星座>
 童話で動物や鳥を扱うものはよくあるが、<鉱物><星座>は滅多にない。
 たとえば「銀河鉄道の夜」のアルビレオの観測所。
 この描写では「青宝玉(サファイア)と黄玉(トパーズ)の大きなふたつのすきとおった球が、輪になって静かにまわっていました」とある。

 科学の視点が入っているのもすごい。
 同じく「銀河鉄道の夜」では川を流れる水について<水素>よりも透き通っているという表現がある。
 三次元、四次元という意味合いの表現もある。

 また賢治には仏教の視点もある。
 賢治が熱心な法華経信者であったことは有名だが、ダイヤモンドをダイヤモンドと表記せず、10の力を持つという仏教用語の<金剛石>と表記している。
 先程の青玉(サファイア)、黄玉(トパーズ)のことで言えば、サファイアには世界の基盤、トパーズには太陽、火といった意味合いがあるそうだ。
 賢治がこれらの鉱物に込めた意味はどのようなものであろう。

 このように賢治の世界は実に豊か。
 その守備範囲は、元素の世界からはるか彼方の宇宙までとてつもなく大きい。
 これは自己の内面のみにこだわった自然主義文学や書斎にこもり文章世界の完成のみを目指した芥川などとは大きく違う。
 賢治には普通の人はもちろん、既成の作家が見ていないものが見えている。
 この賢治の作家としてのオンリーワン、特異性の理由は何であろう。
 そして科学などの専門用語を使いながら、その作品世界は違和感なく、かつ美しい。

 そして宮沢賢治の作品を読むわれわれは、物語の中に織り込まれた何気ない一文や一節に心奪われるのである。


 「銀河鉄道の夜」レビューはこちら




コメント
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