桃井章の待ち待ち日記

店に訪れる珍客、賓客、酔客…の人物描写を
桃井章の身辺雑記と共にアップします。

2013・5・8

2013年05月09日 | Weblog
夕べ法律事務所勤務のNさんからいただいた稲荷寿司は半日経ったので一度トースターで炙って焦げ目をつけて、更に店で残った麻婆じゃがいもに長ねぎを加えてより一層中華料理風にふリフォーム、そして同じく残り物のかぶとキュウリのチリメンサラダ、豆腐のガーリックステーキを持って母の処へ。残り物だけじゃ何なので、Iから貰った生鰈を焼いてお吸い物にしての老老ランチ。でも、それを食べきって一休みしたかと思ったら2時半過ぎには母の家を出て、広尾の業者専門の食料品店と六本木のスーパーで仕入れして4時には店に出て、今日の料理を作り始める。昨日は長ナスにソーセージを挟んだのホットドッグ風を作ったが、食べてくれた社長秘書のYさんに食べづらいと不評だったのでミートソース仕立てに変更して作る。そして予め焼いておくのは少し抵抗があったけど、オーダーがあってから焼くのは手間なので、鰯を四尾焼いて付け合わせのジャガイモと一緒にお皿に盛っておく。他には昨日と同じくカブとキュウリのチリメンサラダ、タラモサラダ、バカリャウのコロッケなどを用意しておく。更に定番のトリッパを煮込み、パスタソースとポルトガル風玉子焼きを作り、カウンターにお通し代わりのゆで卵と五月からおくことにしたポッキーとバナナチップを用意して、いざひとり営業の開始。でも、さすがにこれだけの料理を作るとバテテしまって、カウンターの中の椅子に座りこむとしらない間に眠り込んでしまう。その間、10分か20分か?幸いお客さんはまだ見えてなかったので安心したが、うたた寝というより熟睡で、我ながらいやになる。気を取り直して珈琲を飲みつつ一昨日買い求めた「檀」(沢木耕太郎)を読みながらお客さんを待つ。家族に愛されつつ恋に溺れ、放浪の末にポルトガルに一年半も住み着いた檀一雄の生涯は代表作「火宅の人」で有名だったが、沢木耕太郎が檀一雄の未亡人に週一で取材して一人称ドキュメントに仕上げたこの「火宅の夫人」の凄さは時間を忘れてついには最後まで読み切ってしまう。ふと時計を見ると9時50分‥‥ええっ、ということは6時半頃から三時間半近くも読書タイムだった訳?‥‥それはそれだけ夢中になれた訳で嬉しいことは嬉しいんだけど、それはつまりお客さんがひとりもいらっしゃらなかったということで‥‥まさかこのまま終わってしまったら折角作った料理はまたも老老ランチ行きか?でも、いくらなんでもこんなに沢山は二人で食べきれないぞと思っていたら、いつも妖しい魅力をふりまく歯科医のSちゃんが、続いて映画プロデューサーのKさんが、更にはSミュージックの関連会社社長のTさんたちが続けて来店して、鰯やナスやタラモサラダなど料理をオーダーしてくれて、ホッと一安心。でも、このまま更にお客さんが続いてくれたらとの思いも虚しくお客さんはこの四人のみ。レジにお金はたまらず、たまるのは残り物だけ。明日は用事があって老老ランチにはいけないし、ウチの部屋の冷蔵庫が残り物で埋まってしまう。それでも明日もまた違う料理を作る。そして多分料理があまる。これもひとり営業故のことなんだけど、この矛盾には目を瞑らなくては。