最近は仕事のことで頭は一杯でなかなかAN嬢に変身出来ないとぼやいていたTさんが入ってきた時、カウンターには30前後の魅力的な女性5人が陣取っていた。一昨日は朝まで店の仕事を手伝ってくれた美人OLのJ子ちゃん、四月にウチのスペースで最新作『二人の生活』を上映する自主映画監督のHK、俺と八年近く食事友達を続けていて今日はすき焼を食べに来てくれたS、創業時からその化粧品会社に携わり、今や年商百億以上もの売上を上げるまでに躍進させた、実質上の社長でもあるMちゃん、そして来月からウチの店で週三回働いてくれることになった女優のMちゃん(あ、彼女だけはまだ26だけど)。更にカウンターの中にはTちゃんとMちゃんがいる。男は俺だけ。今日こそは仕事のことを忘れてAN嬢に変身してストレス解消を試みようとしていたT氏だったが、これだけ魅力的な女性に囲まれると、いい加減な女に変身する訳にはいかず、今日も最後までAN嬢に変身出来ないまま帰ることになったのが何となく切なくておかしい。いや、この女性陣に圧倒されていたのはTさんだけじゃない。若いのにモルトファンのU君や常連のFさんもいつもより口数が少ない。ウチは魅力的な女性が集う店と云うのを売り文句にしているけど、これだけ多いと男性陣が萎縮してしまって少し考え物だ。とか何とか云って、内心喜んでいる俺がいるんだけど……。