元・還暦社労士の「ぼちぼち日記」

還暦をずっと前に迎えた(元)社労士の新たな挑戦!ボチボチとせこせこせず確実に、人生の価値を見出そうとするものです。

辞める前の有給休暇のまとめ取り、上司から忙しいので駄目と言われたのだが・・・?!

2011-05-08 05:40:55 | 社会保険労務士
「ひるおび」の番組の中から(3)<ジャッジマン>

1 ひるおびの番組、八代弁護士が解説する「ジャッジマン」のコーナーから、の第3問です。退職前、2週間の有給休暇をまとめて取得しようと有給休暇を請求したところ、上司から困るといわれました。それでも、有給休暇を取得することができるか?というものです。 

2 有給休暇は、基本的には、いつ休むと労働者が指定すれば、その時点で与えられなければならないものなんです。労働者の権利となっており、いわゆる、会社が「承認」の類(たぐい)や、ましてや「許可」を与えるものでは、ありません。(会社の就業規則に、まだ承認の文字があるものがあるとすれば、妥当ではありません。ましてや許可の表現は避けてください。その場合は、その就業規則は見直した方がいいですね。)

3 一つだけ、有給休暇が有効に成立しないのは、使用者が「時季変更権」を行使したときだけです。時季変更権ということばを使ってしまいましたが、会社の社長さんは、このことば「時季変更権」は、是非とも覚えていた方がよいと思います。これは、請求された時季に有給休暇を与えることが「事業の正常な運営を妨げる場合」は、他の時季に変更できるというものです(*これも前に言いましたが、時季という季節ーシーズンの季の字が使われています。表記誤りではありません。)。この場合は、労働者の意に沿わなくても、時季を変更することができ、年度を越えてでも変更は可能ということになっています。

4 しかし、この「事業の正常な運営を妨げる場合」という抽象的な表現、なかなかクリアーするのは困難です。というのは、こういう裁判例があります。「代替勤務者確保のための対応等を考慮し(この場合、確保の具体的行動までは必要とせず)、使用者が通常の配慮をしたとしても代替休暇が困難であると客観的に認められるとき」(電電公社関東電気通信局事件、最高裁判所平成7年)とされていますので、例えば、休暇を取る者が多く、必要配置人員がいない場合が考えられています。
 経営者として、少なくてもその時季に労働者が休暇が取れるように、何らかの努力をすべきで、それをせずに単に忙しいだけの理由では、ダメということになります。

5 もう一つの論点ですが、仮に、時季変更権を行使できる場合であったとしても、退職までずっと2週間の有給休暇を請求していますから、辞めてから、休ませるわけにもいかず、この意味からも、時季変更権は行使できないことになります。

6 では、ジャッジマンの解答です。設問の「この2週間のまとめ取り」をしたところ、単に上司が「困る」というだけでは、時季変更権は行使できないと思われますので、休めるということになります。

7 さて、第1問で出てきました、パートの有給休暇の取得可能の件に併せると、パートの方でも有給休暇のまとめ取りが可能ですが、パートの方でそれを知ってる方は多くなっています。特に連休中に、昼時の番組の中で、八代弁護士のように説明される方がいらっしゃるということは、これまた、周知の事実ということになります。八代弁護士が言わなくても、インターネットで調べれば、すぐわかる世の中になっています。

8 そこでですが、パートの方で、会社を辞めるとなれば、有給休暇のまとめ取りをする方が増えてきていると聞いています。辞めるまでは、なんとか来たけれども、辞めるとなると会社のローヤリティー(忠誠心)なんかありません。権利があればそれを主張することになります。私の退職の場合でも(「でも」かとつっこみが来そうですが・・・)やはりそうでしたので、経験者語るです。その方が重要ポストを占めている場合など、引き継ぎもしないで出ていくになれば、これはもう最悪です。特に、週4日勤務のパートの場合を考えますと、2年目も続けて雇った場合は、有給休暇は2年間時効にかかりませんので、1年目の7日、2年目は8日となりますから、併せて15日有給休暇の権利が発生しますので、設問のように、辞める前の2週間のまとめ取り休暇が請求できます。

8 経営者の方に申し上げます。そうなる前に、有給休暇が取れる時にちゃんちゃんと取らせておいた方が、会社のためになると思われます。就業規則にもちゃんと比例付与についても記載(「比例付与」については「ひるおびの番組から(1)」参照)しておいた方が利口というものです。逆に、就業規則には、常勤者の有給休暇の日数だけを記載し、労働条件通知書・労働契約書の中でも、休暇は一般労働者に同じとの表現しかなく、比例付与のことが全く書かれていないとすれば、パートの方から、常勤の方と同じ勤務6か月目にまるまる10日間の有給休暇を与えろといわれても仕方がありません。就業規則そのものがトラブルのもとになりますので、あなたの会社の就業規則、一度調べてみませんか。
      
  
 

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