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配転命令(転勤・職務変更)の有効性=3つの権利の濫用にあたらないことが必要

2021-12-05 09:21:23 | 社会保険労務士
 厚生労働省「労働条件に関する総合情報サイト」で東和ペイント事件を総括して基本的方向性を出す

  配転命令とは、同じ企業内で職務場所(転勤)や職務の内容が変わること(職務変更)を言いますが、これについては、東亜ペイント事件で最高裁まで争われ、包括的な一定の結論がなされているようです。厚生労働省は、この裁判を整理し、配転命令が無効とならないチェックポイントとして、次のような2つのものを示しています。

 ① 就業規則に、業務上の都合により転勤や配置転換を命じることができる旨が定められており、実際にこれに基づき転勤が頻繁に行われ、雇用契約で勤務地や職種が限定されていない場合には、企業は労働者の同意なしに転勤や配置転換を命じることができます。
 ② 転勤や配置転換命令について、A業務の必要性がない場合、B不当な動機・目的が認められる場合、C労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせる場合等特段の特段の事情がある場合は、その転勤や配置転換命令は権利の濫用にあたると考えられます。

 国の方で判例をまとめたもので、判例よりはやさしい文章で書かれてはいます。これをさらに言い換えます。
 配転は、勤務地限定社員や職種限定社員には一般的には認められないことから、この限定社員を除くと、就業規則で転勤・配置転換(以下「配転」という。)ができる旨が定められ実際も配転がよく行われている場合は、個々の労働者の同意なしに配転命令は有効になる。
 ただし、権利の濫用とされる場合として、上記の②のA、B、Cの3つのケースを挙げ、これに該当しない ことが配置転換が有効な条件となる。

 3つのケースについては、前の2つ、A業務の必要性がない場合(※注※) B不当な動機・目的がある場合では、会社側が恣意的に故意的に行う場合ですので、これは経営者の方で戒めればクリアできる問題です。3つ目の労働者の甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせる場合とは、程度問題でなかなかむずかしい判断です。ただ、家族に病人などを抱え自分が転勤しなければならないとなると家庭の維持が困難となるような場合ですので、これも従業員の家庭の都合などを考えて、会社側が運用していれば問題はないように思えます。

 結局、適正な手続きを行った配転命令は、現在考えられている3つのケースである権利の濫用にあたらない限り、配転命令は有効と考えられます。でも、いくら有効でも、会社側が強引に配転命令を行うことは、トラブルの原因となります。組織の活性化や本人の業務へのマンネリ化を防ぐ意味が配転にはありますので、そこらを十分従業員に納得させないと、社員のモチベーションにはつなげられません。
 しかしながら、会社側がいくら誠意も持って対応したとしても、中には従わない者いるでしょう。これに対処しないければ職場の雰囲気に悪影響を与えます。そんなときには、手続きを踏んだ上で、退職勧奨や解雇等の懲戒処分を検討しながら行っていくこともやむを得ないでしょう。 

 (※注※)高度の必要性は要しなく、経営上の観点からの異動であればよいとされる。

 

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