勝海舟は幕府軍が鳥羽伏見の戦いで敗れていよいよ官軍が江戸へ総攻撃をかけてくるという、正に江戸が騒乱状態の時に幕府の役人を頼らず、街火消しの新門の辰五郎など庶民の力を頼りにしていました。
「新門の辰などは、ずいぶん物のわかった男で、金や威光にはびくともせず、ただ意地づくで交際するのだから、同じ交際するには力があったヨ。
官軍が江戸城へ押し寄せてきたころには、おれも考えるところがあって、いわゆる破落漢の糾合にとりかかった。それはずいぶん骨が折れたヨ。毎日役所から下がると、すぐに四つ手駕籠に乗って、あの仲間で親分といわれる奴どもをたずねてまわったが、骨が折れるとはいうものの、なかなか面白かったヨ。「貴様らの顔を見こんで頼むところがある。しかし貴様らは、金の力やお上の威光で動くひとではないから、この勝が自分でわざわざやってきた」と一言いうと、「へー、わかりました。この顔がご入用なら、いつでも御用に立てます」というふうで、その胸のさばけているところなどは、実に感心なものだ」(勝海舟・氷川清話より)
「新門の辰などは、ずいぶん物のわかった男で、金や威光にはびくともせず、ただ意地づくで交際するのだから、同じ交際するには力があったヨ。
官軍が江戸城へ押し寄せてきたころには、おれも考えるところがあって、いわゆる破落漢の糾合にとりかかった。それはずいぶん骨が折れたヨ。毎日役所から下がると、すぐに四つ手駕籠に乗って、あの仲間で親分といわれる奴どもをたずねてまわったが、骨が折れるとはいうものの、なかなか面白かったヨ。「貴様らの顔を見こんで頼むところがある。しかし貴様らは、金の力やお上の威光で動くひとではないから、この勝が自分でわざわざやってきた」と一言いうと、「へー、わかりました。この顔がご入用なら、いつでも御用に立てます」というふうで、その胸のさばけているところなどは、実に感心なものだ」(勝海舟・氷川清話より)