「全体大きな人物といふものは、そんなに早く顕れるものではないよ。通例は百年の後だ。今一層大きい人物になると、二百年か三百年の後だ。それも顕れるといつたところで、今のように自叙伝の力や、何かによつて顕れるのではない。二、三百年も経つと、ちやうどそのくらい大きな人物が、再び出るじや。其奴が後先の事を考へて見て居るうちに、二、三百年も前に、ちやうど自分の意見と同じ意見を持つて居た人を見出すじや。そこで其奴が驚いて、成程えらい人間が居たな。二、三百年も前に、今、自分が抱いて居る意見と、同じ意見を抱いて居たな、これは感心な人物だと、騒ぎ出すやうになつて、それで世に知れて来るのだよ。知己を千載の下に持つといふのは、この事さ。」(勝海舟「氷川清話」より)
いつの時代も人物待望論が出て、他人事のように語りますが、時代を創り変えていくのは私たち一人ひとりの行動でしかありません。経歴や肩書きや地位にこだわっているようでは、現状のままで変わりようがありません。一人ひとりが社会を良くしていこうとそれぞれの場で行動することによって社会が良い方向に変わっていくのではないでしょうか。そこから人物も顕れてくるでしょう。来年が良い年でありますよう心改めて迎えたいと思います。