goo blog サービス終了のお知らせ 

Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

敗血症性ショックにおける腎臓の構造と機能

2016年11月15日 | 腎臓
そして二つ目。

Maiden MJ, Otto S, Brealey JK, et al.
Structure and Function of the Kidney in Septic Shock. A Prospective Controlled Experimental Study.
Am J Respir Crit Care Med. 2016 Sep 15;194(6):692-700. PMID: 26967568.


15匹の羊。10匹はE.coliを投与して敗血症モデル、5匹はコントロール。48時間にわたり、プロトコルに基づいて鎮静、換気、昇圧、補液を行い、腎機能、腎血流、腎の酸素消費量と乳酸産生量、そして定期的に腎生検を行なって組織を評価。その結果、コントロール群に比べ敗血症群は昇圧剤が必要となり、血中乳酸値が高値となり、明らかな乏尿とクレアチニン上昇を起こしたが、腎血流、腎の酸素消費量、乳酸産生量、そして組織学的にもコントロール群とほぼ違いを認めなかった。

AKIはCKDになり得るので、もちろんずっと構造的な異常を起こさない、ということではないだろうけど、どうも初期の腎機能低下は、以前から言われているような、腎血流の低下や尿細管障害などではなく、もっと機能的なものであろう、という話。
このグループはずっとこの動物モデルを使っていろいろな実験をしているけれど、一つの集大成だろうか。そしてAJRCCM。素晴らしい。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

βラクタムの持続投与についてのメタ解析

2016年11月14日 | 感染
先日、AJRCCMのemail alertが4つ分まとめて送られて来た。9月後半〜11月前半までのやつ。
ああ、またチェックするのを忘れていた。どうもAJRCCMはemail alertの調子が悪い。
でも普通はいつのまにか来なくなるのがパターンなのに、今回は古いやつもまとめて送って来たということは、僕個人のメアドの登録がおかしくなったのではなくて、雑誌社側の問題ということだろうか?

とりあえず、全部見た。
その中から二つ紹介。両方とも9月のやつ。
まず一つ目。

Roberts JA, Abdul-Aziz MH, Davis JS, et al.
Continuous versus Intermittent β-Lactam Infusion in Severe Sepsis. A Meta-analysis of Individual Patient Data from Randomized Trials.
Am J Respir Crit Care Med. 2016 Sep 15;194(6):681-91. PMID: 26974879.


βラクタムを間欠で投与するか持続で投与するかを比較した3つのRCTのメタ解析(N=632)。各研究者から症例の情報を集めた、individual patient dataを使用。持続群と間欠群の病院死亡率は19.6% vs. 26.3%(P=0.045)、感染の臨床的治癒率は55.4% vs. 46.3%(P=0.021)。

いよいよ機が熟しましたね。
あとは大きなRCTの結果を待つばかり。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

IVC径の呼吸性変動とPPVの比較

2016年11月13日 | 循環
Theerawit P, Morasert T, Sutherasan Y.
Inferior vena cava diameter variation compared with pulse pressure variation as predictors of fluid responsiveness in patients with sepsis.
J Crit Care. 2016 Dec;36:246-251. PMID: 27591389.


タイの研究。補液を必要とする29例の敗血症患者。全例で一過性に筋弛緩が投与され、調節呼吸を受けている。補液施行前後で、PPV、IVC変動、SVV、およびCOを測定。COが15%以上増えた症例をresponderとした。その結果、16例がresponderとなり、それぞれの感度・特異度は、PPV:100% and 84.6%、IVC変動:75% and 76.9%、SVV:81.3% and 76.9%だった。AUROCはPPVが0.909、SVVが0.812、IVC変動が0.688。

特に、新たに言いたいことはない。下記参照。

IVC径の呼吸性変動の精度
補液反応性の予測:SVC vs. IVC

そろそろ、もういいんじゃないだろうか。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

経管栄養の投与量

2016年11月12日 | 消化器・血液
Al-Dorzi HM, Albarrak A, Ferwana M, et al.
Lower versus higher dose of enteral caloric intake in adult critically ill patients: a systematic review and meta-analysis.
Crit Care. 2016 Nov 4;20(1):358. PMID: 27814776.


経管栄養の投与量を比較したRCT(もしくはquasi RCT)21研究をまとめたメタ解析(N=2365 vs. 2362)。投与量が少ない群は多い群に比べ、病院死亡率(RR 0.953)、ICU死亡率(RR 0.885)、院内感染(RR 0.982)、人工呼吸期間、ICUおよび入院期間に差は無し。血流感染(11研究、RR 0.718)、RRTの必要性(5研究、RR 0.711)は投与量が少ない群で少なかった。

とはいってもメタ解析だし。本当に少ない方がいいかどうかはわからない。というか、いつのまにやら少ない方がいいかもしれないことになっている。ついこの間まで、ターゲットにいかに早く達するかが話題だったのに。

20年前、僕がICUを始めた頃、栄養投与をどうすればいいかについての情報はほとんどなかった。21世紀になってRCTがいろいろ行われるようになったけど、やっぱりどうしたらいいのかよくわからない。
極端なことをしなければ、何(経管・経静脈)をどう(投与量、微量元素、ビタミン、蛋白)投与しても、予後に与える影響はそれほど大きくない、という気もする。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

慈恵ICU勉強会 161101

2016年11月11日 | ICU勉強会
1日 敗血症と補液

先日の文献紹介と関連した話題。
利用可能な根拠をまとめてみても、やはりこっち方向に結論は向かう。
ただ、振り子の法則でまた揺り返しが来るかも、というのがちょっと心配。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

”スパズム期”の話の続きの続き

2016年11月10日 | ひとりごと
さらに続き。
どうしてこんなくだらないことが気になるのか、疑問に思われるかも。
ただの名称なんだから、どうでもいいじゃんね。

そんな人には、以前紹介したこの研究を送ります。
くも膜下出血のスパズム予防

メタ解析もある。
Shen J, Pan JW, Fan ZX, et al.
Dissociation of vasospasm-related morbidity and outcomes in patients with aneurysmal subarachnoid hemorrhage treated with clazosentan: a meta-analysis of randomized controlled trials.
J Neurosurg. 2013 Jul;119(1):180-9. PMID: 23641823.


スパズムは減らすけど、予後は改善しない。それはどういうことか。詳細は分からない。
でも、SAHで困るのは、急性期に一時的に神経学的所見が悪化することではなく、それが永続的に残ることであって、どうも永続的な障害にスパズムは(あまり)関与していないらしい(カッコをつけたのは、まったく関与してないとは言い切れなかったので)。
どうも、スパズムというのはSAH患者にとってサロゲートマーカーでしかなさそう。言い切れないけど。

スパズムを予防したり治療したりしても、SAH患者の予後改善にはつながらなさそうなのに、スパズム期だからどうこう、という会話をするのはおかしいだんべ。そういう名前で呼んでしまうと、まるでそれが大事なことのように思えちゃう。というか、スパズムがSAH患者の予後に強く影響すると思っている人は少なくないんじゃねーべか。

SAHの急性期と呼ぶ。簡単だべ?
だべだべ?
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

”スパズム期”の話の続き

2016年11月09日 | ひとりごと
これの続き。
そうだ、phaseという単語も”期”という意味で使うね。
ということで、前回の文献6つ(4つのレビューと2つのガイドライン)の中に使われているphaseという単語を検索してみた。
その結果、一つだけ(またもやStrokeのガイドライン)、vasospasm phaseという言葉を見つけただけで、それ以外はなかった。

で、気がついたのだけど、acute phaseという表現がたくさんあった。
そうだよね、単純に”急性期”と言えばいいんだ。
「SAHの急性期なので、DCIの発生が心配だから、もう少しICUで経過観察しましょう」とかね。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

またいつもの、収縮期血圧と平均血圧の話。

2016年11月08日 | ひとりごと
先日、ある病院のICUに見学に行った時のこと。
IABPが入っていて、血圧がだいたい95/25(45)の患者さんがいた。慈恵のICUだったら、ちょーショックだと大騒ぎになってると思うのだけど、もちろん誰も気にしていなかった。だって、”血圧が90"以上あるんだもの。

【コラム】収縮期血圧と平均血圧: “血圧90”って何?

確かに、
・SBPとMAPのどちらを循環管理の指標として使用するかを比較したRCTは多分存在しない
・MAPのターゲットを60よりも低くしたらどうなるかについて検討したRCTは多分存在しない
観察研究はいくつかあるのだけど、RCTがない以上、こういう患者管理が絶対に間違っていると言うのはちょっと難しい。

でも、生理学的にもA-lineの測定原理的にも、SBPを指標に管理をする行為の正当性は説明できないし、そういう仮説は立てられない。ということは、SBPとMAPを比較するRCTは将来的にも行われないだろうと思う。ということは、現在利用可能な根拠に基づいて臨床をするしかなくて、ということは、MAPを指標にするしかないという結論しか出てこないはず。

ただし。
例えばSBP>90をターゲットにしていると、一定の頻度でMAP的にはショックな状態を放置することになる。例にあげた患者さんみたいにね。そこが問題だと感じるのだけど、でも例えば、酸素投与の有害性を考慮して、すべてのICU患者のSpO2のターゲットを90%くらいにした方がいいかもしれない、という可能性はあって、実際に研究も行われている。それと同じで、ノルアドの有害性も言われているので、MAPのターゲットをもっと下げた方がいいかもしれないという仮説を検討する研究は、将来的には行われる可能性はゼロじゃない。

ふーむ。
では今のままでいいのだろうか。実際、慈恵だってICUの外に行ったらほぼ誰もMAPなんか気にしていない。強い根拠がないので、強く勧めることはできない。
ふーむ。

ところで最近、このブログを訪問してくれる人の数がちょっと増えた。
なので、またいつもの、と言ってもわかってもらえないかもしれないので、過去ログをまとめておく。

平均血圧と収縮期血圧
血圧の話の続き
血圧の話の続きの続き
収縮期血圧の馬鹿らしさ
収縮期血圧の馬鹿らしさ2
収縮期血圧の馬鹿らしさ3

はっはっは。
同じことしか書いてないわ。はずかし。
だって、情報増えないんだもーん。
誰か、感動的な研究やってくれー。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

敗血症性ショックと補液の制限

2016年11月07日 | 循環
Hjortrup PB, Haase N, Bundgaard H, et al.; CLASSIC Trial Group; Scandinavian Critical Care Trials Group.
Restricting volumes of resuscitation fluid in adults with septic shock after initial management: the CLASSIC randomised, parallel-group, multicentre feasibility trial.
Intensive Care Med. 2016 Nov;42(11):1695-1705. PMID: 27686349.


デンマークとフィンランドの9つのICUで行われたRCT、151例の敗血症性ショック、少なくとも30ml/kgの補液が6時間以内に行われたにも関わらずショック状態。重篤な低灌流があると思われた時のみ補液をするか、循環の指標の改善があるかぎり補液をしてよいか、の二群に割り付け。Primary outcomeは5日間およびICU滞在中の補液量。その結果、制限群で補液の量がそれぞれ1.2L、1.4L少なかった。さらに、制限群の方が虚血イベントが少なく(p=0.11)、AKIの悪化が少なく(p=0.03)、90日死亡率も低かった(p=0.32)。

タイトルにもあるし、primary outcomeを見ても分かる通り、大きなRCTをやれるかどうかチェックするのが研究の目的だし、いろいろツッコミどころがある(1.2Lしか違わないのにそんな予後の差が出るか、とか)ので、結果はあまり意味がない。

とはいえ、好きな結果、ではある。。
フッ、やっと時代が俺に追いついてきたか
と、思っていたり、思っていなかったり。

これで3つ連続して紹介したけど、今月のICMはチョー面白い。
紹介したもの以外でも、ダウンロードしまくらちよこだったぜい。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ICUで働く人は燃え尽きるか?

2016年11月06日 | ICU・システム
という意味かと思ったけど、よく見たら"this"が入っていた。
まあどちらにしろ、強く"YES"ですけど。

Bienvenu OJ.
Is this critical care clinician burned out?
Intensive Care Med. 2016 Nov;42(11):1794-1796. PMID: 27530295.


2ページちょっとの短い文章。
架空の集中治療医の例をあげ、
・バーンアウトとは何か
・バーンアウトするとどうなるのか
・バーンアウトの危険因子は何か
・バーンアウトの予防因子はあるのか

すぐに読めるし、参照文献もいくつかあるし、僕と同じように強くYESな人は読んでみたら?
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする