驚くべきというか、残念な出来事がありました。
日本の研究者が、臨床データの捏造により168もの文献を発表した可能性を示唆するデータがAnaesthesiaに掲載されました。
Carlisle JB.
The analysis of 168 randomised controlled trials to test data integrity.
Anaesthesia. 2012 May;67(5):521-37. PubMed PMID: 22404311.
また、Anaesthesiaにはこの事件に関連して4つのeditorialが掲載されています。
更には、この研究者の文献を掲載した雑誌の編集者たちが連名で日本の施設に送ったレターなど、この事件にどのように対応したかも分かります。
http://onlinelibrary.wiley.com/journal/10.1111/(ISSN)1365-2044
つい1年前にドイツの研究者が発表した90の文献が麻酔集中治療系の雑誌から掲載中止になったということがありましたが、今回は日本人、かつ文献の数も多い。
非常に残念です。
データを捏造するとバレる。やめましょう。
さて、気を取り直して。
先週も面白そうな文献が目白押し。
Needham DM, Colantuoni E, Mendez-Tellez PA, et al.
Lung protective mechanical ventilation and two year survival in patients with acute lung injury: prospective cohort study.
BMJ. 2012 Apr 5; PubMed PMID: 22491953
Low tidal volumeの有効性を、実際の臨床で前向きに調査。ちゃんと換気量を少なくすると長期予後が7.8%改善。
Christensen MC, Morris S, Vallejo-Torres L,
Neurological Impairment Among Survivors of Intracerebral Hemorrhage: The FAST Trial.
Neurocrit Care. 2011 Oct 6. [Epub ahead of print] PubMed PMID: 21976257.
脳出血に対するFactor VIIaの有効性について検討したFAST studyのpost hoc解析。脳出血患者の神経予後に関連した因子について検討。最初の24時間で収縮期血圧の低下が10%以下だと予後が良い。脳出血=血圧を下げる、ではないことを示した研究がまた増えた。
Kramer AH.
Early ketamine to treat refractory status epilepticus.
Neurocrit Care. 2012 Apr;16(2):299-305. PubMed PMID: 22237581.
痙攣重積の治療はGABAレセプターの抑制(ミダゾラム、プロポフォール、バルビツレート)だけど、重積の期間が長くなるとGABAレセプターが少なくなり、治療が困難になる。そのときにNMDAレセプターであるケタミンが有効、という話。
で、本題はこれ。
Clinical Infectious Diseasesから。
Nguyen MH, Wissel MC, Shields RK, et al.
Performance of Candida Real-time Polymerase Chain Reaction, β-D-Glucan Assay, and Blood Cultures in the Diagnosis of Invasive Candidiasis.
Clin Infect Dis. 2012 May;54(9):1240-8. Epub 2012 Mar 19. PubMed PMID: 22431804.
侵襲性カンジダ症(血液もしくは無菌の部位からカンジダが検出された)の症例55例と、コントロール73例に対し、血液培養、PCR、ベータグルカン(BG)を測定し、その精度を評価。その結果、
・感度はPCRが80%、BGが56%、特異度は両方とも70%くらい
・血液培養陽性例ではBGの方が感度が高く(59% vs. 68%)、深部感染ではPCRが高い(89% vs. 53%)
・深部感染例のうち血液培養が陽性だったのは17%だけ
・血液培養とPCR、血液培養とBGを組み合わせると、侵襲性カンジダ症の診断感度が98%、79%に改善
・PCRとBGを組み合わせると感度は95%になるけど特異度は50%位に下がる
さて。
先週のCIDには、この文献に関連したレビューが載っている。
Kourkoumpetis TK, Fuchs BB, Coleman JJ, et al.
Polymerase chain reaction-based assays for the diagnosis of invasive fungal infections.
Clin Infect Dis. 2012 May;54(9):1322-31. Epub 2012 Feb 23. PubMed PMID: 22362884.
これにも書いてあるけど、PCRはどうも感度は良さそう。でも結局、この検査を行うことにより、つまりこの検査の結果に基づいて臨床判断をすることにより、患者予後が改善するかどうかが問題で、そういう検討を行っている研究はほとんどない。
培養オンリーの時代では診断の感度が問題だったけど、今はそこはクリアーしたので、今後は検査に基づく判断が予後改善に結びつくかの検討が必要なんでしょうね。
もう一つ、BGの感度/特異度はせいぜい60-70%だというのが改めて示されている。
BGの結果だけで判断すると、その正解率は70点だということは、肝に命じましょう。
P.S. 原宿キッスって知らないって言われた。トシちゃんですよ、トシちゃん。
日本の研究者が、臨床データの捏造により168もの文献を発表した可能性を示唆するデータがAnaesthesiaに掲載されました。
Carlisle JB.
The analysis of 168 randomised controlled trials to test data integrity.
Anaesthesia. 2012 May;67(5):521-37. PubMed PMID: 22404311.
また、Anaesthesiaにはこの事件に関連して4つのeditorialが掲載されています。
更には、この研究者の文献を掲載した雑誌の編集者たちが連名で日本の施設に送ったレターなど、この事件にどのように対応したかも分かります。
http://onlinelibrary.wiley.com/journal/10.1111/(ISSN)1365-2044
つい1年前にドイツの研究者が発表した90の文献が麻酔集中治療系の雑誌から掲載中止になったということがありましたが、今回は日本人、かつ文献の数も多い。
非常に残念です。
データを捏造するとバレる。やめましょう。
さて、気を取り直して。
先週も面白そうな文献が目白押し。
Needham DM, Colantuoni E, Mendez-Tellez PA, et al.
Lung protective mechanical ventilation and two year survival in patients with acute lung injury: prospective cohort study.
BMJ. 2012 Apr 5; PubMed PMID: 22491953
Low tidal volumeの有効性を、実際の臨床で前向きに調査。ちゃんと換気量を少なくすると長期予後が7.8%改善。
Christensen MC, Morris S, Vallejo-Torres L,
Neurological Impairment Among Survivors of Intracerebral Hemorrhage: The FAST Trial.
Neurocrit Care. 2011 Oct 6. [Epub ahead of print] PubMed PMID: 21976257.
脳出血に対するFactor VIIaの有効性について検討したFAST studyのpost hoc解析。脳出血患者の神経予後に関連した因子について検討。最初の24時間で収縮期血圧の低下が10%以下だと予後が良い。脳出血=血圧を下げる、ではないことを示した研究がまた増えた。
Kramer AH.
Early ketamine to treat refractory status epilepticus.
Neurocrit Care. 2012 Apr;16(2):299-305. PubMed PMID: 22237581.
痙攣重積の治療はGABAレセプターの抑制(ミダゾラム、プロポフォール、バルビツレート)だけど、重積の期間が長くなるとGABAレセプターが少なくなり、治療が困難になる。そのときにNMDAレセプターであるケタミンが有効、という話。
で、本題はこれ。
Clinical Infectious Diseasesから。
Nguyen MH, Wissel MC, Shields RK, et al.
Performance of Candida Real-time Polymerase Chain Reaction, β-D-Glucan Assay, and Blood Cultures in the Diagnosis of Invasive Candidiasis.
Clin Infect Dis. 2012 May;54(9):1240-8. Epub 2012 Mar 19. PubMed PMID: 22431804.
侵襲性カンジダ症(血液もしくは無菌の部位からカンジダが検出された)の症例55例と、コントロール73例に対し、血液培養、PCR、ベータグルカン(BG)を測定し、その精度を評価。その結果、
・感度はPCRが80%、BGが56%、特異度は両方とも70%くらい
・血液培養陽性例ではBGの方が感度が高く(59% vs. 68%)、深部感染ではPCRが高い(89% vs. 53%)
・深部感染例のうち血液培養が陽性だったのは17%だけ
・血液培養とPCR、血液培養とBGを組み合わせると、侵襲性カンジダ症の診断感度が98%、79%に改善
・PCRとBGを組み合わせると感度は95%になるけど特異度は50%位に下がる
さて。
先週のCIDには、この文献に関連したレビューが載っている。
Kourkoumpetis TK, Fuchs BB, Coleman JJ, et al.
Polymerase chain reaction-based assays for the diagnosis of invasive fungal infections.
Clin Infect Dis. 2012 May;54(9):1322-31. Epub 2012 Feb 23. PubMed PMID: 22362884.
これにも書いてあるけど、PCRはどうも感度は良さそう。でも結局、この検査を行うことにより、つまりこの検査の結果に基づいて臨床判断をすることにより、患者予後が改善するかどうかが問題で、そういう検討を行っている研究はほとんどない。
培養オンリーの時代では診断の感度が問題だったけど、今はそこはクリアーしたので、今後は検査に基づく判断が予後改善に結びつくかの検討が必要なんでしょうね。
もう一つ、BGの感度/特異度はせいぜい60-70%だというのが改めて示されている。
BGの結果だけで判断すると、その正解率は70点だということは、肝に命じましょう。
P.S. 原宿キッスって知らないって言われた。トシちゃんですよ、トシちゃん。
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