Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

重症患者の長期予後

2014年05月07日 | その他
先週のAJRCCMの2つ。疾患は違うけど同じ方向性の研究。

Linder A, Fjell C, Levin A, Walley KR, et al.
Small Acute Increases in Serum Creatinine Are Associated with Decreased Long-Term Survival in the Critically Ill.
Am J Respir Crit Care Med. 2014 May 1;189(9):1075-1081. PMID: 24601781.


スウェーデンのある病院のICUに2000年から2009年に入室した1844例。KDIGO分類でAKIが57%に発生。Stage 1は18.4%で、その生存率は、28日で67.1%、1年で51.8%、5年で44.1%、10年で36.3%で、AKIを発症しなかったICU患者に比べ有意に悪かった。多変量解析すると、10年死亡率のリスクは1.26。

Yende S, Linde-Zwirble W, Mayr F, et al.
Risk of Cardiovascular Events in Survivors of Severe Sepsis.
Am J Respir Crit Care Med. 2014 May 1;189(9):1065-1074. PMID: 24456535.


アメリカのMedicare加入者のうち、敗血症でICUに入室して生存退院した症例4179例を、4つのコントロール群(健常人、入院患者、敗血症以外のICU患者、感染症で入院した患者)とpropensityマッチングして比較。退院後1年以内に対象患者の29.5%に心血管系のイベントが発生。マッチングの結果、心血管系のイベントの発生は健常人の1.9倍、入院患者(敗血症含む)の1.1倍、そして非敗血症ICU患者と同程度。
結論は、敗血症の生存者は心血管系イベントの発生頻度が高いけど、敗血症が特別という事はなく、急性疾患全体で高い。

一つ目は、最近流行りのやつ。AKIは長期的に影響がありますよ、だからフォローが必要でしょう、というもの。
二つ目は、そのちょっと先を行っていて、敗血症は長期予後が悪いけど、その理由の一つは心血管系かもと思って調べてみたら、そうでもなかった、というもの。

何だろう。何か、ムズムズする。
研究の目的はよく分かる。短期だけじゃなくて長期的にも重症患者のフォローはするべきだし、予後が悪い理由は大事だし、予後改善の方法があるかもしれないし。
ただねー、多変量解析で遊んでいる感じがしちゃうのかな。
あくまでhypothesis generating activityだ、というところで止まらないと。一過性のAKIでも腎臓内科医はフォローしましょうとかは、さすがに行き過ぎでは。
AKI/敗血症に対して介入したら長期予後も良くなったということが示されないかぎり、AKI/敗血症が長期予後に本当に影響するかどうかは分からないんじゃないかなー。

なんか、長期予後の話は最近よく目にするので、気になったの。それだけ。
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