Dr内野のおすすめ文献紹介

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ECMO施行症例数と予後

2015年04月24日 | 呼吸
Barbaro RP, Odetola FO, Kidwell KM, et al.
Association of hospital-level volume of extracorporeal membrane oxygenation cases and mortality. Analysis of the extracorporeal life support organization registry.
Am J Respir Crit Care Med. 2015 Apr 15;191(8):894-901. PMID: 25695688.


ELSOのレジストリを使った研究。1989年から2013年の間に290施設で56,222例のECMOが行われた(そのうち成人は10,588例)。各施設のECMO患者の死亡率は大きく異なり、成人では33%-92%だった。年間の施行症例数が6例以下の施設に比べ、30以上施行している施設の死亡率は有意に低かった(オッズ比0.61)。

だからECMO症例は施設を集約しましょう。
そこはごもっともで結構なのだけれども。

こういう研究、多い。Nが大きいからメジャー雑誌で多い。
大きなデータベースを使って、ある病気や手術や手技の施行頻度と予後の関連を調べて、多くの場合は施行頻度が高い施設ほど予後がいい、というやつ。
そして大抵、その中のディスカッションやエディトリアルには、予後を改善する具体的な因子について検討するべきだと書いてある。

いやいや。無理でしょ、それ。
だって、例えばECMOの症例数が多くなれば、慣れているから気安く始められるので、どうしたって重症度はhigh volume centerでは低くなる。疾患の場合は診断頻度が高くなるからやっぱり重症度が低くなる。それを多変量解析などで処理したって、完全に消せるとは思えない。
それに、症例数が多いところでは、スタッフの慣れ、プロトコル、知識、トラブルシューティング、手技などなど、たくさんの要素が良くなるので、予後を良くする具体的な因子なんて分かるとは思えない。というか、そういうの全部が良い方向に向かわせるんじゃないのか。
ある施設で慣れていることは上手くいって、慣れていないことは上手くいかない。それはそうでしょう。

まあ、ちゃんとデータとして出さないと、理解してくれない人(自分の患者は自分で見るぞとか、行政とか)がいるから、仕方がないのかもしれないけれども。

じゃあ読むな?
確かに。
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