Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

集中治療関連のほとんどのRCTは間違っている?

2020年10月07日 | EBM関連
つい先日こんな話をした後で、ちょっと逆に行っちゃうかも。
それも良い。だっていろいろな視点があるし。真実なんて誰にもわからないし。

Sidebotham D.
Are most randomised trials in anaesthesia and critical care wrong? An analysis using Bayes' theorem.
Anaesthesia. 2020 Oct;75(10):1386-1393. PMID: 32255517.


過去10年でNEJMに集中治療関連のRCTが30以上発表されているが、明らかにポジティブな結果を示したのはそのうち1つだけ。
もしこれが真陰性の結果がたくさんあるからだとすると、研究開始時の事前確率は10%以下ということになり、そもそも仮説を立てる段階でおかしい。
もしこれが偽陰性の結果がたくさんあるからだとすると、つまり研究のパワーが低いからだとすると、偽陰性率はほぼ50%になる。
研究者が10%以下の事前確率の多施設RCTをやりまくるとは思えないので、パワーが足りない可能性が高い。
具体的には、
・対象症例の範囲がブロードすぎる(有効でない患者を含む)
・治療強度が小さい
・サンプルサイズの計算が現実的ではない(もっと多く必要)
からではないか。

で、この文献のEditorial。
Charlesworth M, Pandit JJ.
Negative outcomes in critical care trials: applying the wrong statistics - or asking the wrong questions?
Anaesthesia. 2020 Oct;75(10):1284-1288. PMID: 32259278.

この問題の対処方法として、
・Fragility indexを必ず提示する(簡単にできるが問題の解決にはならない)
・研究をやり直す(正しいがほぼ不可能)
を提示している。

どちらも統計学的に正しいのだろうし、勉強したい人にはおすすめだと思う。
ただ、統計学的に正しいことと、実際の研究の実施と、その結果の解釈とはまた違う話ではないか、とも思う。
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