徒然なるままに…なんてね。

思いつくまま、気の向くままの備忘録。
ほとんど…小説…だったりも…します。

置いてきぼりの卵…。

2007-05-05 16:06:00 | 生き物
 doveんちの庭にキジバトがやってくるようになって十六~七年になる…。
電信柱の上で…クックルックー…クックルックー…と鳴いていたものが…或る日突然…庭に降りてくるようになった…。

 バサバサと羽音を立てて、庭に舞い降り、築山辺りをうろつきながら、何か餌のようなものを見つけてついばんでいく…。
築山といっても、doveんちの庭は猫の額ほどの小さな庭なので、ほんの気持ちだけ土を盛り上げたところにモミジやモチノキなんかを植えてあるだけのものだ…。

 草の種や木の実を食べるというから…多分…庭木の間に落ちている種なんかをついばんでいるのだろう…。
ゆっくりと庭を歩き回っては何処かへ帰って行く…。
他の鳥たちと違って、つがいで現れることがほとんどだが、来る時と帰る時以外は別行動をとっている…。

 時々…電線に仲良く並んで止まっている。
毎年…同じつがいなのかどうかは分からないが…。

 庭に降りてくるようになった端は、大豆なんかを撒いてやると喜んで食べて行ったが、この頃では大豆には見向きもしない…。
キジバトの世界もだんだんグルメ化しているのかな…。

 子供たちが幼稚園に通いだした頃だった。
朝方…キジバトの鳴き声が妙に大きく聞こえるようになった…。
何日も続くのでさすがに気になって、キジバトが鳴き始めた時にベランダへ出てみた…。

 キジバトはベランダの手すりに止まっていた。
ベランダには何本もの小枝が落ちていて、どうやら巣作りのために持ち込んだもののようだった…。

ベランダに巣作る気かぁ…?
作っても良いんだけどさ…蒲団とかシーツとかに粗相せんように頼むわ…。

 聞いてるのか聞いてないのか…キジバトはしばらく手すりの上でウロウロしていたが…近くの電柱の方へ飛んでいった…。

 それから間もなくのこと…。
ベランダから下を覗くと…庭木の上に小さな巣ができていた…。
つがいのキジバトは交代で出入りしていたが…やがて雌がじっと座ったまま動かなくなった…。

気にはなるが、ずっと観察しているわけにもいかないので、時折、ベランダに出ては下の庭木を覗いた…。
やがて…何か白いものが腹の下に見え隠れするようになった…。

やった…とうとう産んだぞ…。
いくつ…あるのかなぁ…?

キジバトが乗っかっているので…正確な数は分からない…。
見えている大きさからすると…二個~三個くらいだろうか…。

野生のキジバトの卵が孵化するところなんて…これはもう…そう簡単に見られるもんじゃない…。
ワクワクを通り越して…バクバクものだった…。

 楽しみで楽しみで仕方なかったのに…何日たっても卵は孵らなかった…。
そればかりか…それまで一生懸命卵を抱いていたつがいのキジバトまで…突然…消え去ってしまった…。

巣の中にぽっかり残された卵がふたつ…。
温めてくれる親もなく…ただ…ふたつの卵が寄り添っている…。

 その頃…野良猫が急速に増えだして…doveんちの庭を闊歩し始めていた…。
黒猫・三毛猫・鯖猫・白黒猫・チャトラ・キジトラ・外国種の猫…などなど…。
中でも…キジトラと鯖猫はよく木に登る…。

夜中にでも襲われて…巣を放棄したのだろうか…。

孵化を見ることができなかったのは非常に残念だが…営巣と卵だけは見ることができて幸運だった。

その年の終わり頃まで巣は卵を抱いたまま…ずっとその状態を保っていた。
雨にも…風にも落ちることもなく…。

剪定の季節になって…枝打ちをする時にうっかり頼んでおくのを忘れて…巣も卵も植木屋さんに処分されてしまった…。
キジバトの巣と卵を子供たちに触らせてやろうと思っていたのに惜しいことをした…。

巣を放棄したにも関わらず…次の年も…また次の年も…キジバトはやってきた…。
ゆっくりと庭を散歩して…何かしら食べ物らしきものをついばむ…。
そして…今年も…。

けれども残念ながら…この庭に巣を作る気は…ないようだ…。