昨日 豊橋の友達と 久しぶりに山登りを楽しんだ。
場所は宮路山 五井山縦走 300から400ほどの低山である。 大げさに言えば 豊橋から蒲郡まで歩くような横に長い山なので 時間はかかる。
東海道赤坂の宿からアスファルトの町道を20分ほど歩いたときには うんざりしてしまった。 いくら木の香りがしてきても 小鳥の声が聞こえてきても あまり歩きたい道ではない。
やっと 山の中へ入ったときどんなに嬉しかったか。 足もとはかさこそかさこそ枯葉の音がしてどこからか水の音がしてきたり 小鳥の声がしてくる。 草木はもう春の準備を始めていて 暮れからの大寒波の中でも 確実に 自然界では 命が育っていることを感じる。
アスファルトの道があまりに長かったからだろうか? 宮路山の頂上は山道を楽しんでいるうちにあっという間に着いてしまった。 三河湾の展望を楽しんでから 五井山への縦走。 お天気が今ひとつなので 雨が来ないうちにと 道を急ぐ。
尾根伝いと言うこともあって 高低差をあまり感じない 長い道が続く。 杉と雑木林の中を まっすぐに続く道がとても綺麗だった。
綺麗 うん 綺麗 綺麗?
なんだか不思議な気がして歩いていたけれど その理由が分かった。 登山道は 見事に掃き清められている。 としか思えない。 掃き後がついている。 どこかの石庭のように律儀に隅から隅まで 模様のように・・・
聞いたこと無いけれど 五井山には 由緒ある神社とかお寺があるのかしら? そう言えば宮路山の裏には 神社があるようだったけれど 宮司さんがお掃除・・・ まさかね
それでも ほうきの跡だと確信するようになったら 二人でああだこうだと想像をしてみる。
どうしても信じられないその跡は何処までも続いているのだから(ちなみに 宮路山から五井山までは4キロ弱 その間ずっと掃き清められていた)
何かの罪滅ぼしの為にやっている
(蒼の洞門かぁ?)
何かの願掛けをしている
(お百度参りの代わり?)
単なるボランティア(何の為に?)
「これ履き跡も新しいし 毎日やっているのかしら 見てみたいよ 信じられないもの」
そんなことを言って歩いていたら
あ! いた
切り株に腰を掛けて休憩していたおじさんは 木の枝を集めて紐で括り付けた手製の箒を持っていた。
どんな人か解らないので 当たり障りの無い会話を交わして去ろうとしたら「遊びだよ」とおっしゃった。
遊びって・・もちろん謙遜だろうけれど
登山道が自然の形で無いことについては異論がある人もあるかも知れないけれど 今回は苦行とも言える事を日の当たらないところで黙ってやっているそのことにびっくりしてしまった。
頂上まで行って戻ったら 脇目もふらずに掃いていらっしゃる所に出会ったので聞いてみた。
肝臓を切りとる大手術をなさった。 そのときに医者が 「私は何もできないから薬を出すことであなたをお手伝いする。 本気で元気になりたいなら あなたが運動してなおしなさい。」と言われたそうで 其れがきっかけで殆ど毎日五井山に来るようになったのだとか
3年の入院とは 本当に生死を分ける病気だったのですがそれから立ち上がる精神力の強さに感嘆。 「ぎりぎりの所まで行ったから頑張れるのです。」とにこっと笑う。
はじめはただ登っていたけれど 埋め込んである土留めに枯葉が乗っかって 高さが解らなくなっていたので とても危なくて 其れが苦になって苦になって・・・ 登ってくる人が躓いて転ばないようにと払いのけ始めたら 全行程を掃除しないと 我慢できないようになってお掃除を始めたとか
箒で履きながら山登りをする人 毎日毎日 誰にも知られず 其れを続けて行ける人 そんな凄い人が この山の中で自分の人生を大事にして生きていることを知ってなんだか嬉しくなったり 眼のあたりに見ながらも 信じられなかったり・・・
そんなわけで アスファルトの道と 枯葉いっぱいの自然にあふれた道と 人の優しさのあふれた美しい汚れない道と・・・ 三つの道を歩きながら 幸せな山の一日でした。