2013年1月22日から隠匿性糸球体腎炎の漢方治療を1月28日にかけて7報紹介しました。無症候性血尿、無症候性蛋白尿を主訴として、腎生検でIgA腎炎が否定され、経過のゆっくりとした比較的予後のよい腎炎グループという意味で、中国では腎生検がされていなくても、「隠匿性糸球体腎炎という漠然とした区分け」をしています。IgA腎炎の軽症ともオーバーラップしてくる区分けです。<o:p></o:p>
さて、中薬治療となると中国の広域性が反映されて、とても日本では入手不可能な生薬(花蕊石 崩大碗 土狗干さらには鉄樹根など)も出現してきます。張琪氏の医案の最大の利点は特殊な薬剤を使用しない、つまり日本でも入手が可能である生薬を使用しているところにあります。勝手に評価すれば、オーソドックスな生薬の組み合わせなのです。<o:p></o:p>
それでは医案に進みましょう。( )内に印象やコメントを随時入れます。<o:p></o:p>
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患者:廖某 30歳 女性<o:p></o:p>
初診年月日:2003年2月19日<o:p></o:p>
病歴:<o:p></o:p>
2000年検診で顕微鏡下血尿を指摘され、尿RBC10個/HP、妊娠時尿RBC20個/HP、嘗て黄葵カプセルを服用したことがある。血尿は反復出現、程度が強くなった。2002年4月尿RBC満視野/HP、尿蛋白+、治療により緩解した。<o:p></o:p>
(付記、黄葵カプセルは中成薬で慢性腎炎治療薬であり、蛋白尿に効果があるとされ、成人では1日15カプセルを5カプセルずつ日に3回服用し、8週間で1クールとしています。効果は清熱解毒利湿消腫です。)<o:p></o:p>
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初診時所見:<o:p></o:p>
腰酸不快、倦怠乏力、易疲労、浮腫無し、尿急無し、尿痛無し、舌淡紅、脈沈細;血圧正常、腎機能正常;尿RBC 満視野/HP、尿蛋白+、尿WBC(-)。<o:p></o:p>
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中医弁証:陰虚内熱、熱傷血絡<o:p></o:p>
西医診断:隠匿性糸球体腎炎<o:p></o:p>
治法:養陰清熱、涼血、収渋止血<o:p></o:p>
方薬:加味理血湯:<o:p></o:p>
海螵蛸(烏賊骨に同じ、収斂止血、固精止帯、収湿斂瘡、制酸止痛)20g 茜草(涼血化瘀止血)20g 竜骨(収斂固渋止血)20g 牡蠣(収斂固渋止血)20g 生地黄(養陰清熱)20g 山薬20g 仙鶴草(収斂止血)30g 棕櫚炭(収斂止血)20g 貫衆(貫仲に同じ、清熱解毒 止血)20g 地楡炭(地楡の効能は涼血止血、解毒収斂、地楡炭となると収斂止血が増強される)20g 三七(化瘀止血 活血定痛)10g 枸杞子(養陰)20g 女貞子(養陰)20g 焦梔子(清熱解毒止血)10g 側柏葉(涼血止血、袪痰止咳)20g 甘草15g<o:p></o:p>
七剤、水煎服用、1日1剤2回に分服<o:p></o:p>
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(上記方薬は張琪氏の加味理血湯そのものと記憶してください。中医弁証の陰虚内熱、熱傷血絡の内、陰虚内熱は久病傷陰からの弁病です。収渋と収斂はほぼ同意です。勿論、初診時の患者の印象には耗気が感じられますので気陰両虚がありますが、まず尿血を念頭に置いた弁証となっています。)<o:p></o:p>
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二診:2003年3月26日<o:p></o:p>
上方服用20余剤、腰痛、乏力、胸悶あり;舌淡紅、苔白、脈沈細;尿蛋白(-)、尿RBC30~40個/HP。気陰両虚証により、益気養陰止血、兼活血、開胸散結する。<o:p></o:p>
方薬:自創方:<o:p></o:p>
黄耆(益気)30g 太子参(益気生津)15g 山茱萸(補腎陰)20g 枸杞子(補陰)20g 川芎(活血行気、祛風止痛)15g 当帰(養血)15g 女貞子