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急性糸球体腎炎 張琪氏医案 半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)加減弁治(腎病漢方治療332報)

2014-04-21 00:15:00 | 急性糸球体腎炎 漢方治療

半夏瀉心湯は、中医学的には辛開苦降の薬理作用により和胃降逆を図る方剤です。「内科適要」の半夏瀉心湯の原方では半夏 黄連 黄芩 乾姜 人参 大棗 甘草の配伍です。脾胃の昇清降濁の機能が失調し、心下痞、嘔気、嘔吐等の症状に用いられます。腎病では濁毒上逆の証などに適応があります。従って慢性腎不全、糖尿病性腎症、薬剤性の急性腎不全などに臨機応変に使用されます。清熱する必要がある場合には乾姜を生姜に変え、半夏 生姜の小半夏湯にする場合があります。人参は平の党参を用いています。

薬剤性急性腎不全の場合、(腎炎などの基礎疾患を持たないか、あっても軽度な場合には)癃閉(急性腎不全)の初期には辛開苦降の治療原則で半夏瀉心湯中の半夏 乾姜 黄連 黄芩を処方に入れ、人参は太子参、或いは党参に変え、大棗は氏の経験では入れる必要が無く、大黄を中心として、活血通腑泄濁法と砂仁 白豆蔲 枳実 草果仁などの行気薬を併用すると、早期に利尿がもたらされ、良好な治療効果が得られることが示されています。

さて、本案は急性腎炎ですが、半夏瀉心湯の使い方を覗いてみましょう。

患者馬某 51歳 女性

初診年月日199035

病歴

患者は急性腎炎一ヶ月余、中西薬治療が効果無く、張琪氏の会診を請うた。

初診時所見

血尿、食少納呆、悪心、嘔吐、胃脘張満、舌質紅、苔白やや膩、脈細。

尿蛋白2+、尿潜血3+、尿WBC2030/HPRBC2030/HP、顆粒円柱58/HP

中医弁証下焦湿熱

西医診断急性糸球体腎炎

治法清利下焦湿熱

方薬:

半夏(辛散温 化痰燥湿散結止嘔)20g 川黄連(苦降寒 清熱解毒利湿 泄熱除痞)10g 黄芩(苦降寒 清熱解毒利湿 泄熱除痞)10g 乾姜(辛熱 温中散寒)15g 甘草(調和諸薬)10g 陳皮行気和中化湿)15g 竹茹清化熱痰、除煩止嘔 泄濁)15g 党参(益気養陰)25g 枳殻(理気下降)15g

二診:319

全身不快、手足心熱、口干、腰酸痛、排尿熱感有り。尿蛋白2+、尿潜血3+、尿WBC1520/HP、尿中RBC(-)、顆粒円柱(-)。遂に方薬を八正散に変え治療、一ヶ月余で再診すると、諸症は全て除かれ、ただ尿蛋白±のみであった。

ドクター康仁の印象

出張会診ですので、先ずは急則治標の原則から辛開苦降の半夏瀉心湯で和胃降逆を図ったのでしょう。陳皮の配伍は二陳湯(化湿痰)の発想であり、行気薬の枳殻、清化熱痰薬の竹茹の配伍も脾胃の昇清降濁を回復させる組み合わせだと思います。

2週間(14剤)の服用で尿中のRBCが消失、しかし尿潜血は3+となるとヘモグロビン尿ということになります。ともかく悪心、嘔吐は消失したのでしょう。尿中にWBCが多いことや腰酸腰痛、排尿熱感など腎盂炎も含めた尿路感染症を私は疑います。二診時には、おそらく、白花蛇舌草(微苦甘/寒 清熱解毒利湿)50g 大黄7.5g 萹蓄15g 瞿麦15g 白茅根30g 木通(苦/寒 泄熱利水通淋)15g 車前子15g 蒲公英30g 小薊50g 甘草10gなどの清熱利湿解毒法の加味八正散のような方剤になったのではないかと思います。氏も尿路感染症を意識したと思います。

本案は1990年の症例です。同年の成人男性の急性腎炎の加味八正散による治療(腎病漢方治療330報)でも木通は配伍されていましたので、八正散を選択するに当たっては木通も配伍されていたものと推測します。

2014421日(月)