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急性糸球体腎炎 張琪氏医案 滋陰活血 収斂止血法弁治(腎病漢方治療333報)

2014-04-22 00:15:00 | 急性糸球体腎炎 漢方治療

本日の紹介医案は高齢女性の肉眼的血尿症例です。タイトルに有るように滋陰(じいん):陰を養いながら、活血(かっけつ)して瘀血を除き止血し、収斂止血剤も同時に併用した症例です。

それでは医案に進みましょう。

患者某 71歳 女性

初診年月日2000519

病歴

肉眼的血尿半月、軽度の腰部酸痛を伴い、乏力があるが、浮腫は無く、尿路刺激症状も無い。舌紅、苔黄膩、脈和緩。尿ルーチン検査:蛋白3+、RBC満視野/HPWBC(-)。超音波検査:右腎盂結石。西洋医は急性腎炎を考慮し半月治療したが、明らかな効果が得られなかった。尿血と弁病し、清熱涼血止血法(水牛角 血余炭の類を使用)にて肉眼的血尿は消失した。しかし検尿では尿RBC満視野/HPが続いた。双腎のCT検査、膀胱鏡、逆行性腎盂撮影で異常は無く、尿培養でも有意菌陰性であった(埃希菌革?:大腸菌類)。再度、経静脈的に抗生物質を1週間投与したが、再び肉眼的血尿が散見される状態となった。

初診時所見

張琪氏会診時、面色萎黄、軽度の貧血様顔貌、尿路刺激症状無し。

中医弁証久病入絡、陰虚血瘀

西医診断急性糸球体腎炎

治法:滋陰 活血化瘀と収斂止血の相反相合用法

方薬:

亀板滋陰潜陽、益腎健骨、養血補心)20g 三七(化瘀止血 活血定痛)15g 劉寄奴(破血散瘀)30g 山梔子(清熱解毒利湿)10g蒲公英(清熱解毒利湿)30g 金銀花(清熱解毒利湿)30g 藕節(収斂止血)20g 烏梅炭(収斂止血)20g 赤芍(清熱涼血 祛瘀止痛)15g 桃仁(活血化瘀 潤腸通便)15g 孩儿茶(清熱 生津 止血)10g 蒲黄収渋止血、行血祛瘀)15g 甘草(調和諸薬)15g 竜骨収斂固渋止血)20g 茜草(涼血化瘀止血)20g 海螵蛸烏賊骨に同じ、収斂止血、固精止帯、収湿斂瘡、制酸止痛)20g

二診

服薬2週で尿蛋白(-)、尿RBC2030/HP

前方加減治療20余日で、血尿は止まり、尿検査正常。

ドクター康仁の印象

活血化瘀と収斂止血の相反相合用法について少し付言すれば、漢字の持つイメージが相反するということです。

活血化瘀は血液の凝固能に反対に作用して、線溶を亢進させて瘀血を除くという発散のイメージです。散瘀という中医学用語があります。

三七は、豚の血液に三七を小片にして浮かべ周囲が清となるものが上等とされ、活血化瘀の発散のイメージです。また同時に止血の神薬とも言われています。正に化瘀止血です。

収斂止血とは出血(部位)をギュッと縮めて止血するとイメージであり、発散と反対のイメージです。

茜草(涼血化瘀止血)などは血熱による瘀血を涼血して除き、止血するもので、清熱涼血と発散のイメージとなります。

蒲黄収渋止血、行血祛瘀)などは発散と収斂の両者のイメージがあります。

さて、本案は熱証(舌質紅、苔黄膩)で慢性化し、老人でもあることから、陰血が消耗された状態です。中医学的表現が久病入絡です。そこで亀板でしっかり養陰し、同時に山梔子で清熱する方薬になっていますね。

腎盂結石について特に医案には記載が有りませんが、エコーで陽性、CTで陰性とすれば、一ヶ月以上の肉眼的血尿の原因にはならないでしょう。

漢字文化圏の人々は漢方用語をイメージ出来ますので学習は比較的容易ですが、言語体系が異なればイメージそのものが難しくなるでしょうね。

上手にイメージするのも一種の才能かもしれませんね。

2014422日(火)