daisukeとhanakoの部屋

わが家の愛犬 daisuke(MD、13歳)とhanako(MD、6歳)の刺激的仙台生活

忘れない、あの日を、あの人を 6

2013年03月16日 14時46分00秒 | 地震

あのとき

これは大きいな、と感じたが、2分くらいで終わるだろうと思った。

しかし、揺れは収まるどころか、上下方向から東西方向に変わり、ますます激しく、振幅も大きくなった。

とっさに左手でパソコンを、右手で本棚を押さえる。

電気が消えた。

・・・地震が来たら、まず火を止めて、出口を確保する・・・

普段はやっているが、今回ばかりは一歩も足が出ない。

棚を押さえているというより、棚に掴まってようやく立っている。

頭の上を掛け時計が飛んで行った。

窓から見える電柱が右に左に大きく揺れている。

耐震性は十分のはずのビルだが、コンクリートの壁がしなり、繋ぎ目がギシギシと音を立てる。

本棚の突っ張り棒が外れ、窓が平行四辺形に歪んだ。

誰かが邪悪な意思をもって、このビルを引き倒そうとしている。

倒壊する、と思った。

 

震源はどこなのだろう。

犬たちはどうしているだろう。

怖くて走り回ってるかな。

(子供のいる)東京と山形はだいじょうぶかな。

大事なものは貸金庫に入ってることを教えてなかった。

銀行印がどれか、実印がどれか教えてなかった。

もう少し整理しておけばよかった。

いろんな思いが通り過ぎて行く。

 

揺れは本棚と壁の物を落とすだけ落とすと、突然止まった。

居合わせた誰かが、ああ止まった、と言ったが、自分ではまだ揺れていると感じていた。

30分も経ったように思えたが、後日の新聞に、揺れは7分とあった。

 

 

 

津波が来たのが日のあるうちで良かった。

その日の月齢は5.8で、晴れていても暗い夜だった。

停電で、しかも夜だったら、沖に襲来する津波も見えず、逃げる方向も分からない。

闇の中から轟音が迫ってくる恐ろしさはどうだろう。

犠牲者は何倍に増えたことか。

 

映像で見た津波は、何匹もの黒い龍が暴れ、咆哮しているように見えた。

容赦のない凄まじい破壊力に、神の怒りを感じ、震えた。

 

神はなぜその激しい怒りを東北に向けたのだろう。

科学を弄び、全能と過信し、我慾に走ったというのか。

日のある時間にしてくれたのは、せめてもの慈悲だったというのか。

 

龍が通った跡に立ち、答えのない問いを繰り返す。

理由があるなら、龍は必ずまたやって来るだろう。

瓦礫の原の泥だらけのランドセルを見れば、その容赦のなさに身震いするほかない。

 

  

 


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