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日経ビジネスの記事“品質の復讐”を読んで

日経ビジネスの11月13日号に掲載された“品質の復讐―驕れるモノづくり大国への警鐘―”に 現代日本企業の品質問題についての記事がでていました。ビジネス誌の技術論の記事、どこまで突っ込んでいるのか興味を持って読みました。

まず最初に、日経ビジネスの消費者調査による集計結果のグラフが 示されます。
調査対象など 詳細は示されてはいないが、恐らくは日本人消費者を 対象に調査されたのでしょう。この結果を見て、思わず強く 肯いてしまう 内容です。



さて、私なら 何と回答するのか。“低下している→実際に身の回りで製品の不具合が起きているから” と答えているだろうと思います。実際に90年代以降に買った パソコンは3台も修理に出した。特に、N社のは複数回修理したものです。これらは 製品に明示はしてなかったのですが、日本製だとは言えないかも知れません。最近も T社のDVDプレーヤーが 現在故障中です。
80年代には 故障する日本製品は 全く無かったのに、確かに最近は 故障が多い印象です。

そしてソニーのリチウム電池発火事故の事例について 原因を含めて 少し突っ込んで書いてはいます。あとは、日立製作所(原発タービン)、松下電器(石油温風器)、パロマ(湯沸かし器)、三菱自動車の対策費(トラブル解消費用)の表がでてきて “そう言えば トラブル続き”の印象を 強く意識させる記事の仕立て。

そして さらにソニーのトラブルの背景として、“ソニーの電池事業は一時は赤字に転落していた。そのために「顧客獲得には相当な営業努力をしなければならなかったうえに、社内の雰囲気はとにかく生産量を優先して開発や品質は後回しという感じだった」”というソニー社員の見解が 掲載されている。何だか 問題あった時に、いつも聞くような話で記事内容の新規性が 全く感じられません。

そんな感想を持ち始めたところで、最近 デミング賞を取ろうとする日本企業が減少しているという話が紹介されます。(2001年以降 受賞した日本企業はたった4社。02年と04年は受賞企業0、とのこと。)それに引き換え、01年以降、インドやタイの海外企業が合計23社受賞しているとのこと。
さらに、日科技連が1949年から主催する“品質管理セミナーQCベーシックコース”への参加者が最近、激減しているという。
これに 記事は“(日本企業の)モノ作りの品質への関心が薄れてしまった実態が浮かび上がる。”とコメントしている。
さらに、東大・飯塚教授の“日本の品質が超一流の座を取り戻すには子供の教育からやり直す必要がある。50年はかかるのではないか。”との見解を掲載。この見解、ここでの問題には かなりピンボケな感じです。大仰さに 違和感ありです。記事の構成ミスでしょうか。それに、今更、デミング賞や“QCベーシックコース”などと言われても 時代遅れの印象しかありません。それとも温故知新?

意味不明が 掲載された下記のような定性的説明図です。



青で描いた線や文字は原図や原文の説明には有りません。恐らく、不良品の発生による損失コストと品質管理コストの相反するものの合計がトータルコストということになるのでしょうが、一体それが どうしたと言うのだろう。この図に関する突っ込んだ説明はない。図で示された最適条件で、ソニーもやっていたが、ppmやppbオーダーのいわば想定外の市場クレームにより 振り回されていると言いたかったのでしょうか。それならば分かるのですが・・・。要するに この図は 現代では意味を成さないと言いたいのか、それともそうではなく一般的には成立しているという主張なのかはっきりしない。
品質工学をやっている人からは “この図は社会的コストを考えていない。”という批判を浴びるのは必定です。

記事の終盤に ロームの創業者佐藤社長が40年前に制定した“品質を第一とする”という企業目的を 唯一の絶対的ルールとして採用し、上手く行っている事例を紹介しています。ここでは、顧客から返品される製品の 製品そのもののトラブルは全体の3分の1。3分の2は 製品には何の問題もなく、取引先の取り扱いミスや物流過程での破損が 大半とのこと。
ロームの品質・環境担当重役の言葉 “品質が良いか悪いかは顧客が決めること。原因が取引先の中にあるのなら、そこに入り込んで問題を解決するのが、品質を最優先する企業の責任だ。” を 載せています。
ここまで来て、なるほど 顧客の中に入り込んで “顧客コミュニケーション”を活発にし、さらに顧客の使用状況を つぶさに把握して 品質工学で言うノイズを 厳しく設計条件に盛り込むことが 成功への道なのか と私は了解したのです。現代の 品質管理の要諦は ヤハリここにあるのか、と。

ですが 記事は 最後に “犯人探しや責任追及”ではなくて、“原因追究と再発防止の仕組作り”を しなければならない、などと、本当に訳の分からない結論で終わってしまっています。今や、どんな会社もその程度のことはやっています。
恐らく、これを書いた記者自身も 何を言いたいのか 良く分からないまま 書き終わったのではないか、と思った次第です。まさに見出しの期待を裏切る竜頭蛇尾の記事。まぁ 雑誌記事での技術論は この程度が 限界なのでしょう。
合間に 訳の分からない 学者のコメントが 要所要所で入るのも 話を混乱させている印象です。
つまるところ、オールド・ファッションの品質管理的 発想で、最新の事実・事件を解釈しようとして、失敗している事例です。
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ベアリングは機械産業の米 (プラントメンテナンス関係)
2025-05-10 22:37:55
わあおもしろい。トータルコストの曲線。「材料物理数学再武装」の関数接合論第一式が使われている。
 
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