The Rest Room of ISO Management
ISO休戦
“超一流の雑談力”を読んで
ある時見ていたテレビの経済番組で、紀伊国屋書店調べで11/30~12/6の期間で第2位のベスト・セラーとなったという“超一流の雑談力”が気になった。“雑談”は様々な場面で行われる。そしてその“雑談”を無難に、また時に有効に行うことができれば人間関係を良く保つことが出来る。特に、私達ISO等の審査員をそれなりの生業としている者には“雑談力”は必須と言える。つい先ほどまで、全くの赤の他人だった人々と審査の場で初めて会って、そこからあたかも年来の友人であるかのように話せる能力は欠かすことが出来ない。しかし下手をすれば審査員同士もあまり親しくなっていない場合は辛い。つい先日も、そんな一日を過ごすことがあった。そこで もっと有効な会話ができなかったか―何が有効な会話かは別として―有用な情報を話相手から引き出したり提供したりできなかったかを考えると、“超一流の雑談力”養成が目的の本には魅力があった。
そこで先ずアマゾンで著者・安田正・氏の人となり等調べてみた。すると“1953年8月6日生まれ、宮城県出身。76〜77年英国留学。78年神奈川大学外国語学部英語英文学科卒業。株式会社兼松パーソネルサービス・国際化事業部長を経て、90年企業向け語学研修機関、株式会社パンネーションズ・コンサルティング・グループ設立。現在、代表取締役、早稲田大学理工学術院非常勤講師。”とあり、生年月日情報は年までにとどめるべきであろうが、恐らく英国流の発想がどことなくありうるのかも知れない、とも思われ急に無性に読んでみたくなったのだった。
しかし、書評では“常識的な内容で、特に得るものはありません。「超一流」とは言いすぎ。”(星一つ)等があって多少気にはなったが、読み手側の問題もある場合もあることが多く、ネガティブな評価を下す人も一部にはいるものだと思ったのだ。
実際に書店店頭で手に取ってみて、冒頭の“雑談とは、意味のないムダ話をすることではありません。雑談とは本来、人間関係や仕事の質を根本から変えてくれる魔法のようなメソッドなのです。”の台詞は気に入った。“短時間で人の心の中にふっと入っていく方法。これが、本書でお伝えしたい「超一流の雑談力」です。”でますます読む意欲がそそられたのだった。
しかし、読了後しばらくたってからの印象は薄い。何だが“「超一流」とは言いすぎ”とまで言いたくなってくるほどだ。何故かと考えたが、当初、“雑談”なので勝手に自分のような立場の人間が、接する局面での会話であろうと早合点したのが一因のような気もする。もう一度、全体を“おさらい”してみると、主に営業担当のビジネスマンの商談前後での会話にフォーカスしていると分かって来た。だから、社会経験の乏しい若い営業マンには非常に“お勉強”になるのではないか。
だから、“開口一番は「よろしくお願いします!」から”始めよとなり、話題の持って行き方に計画性(プランニング)を持たせて目的を置くのが良いが、予め全てをシミュレーションしておくよりも“重要なのはあくまでもゴールを決めておくこと。常にゴールに向かって会話を進めていくこと”になる。若い時は何を言われても実感を伴って、身に滲みて痛感することはないものだろうが、一度は読んでおくと良い。
ビジネスの会話には“最低限が日経新聞”、“より質の高い情報を探すときは日経産業新聞がおすすめ”というのは、私の実体験から言っても間違いない。かつて、営業の技術面でのサポート役として技術サービスという職種を担当したことがあった。その時、私の担当範囲では中小企業の経営者との会話の機会が多かったのだが、それこそ雑談で“先日の日経新聞で・・・という記事がありましたが、・・・だと思うのですが・・・”と言うと、相手の経営者は大抵真剣な目つきになったことを思い出したのだ。そこでヒマを見つけては、アポを取って出かけて“雑談”をしかけていたこともあった。私の場合は、申し訳ないが産業新聞まで読み込む力量はなく、日経新聞で精一杯だった。
確かに、自分に欠ける部分についても多数指摘されている。その全てをまとめて書いてしまうと問題が多いので、ここではひとまず著者が雑談能力の向上のための訓練方法をこの本の最終部分に紹介していて結構有効のように思うので、それを紹介しておく。
トレーニング・レベル1:エレベータで「何階ですか?」と聞く
トレーニング・レベル2:お会計のときに店員さんとひと言話す
トレーニング・レベル3:混んだ居酒屋で店員さんをスマートに呼ぶ
トレーニング・レベル4:アウェイの飲み会やパーティーに参加する
トレーニング・レベル5:社内の苦手な人・嫌いな人と軽く雑談をする
トレーニング・レベル6:インプットしたことを社内で話す、ウケる社内スピーチを考える
トレーニング・レベル7:「謎かけ」を練習する
トレーニング・レベル8:結婚式などフォーマルな場で、おもしろい乾杯の挨拶をする
私は“混んだ飲食店で店員さんを呼ぶ”のが非常に苦手で、時に調理場の傍まで行って、意向を伝えることが多い。そんな人に発声方法を次のように紹介してくれている。原文を多少変更しているが、“口を閉じたまま鼻声で一定の音を出してみる。その間にあくびをするような感じで喉を開いてみると、同じ強さでしか鼻声を出していなくても、大きく響くことがわかるはず。”と言っている。
私の友人には、“お会計のときに店員さんとひと言話す”のが上手いのがいるが、一度彼にその要領を聞いてみるべきだろうか。多分、聞かれた方も戸惑うのだろうが・・・。
“アウェイの飲み会やパーティーに参加”については、私の属性が何故かいつもマイナーな部分にあることが多く、何かある度に、アウェイ感をたっぷり味わってきた人生だった。例えば、鉄鋼メーカー勤務時のことだったが、冷間圧延の焼鈍プロセス担当だったが、圧延部会の会合に入れられて全く会話になじめなかったことがあった。或いは、上工程の製鋼の部会にも放り込まれたこともあったが、そこでは連続鋳造設備のタイプについての見解を相手に正した経験を思い出したりする。
或いは、英国人のように“パーティーのような場に限らず、日常会話でも不意にクイズを出してくるなどして、いろんなところで話を盛り上げようと試みる”ことも良いのかも知れない。
そんな経験や機会のない人には、著者は代わりに「行ったことのないバーに行ってみる」「タクシーの運転手と話す」「初めての美容院に行く」ことを提案している。自分が初めて訪れたような土地で捕まえたタクシーになら、こっちの体調も元気ならばいろいろ質問してみることはできるが、そうでなければしんどいこともある。
相手に興味津々で体調万全なら問題なかろうが、そうでない場合でも訓練と思ってやることが望ましいのだろう。
少々気になったことがある。それは敬語の使い方について書かれている部分だ。
例えば、「年始のご挨拶にお伺いしました」は不可で「年始のご挨拶に伺いました」が正しいという。一方著者は“自分がする動作に「お」や「ご」はつけない”と言っているが、それなら正解は「年始の挨拶に伺いました」ではないか。以前テレビで、こういうビジネス会話やマナーのコンサルというオバサンも同じようなことを“下品に怒鳴って”いたが、こういう人たちは敬語には“丁寧語”があるということを知らないのではないかと思われる。これには困ったことだと思うのだ。正確には敬語には“尊敬語”、“謙譲語”、“丁寧語”の3つがある。自分の行為に「お」や「ご」を付けるのは、相手への敬意をこめた丁寧に対応するための言葉なので問題ないはずではないか。まぁ、ここでの著者の本意は“美しく丁寧でも、話す内容はあくまでもフレンドリー”であるとこのようである。
しかし、そこまでやるか?と思わせる記述もある。それは、“雑談の力を伸ばすためにぜひ行っていただきたいのは、雑談ノートをつけること”“昔は大学ノートを使っていましたが、今は携帯電話がありますから、基本的にiPhoneにメモをしている”ということ。まぁ、それがコア・コンピタンスとなる職種ならばやるべきことかも知れない。
それはともかくも、我々のような人間の一般的雑談力をつける方法についての本はないものだろうか。

そこで先ずアマゾンで著者・安田正・氏の人となり等調べてみた。すると“1953年8月6日生まれ、宮城県出身。76〜77年英国留学。78年神奈川大学外国語学部英語英文学科卒業。株式会社兼松パーソネルサービス・国際化事業部長を経て、90年企業向け語学研修機関、株式会社パンネーションズ・コンサルティング・グループ設立。現在、代表取締役、早稲田大学理工学術院非常勤講師。”とあり、生年月日情報は年までにとどめるべきであろうが、恐らく英国流の発想がどことなくありうるのかも知れない、とも思われ急に無性に読んでみたくなったのだった。
しかし、書評では“常識的な内容で、特に得るものはありません。「超一流」とは言いすぎ。”(星一つ)等があって多少気にはなったが、読み手側の問題もある場合もあることが多く、ネガティブな評価を下す人も一部にはいるものだと思ったのだ。
実際に書店店頭で手に取ってみて、冒頭の“雑談とは、意味のないムダ話をすることではありません。雑談とは本来、人間関係や仕事の質を根本から変えてくれる魔法のようなメソッドなのです。”の台詞は気に入った。“短時間で人の心の中にふっと入っていく方法。これが、本書でお伝えしたい「超一流の雑談力」です。”でますます読む意欲がそそられたのだった。
しかし、読了後しばらくたってからの印象は薄い。何だが“「超一流」とは言いすぎ”とまで言いたくなってくるほどだ。何故かと考えたが、当初、“雑談”なので勝手に自分のような立場の人間が、接する局面での会話であろうと早合点したのが一因のような気もする。もう一度、全体を“おさらい”してみると、主に営業担当のビジネスマンの商談前後での会話にフォーカスしていると分かって来た。だから、社会経験の乏しい若い営業マンには非常に“お勉強”になるのではないか。
だから、“開口一番は「よろしくお願いします!」から”始めよとなり、話題の持って行き方に計画性(プランニング)を持たせて目的を置くのが良いが、予め全てをシミュレーションしておくよりも“重要なのはあくまでもゴールを決めておくこと。常にゴールに向かって会話を進めていくこと”になる。若い時は何を言われても実感を伴って、身に滲みて痛感することはないものだろうが、一度は読んでおくと良い。
ビジネスの会話には“最低限が日経新聞”、“より質の高い情報を探すときは日経産業新聞がおすすめ”というのは、私の実体験から言っても間違いない。かつて、営業の技術面でのサポート役として技術サービスという職種を担当したことがあった。その時、私の担当範囲では中小企業の経営者との会話の機会が多かったのだが、それこそ雑談で“先日の日経新聞で・・・という記事がありましたが、・・・だと思うのですが・・・”と言うと、相手の経営者は大抵真剣な目つきになったことを思い出したのだ。そこでヒマを見つけては、アポを取って出かけて“雑談”をしかけていたこともあった。私の場合は、申し訳ないが産業新聞まで読み込む力量はなく、日経新聞で精一杯だった。
確かに、自分に欠ける部分についても多数指摘されている。その全てをまとめて書いてしまうと問題が多いので、ここではひとまず著者が雑談能力の向上のための訓練方法をこの本の最終部分に紹介していて結構有効のように思うので、それを紹介しておく。
トレーニング・レベル1:エレベータで「何階ですか?」と聞く
トレーニング・レベル2:お会計のときに店員さんとひと言話す
トレーニング・レベル3:混んだ居酒屋で店員さんをスマートに呼ぶ
トレーニング・レベル4:アウェイの飲み会やパーティーに参加する
トレーニング・レベル5:社内の苦手な人・嫌いな人と軽く雑談をする
トレーニング・レベル6:インプットしたことを社内で話す、ウケる社内スピーチを考える
トレーニング・レベル7:「謎かけ」を練習する
トレーニング・レベル8:結婚式などフォーマルな場で、おもしろい乾杯の挨拶をする
私は“混んだ飲食店で店員さんを呼ぶ”のが非常に苦手で、時に調理場の傍まで行って、意向を伝えることが多い。そんな人に発声方法を次のように紹介してくれている。原文を多少変更しているが、“口を閉じたまま鼻声で一定の音を出してみる。その間にあくびをするような感じで喉を開いてみると、同じ強さでしか鼻声を出していなくても、大きく響くことがわかるはず。”と言っている。
私の友人には、“お会計のときに店員さんとひと言話す”のが上手いのがいるが、一度彼にその要領を聞いてみるべきだろうか。多分、聞かれた方も戸惑うのだろうが・・・。
“アウェイの飲み会やパーティーに参加”については、私の属性が何故かいつもマイナーな部分にあることが多く、何かある度に、アウェイ感をたっぷり味わってきた人生だった。例えば、鉄鋼メーカー勤務時のことだったが、冷間圧延の焼鈍プロセス担当だったが、圧延部会の会合に入れられて全く会話になじめなかったことがあった。或いは、上工程の製鋼の部会にも放り込まれたこともあったが、そこでは連続鋳造設備のタイプについての見解を相手に正した経験を思い出したりする。
或いは、英国人のように“パーティーのような場に限らず、日常会話でも不意にクイズを出してくるなどして、いろんなところで話を盛り上げようと試みる”ことも良いのかも知れない。
そんな経験や機会のない人には、著者は代わりに「行ったことのないバーに行ってみる」「タクシーの運転手と話す」「初めての美容院に行く」ことを提案している。自分が初めて訪れたような土地で捕まえたタクシーになら、こっちの体調も元気ならばいろいろ質問してみることはできるが、そうでなければしんどいこともある。
相手に興味津々で体調万全なら問題なかろうが、そうでない場合でも訓練と思ってやることが望ましいのだろう。
少々気になったことがある。それは敬語の使い方について書かれている部分だ。
例えば、「年始のご挨拶にお伺いしました」は不可で「年始のご挨拶に伺いました」が正しいという。一方著者は“自分がする動作に「お」や「ご」はつけない”と言っているが、それなら正解は「年始の挨拶に伺いました」ではないか。以前テレビで、こういうビジネス会話やマナーのコンサルというオバサンも同じようなことを“下品に怒鳴って”いたが、こういう人たちは敬語には“丁寧語”があるということを知らないのではないかと思われる。これには困ったことだと思うのだ。正確には敬語には“尊敬語”、“謙譲語”、“丁寧語”の3つがある。自分の行為に「お」や「ご」を付けるのは、相手への敬意をこめた丁寧に対応するための言葉なので問題ないはずではないか。まぁ、ここでの著者の本意は“美しく丁寧でも、話す内容はあくまでもフレンドリー”であるとこのようである。
しかし、そこまでやるか?と思わせる記述もある。それは、“雑談の力を伸ばすためにぜひ行っていただきたいのは、雑談ノートをつけること”“昔は大学ノートを使っていましたが、今は携帯電話がありますから、基本的にiPhoneにメモをしている”ということ。まぁ、それがコア・コンピタンスとなる職種ならばやるべきことかも知れない。
それはともかくも、我々のような人間の一般的雑談力をつける方法についての本はないものだろうか。

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