The Rest Room of ISO Management
ISO休戦
トップ・マネジメントとリーダーシップ
トップの全人格から滲み出るオーラは 良きにつけ悪しきにつけ、企業全体に 及びます。トップは リーダーシップの発揮を通じて 企業全体に影響力を行使しています。統治期間の長いトップの場合 そのトップの性格が そのまま企業カルチャーとなっている場合も多いものです。ヘッポコカンパニーに登場するシャチョウさんたちは いずれもマヌケな印象ですが、こういうマヌケな要素が その企業に及んでいるとすれば―大抵は影響が及んでいる―それは その企業にとって 非常に重大な問題を惹起します。これは 企業規模の大小にかかわらず認められることですが、中小企業は トップの比重が高く、そのリーダーシップは非常に大きいものです。
ISO9000では“品質マネジメントの原則”として2番目に“リーダーシップ”を取り上げています。(1番は言わずもがな“顧客重視”)ここで、は「リーダーは、組織の目的と方向を一致させる。リーダーは、人々が組織の目標を達成することに十分に参画できる内部環境を創りだし、 維持すべきである。」と注釈しています。
経済学者のジョン・ケネス・ガルブレイスは「“リーダーシップ”ということばが、油断のならないつかみどころのないもの」だ、と言っています。第二次大戦の戦後処理の尋問で 実際に会ったナチス・ドイツの指導者のほとんどが、アル中で下品な連中であったことから そう信じるようになったと言うのです。そして、「今日必要なことは“リーダーシップ”ということばを“手本”ということばと入れ替えることである」と言っています。(“思いやりの経済”1999年 http://www.tachibana-inc.co.jp/detail.jsp?goods_id=1227)リーダーシップは 本来、人々を ある正しい方向に導くものであるため、重大な責任がともない、そのために高潔さが必要であることを言っているのだと解釈しています。
新原浩朗は“日本の優秀企業研究”において、経済学の分野で“リーダーシップ”を研究したベンジャミン・ヘルマリンを引用しています。「組織のメンバーが強制されてではなく、自主的にリーダーの指示に従うこと」。「リーダーがメンバーよりも経済学で言う“情報の優位性”を持っていることを前提して、メンバー全員に影響を与えうる情報を持っていることがリーダーシップの源泉である」と。さらに新原は、メンバーに成功することを確信させるための手段として“率先垂範”が 社会的に望ましいと述べています。「経営者が自分の理念や方向性(に沿って)、言行一致の断固たる実行の大切さを主張し、実行に当たっては自ら率先垂範する」ことは重要であると述べています。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532310865/qid%3D1124021303/250-4556941-6687454
“指揮官先頭、率先垂範”という旧日本海軍の伝統とされていた言葉があります。単縦陣形態の艦隊の先頭に指揮官の座乗する旗艦を配置し、敵軍と戦うという伝統です。この時、通常 敵弾は先頭の旗艦に集中するので それに続く揮下の僚艦が 必死に戦うという戦法です。日本海海戦はまさしくこれで勝利しました。旧海軍と言えば 有名な山本五十六提督の「やって見せ、言って聞かせて、させて見せ、ほめてやらねば、人は動かじ」という言葉もあります。まさに、指導・教育・リーダーシップのための至言ですね。リーダーシップのキィ・ワードは “率先垂範” です。
(誤解を恐れて、注釈しますが 旧海軍を礼賛するつもりは 毛頭ありません。旧海軍は 総体として“失敗の本質”だと思っています。率先垂範それ自体は 正しいのですが その考えを生み出した具体的イメージの艦隊決戦思想が 自覚不足で時代遅れになったのに気が付かなかったのが問題です。いわゆるcontingency対応力不足だったのです。それにしても 自ら生み出した 航空優位の戦術の有効性に 心底 本気にならない、というのは 不思議な精神構造ですネ。) http://book.diamond.co.jp/cgi-bin/d3olp114cg?isbn=4-478-37013-3
人々を間違った方向に導かないリーダーシップこそ大切だと思います。そのためにもリーダー自身の、やって見せるための経験や訓練、高い教養のための学習、さらに人格的研鑽、は大切です。外部情報の途絶した 前人未到の極限状態での決断には 視野の広い柔軟な思考が 判断誤りを少なくするために必要です。そして、重要な決断は 常に 情報不足の中で 迫られます。そうでないと タイミングを失するのです。後出し ジャンケンは負るのが現実です。経営者は 決断に際して孤独です。ですから、経営者はいつまでも“お勉強” 必要ですね。
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若い時、何かのセミナーに行った時に、松下から来られた講師が 松下会長から取説なしで扱える電器製品を作れと言われて困っている、と自慢めかしておっしゃっていて、感動したことを覚えています。
最近買ったDVDプレーヤーが 取説通り操作するのですが上手く行かなくて このことを思い出します。
異見卓見ですね。翁は どのように お勉強なさったのでしょう。チャンドラーの“組織は戦略に従う”など 読まれたのでしょうか。多分 頭からではなくて実戦の工夫のなかから事業部制を敷かれたのでしょうね。
生前の翁の表情を見ていていつも思ったのですが、なんとなくいつも 翳のある 寂しそうな 印象だったのが気になっていました。
ヤッパリ孤独で 居られたのでしょうか。
イヤー 大変 意味深長で迫力ある お言葉ですな。
そんな人に 言われると 古館さんでも 直ぐには返せない、しばらく沈黙でしょうネ。全てが吹っ飛ぶド迫力!