今敏 著 「KON’S TONE『千年女優』への道」を読了。
この本は、元々は今監督のWebサイトで公開されていた文章があって、それを一冊に纏めたものですね。
平たく言えばブログ本?
本の内容としては大きく3章立ての構成で、最初に「千年女優」のアイデアが出てくるところを書き綴った章、次に「パーフェクトブルー」を作っている時にある人物のせいで進行具合がグダグダになった怒りを面白可笑しく纏めた章、そして最後は四方山話と自己紹介。
といった感じです。
本のタイトルこそ「『千年女優』への道」とあるけど、本のメインは「パーフェクトブルー」の話で、「戦記」と名付けられた如何ともしがたい制作担当との闘いは見応え十分。
というか、ここに書かれているようなヤツが社会人として世の中にいると言うことが恐ろしい。
いくら特異な業界とはいえ、そういうのがいることが特性とも思えないけど…。
ちなみに、ここでの今監督の体験が、後に発表された「妄想代理人」の第10話の元ネタだったんだということを、この本を読んで初めて知りました。
あの第10話は本筋から外れた業界裏話的な展開で、全く仕事で使えないどころか足を引っ張るだけの小男が主人公だったけど、よもやモデルとなった状況があったとは…。
「妄想代理人」のあの回は、今考えると確かに何かの怒りがこもっていたような気がするなあ…w
とはいえこの本でも愚痴や怒りをとっ散らかして書いているだけという訳ではないです。
もちろんそんなことを書かれても読んでる方は陰々滅々となるだけだしね。
そこはそれ、今監督独特のテンポとユーモアで面白可笑しく書かれている訳で、今監督の怒りのボルテージの割にはにこやかに読める。
面白い業界内幕モノでした。
「パーフェクトブルー」の現場は特に極端な例だったんだろうけど、何かを生み出すというのはやはり並大抵のことではないんだなあ、とつくづく感じさせてくれる本です。
何せ闘っていた相手が、背後から鉄砲で撃ってくる味方だったのだから。