「群像」昭和45年4月号に掲載されて、短編集「小えびの群れ」に収められた短編です。
数年前に、ねずみを台所に閉じ込めたことを書いたノートをもとに、その時のことを思い出しています。
といっても、それは全体の枠組みにすぎず、そこから連想される以下のような様々な事柄を描き出していきます。
・童話「ハメルンの笛吹き」
・中学二年の下の息子の笛の練習がはかなく聞こえること
・17世紀のオランダの銅版画「ねずみ捕りの男」
・小さいころに父親(帝塚山学院の創始者です)に海外旅行土産にもらったドイツの漫画(老夫婦を相手にねずみが大暴れします)
・下の息子が小学六年の時に習った唱歌「三びきのねずみ」
こうした時代も場所も違う作者の思い出を有機的に結び付けて、ひとつの優れた文学作品を紡ぎ出しています。