ホトケの顔も三度まで

ノンフィクション作家、探検家角幡唯介のブログ

橇作り

2013年12月10日 23時13分37秒 | 雑記
あまりにも当たり前のことで今まで書かなかったが、今冬も北極圏に行く予定だ。

オール読物の連載を読んでいたという希少な人は別だが、多くの人は私が今何をメーンテーマにしているか知らないと思うので、一応あきらかにしておくと、今私は冬の太陽の昇らない極夜の北極探検をテーマに活動している。しかもGPSをつかわず、天測で旅をするというものだ。

今年は11月からグリーンランドに行く計画で、妻の妊娠が発覚してからも、それは変わらなかったが、いろいろと思うところがあり、出産に立ち会ってから出発することした。出産予定は今月下旬だが、困ったことにいつ生まれるかわからないので、出産後に航空チケットを手配することにしている。

もちろん、いつでも出発できるように、準備は着々と整えている。今日は沼田の清野さんの会社の作業場で、職人さんに手伝ってもらいながら、橇づくりをしてきた。

今まで極地用の橇はカナダの極地探検家リチャード・ウェーバー氏のところのプラスチックの橇を購入していたが、プラスチック製の橇は軽くていいのだが、壊れると修理ができないのが難点。しかも私の場合、衛星電話も持っていかないので、壊れたら、その場でほぼ死亡の可能性が高い。それはやはりちょっとこわいので、壊れても自分で修理できる、今年はイヌイット式の木製橇を試すことにしたのだ。

設計図は極地探検家山崎哲秀さんにお借りした。それをもとに、二週間ぐらい前にはだいたい本体はできていたが、今日は軽量化のための、本体の肉抜きと、ランナーの取り付けをおこなってきた(写真)。材料は檜。選定は特殊家具製造が本業の清野さんにお願いし、重さと強度の点から選んでもらった。合板材は軽くてつよいが、極低温で長期間使用した場合、接着部分から壊れないかちょっと不安だそうで、やはり木材のほうが安心だという。

ランナーも清野さんのアイデアで、50ミクロンのテフロンを塗りつけたステンレス材を採用。何かの極地探検記にランナーは摩擦係数が低いテフロンが有効との記述があり、自分が極地に行く時はそれをつかおうと頭にインプットしていたのだそうだ。どこにそんなことが書いてあるのか、調べなければ。

テフロンランナーははじめてお目にかかったが、つるつるで、これは引きやすそうで、素晴らしい。世界広しといえども、テフロンを触って「引きやすそうだ」と喜ぶのも私だけだろう。今日は一日かけて、檜材を工具で削りまくっていただけに、今もまだ檜のニオイが抜けない。

極夜の北極探検には、アグルーカの時には使わなかった道具がたくさん登場する。そろそろ、(株)タマヤ計測システムさまのご協力により、今回最大の秘密兵器である、戦前の日本軍が使っていた(けど、その後長らく製造されていなかった)気泡六分儀「角幡スペシャル2014」が完成予定なので、そしたらまた報告します。

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