日本人の冒険と「創造的な登山」 本多勝一ベストセレクション (ヤマケイ文庫) | |
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山と渓谷社 |
解説を書いた本多勝一さんの『日本人の冒険と「創造的な登山」』が届いた。
この本は、本多さんの登山や冒険、遭難報道に関する評論やルポルタージュをまとめたもの。『山を考える』『冒険と日本人』『リーダーは何をしていたか』の三冊から、主な作品を収めて、このたび文庫本となった。
本多勝一のルポルタージュや冒険論は、学生の時にかなり読んでいて、相当な影響を受けていたので、山と溪谷社の神長さんから解説の依頼を受けた時は身の引き締まる思いだった。送ってもらったゲラをロシアに持ち込み、ウオトカを飲んでいない時に断続的に目を通した。
久しぶり本多さんの冒険論を読んで、実は結構ショックを受けた。私はこれまで自分でそれなりに独自の冒険論を築き上げてきたつもりだったが、実はそれが本多さんの冒険論の焼きまわしに過ぎないことを思い知らされたからだ。自分のオリジナルだと思っていた理論はすでに本多さんの本に書いてあったのだ。本多さんの冒険論は学生の時に読んでいたため、部分的にしか覚えておらず、でもたぶん何となく頭のどこかには残っていて、それが自分の中でオリジナルな冒険論となって再生産されていたのだろう。
なんということだ。まあ、しょうがないか。
ということで、解説では「反体制」として冒険、というタイトルで、自分でオリジナルなものだと思っていたけど、実は本多勝一がすでに昔、展開済みだった冒険論を書いている。さすがに本多勝一の解説なので、ロシアで数日かけてじっくり書こうかと思っていたが、普段から結構考えているテーマだったので、一日ですらすら書けてしまった。自分で言うのもなんだが、冒険とは何か、ということについて書いた文章の中では、最も本質をついていると自負している。もちろん解説なので、原型は本多さんの冒険論にあるのだが……。ちなみに、本多さんご本人にも喜んでいただけたようで、お礼の手紙をいただいた。
あと、この本では驚いたことがもうひとつあった。
なんと、著者プロフィールのところに、本多勝一の素顔の写真がのっているのだ。いつ、カツラとサングラスを外したのだろう……。こんな顔してたんだ。初めて見た。