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Ave Maria バッハ/シューベルトの競演:天満敦子さん「望郷のバラード」に寄せて(2/3)

2005-12-26 01:35:46 | 音楽鑑賞蘊蓄録
 
 そろそろ、お約束を果さなければならない。
 

 すでに1ヶ月以上も前になるか?天満敦子さんの記事(初回と第二回の投稿日付:7月19日/11月16日)を、3回掲載する。と明言したことを・・・

そのお約束を本日実行する。

(本日記事、クラシック室内音楽関連の素人論議に、あまりにも偏重過ぎています。いささか退屈される向きの方、先にランキングを調べておいてください・・・)
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 「-本文-」

 このCDのメイン「Balada」は、我輩にとっては今までに聴いたことのない「新しい曲」・・・
11月の投稿にて、
「天満さんの『Balada<望郷>』は、少なくとも10回以上聴かないと何もコメントしてはならない、したくない・・・」
と、同記事に明言している。
すでに、いや、ようやく10回程度、この曲を聴いた。

しかし、テーマ曲であるはずの「望郷=Balada」については、未だコメントするに至らない。望郷は、もう少し聴き込んでコメントいたしたく、次回にゆずりたい。
 
全14曲(望郷はピアノ伴奏にて一曲と、同曲の無伴奏演奏の2曲。正確には合計15曲)の収録されているCD「天満敦子Balada<望郷のバラード>」には、バッハ作曲グノー編曲の「アヴェマリア」と、シューベルトの作曲で有名な「アヴェマリア」。同じ題名の曲、全く違った同題名の曲を、CD収録上第12番と第13番に連続収録され、続けて流れてくるから、面白い。
さて、
いずれのヴェマリアも素晴らしが、特にバッハ原作グノー編曲の「アヴェマリア」をして、このCD「天満敦子Balada<望郷のバラード>」に於ける、最高の演奏曲ではないか!と、我輩の偏った趣味嗜好の中にて「明言」したい。もっと云えば、天満敦子さんの感性と奏法は、バッハ&グノーの『アヴェマリア』演奏に最っとも適した奏法であり、ひょっとしたら天満さんのヴァイオリンは現代の世界中に存在する現役ヴァイオリニストの中、アヴェマリア演奏の「最高峰」に位置するヴァイオリニストではないか!と思う。(若し、実際に天満さんが最高峰に位置する存在ならば、これ、たいへん失礼な発言!室内音楽鑑賞は未熟にして無知なるがゆえ、お許しいただきたい・・・)

バッハ/グノーの「アヴェマリア」は、演奏時間7分15秒。さすがに長い!
<以下、演奏曲の長さと同じく、7分15秒?かけて、我輩の「天満さん奏法アヴェマリア感想文」を、是非とも通読願いたい・・・>

寸分違わず同じキーを維持し、同じレベいルの音量を継続し維持しつつ、なんとも音の息の長い(同音を長く継続できる)天満さん独特の奏法:弓捌(さば)き?、により、最初静かに、祈りのイントロダクションが始まる。清らかな処女の祈りを想像させる旋律は、神に対する穢れ無き祈りの心境を表しつつ、この名曲はスタートする。途中、静かな祈りは、神に対する訴えになる。敬虔な信者が、神に対し、何かを願い、何か大きな要求を始める。しかし、未だに報われない、現世に生きる苦しみを、神に訴え、渾身の力を込めて祈りながら涙を流しつつ、いよいよ神に向かって叫び始める。神に対する叫びは、今もって願い通りの答えが出さない「神」に対する「不満」やるかたない嘆きの罵倒になり、さらに大声で泣き叫ぶ罵声に変わり、、、。祈りつつも、罵声と共に大粒の涙が溢れ出だす。そんな、人間的な生身の「祈り」を「神」に捧げるも、喚きたてつつ必死な祈りを続けるも、祈り願うものに反応しない「冷徹無能な神」を罵倒する激しさは、頂点に達する。そんな神に祈る人間、生身の人間の神への訴え。この様な人間の無衣にして露わな姿と情景、天満敦子さんの演奏する「バイオリンの音色」の素晴らしさと類稀なる彼女独特の演奏技巧により、見事に表現されているではないか!
かくして、祈りをささげる心身清らかな祈祷者は、目覚める。神に対する罵倒の末、行き着いた先は安堵。祈りの末に安堵し冷静になれば、祈りの場にあるまじき我が醜き姿をあらめて自覚し、神を罵倒した間違った祈りの行為を反省する。もって我に返り、祈りを捧げ精神的安定を得たのち安らぎを持ちつつ、そして祈りは終わる。

纏めれば、、、

静かに祈りは始まり、
つぶやきつつ、嘆きが始まり、
それが、ついに神への罵倒となり、祈るものの罵声によって爆発し、
怒りと不満を吐き出した後、落ち着きを取り戻す、
そして、我に返り、自己の修練を継続すること神に誓い、
そして、祈りは終わる。
(いつも我輩、天満敦子さんのヴァイオリン演奏を鑑賞し、その度に、上記のストーリーを描く。この情景、曲を聴くたび繰り返し目前に浮かんでくるのだ・・・)

7分15秒間の「物語」は、かくして静かに幕を閉じる。

バッハ作曲のアヴェマリアの曲に内在する「激情」を、天満敦子さんのバイオリンを聴いたことにより、あらためて気がついた。
アヴェマリアたるもの、何故にこうも精神的に激しく且つ攻撃的な人種によって祈られるか?・・・
過去に見えていなかったものが、この曲を聴いたことにより、見えてくるのである。キリスト教世界の本質と情緒は、我々<我輩に限り?>東洋的精神構造では理解しがたい域外に位置するものか。その域外の出来事を、見事に解釈され表現され尽くされているのは、信じがたき感性を持つ「名ヴァイオリニスト天満敦子」さんなり・・・
バッハ作曲天満敦子演奏の『アヴェマリア』!
聴くたびに、聴くほどに、、、
より一層に敬虔あらかたとなり、不朽の名曲であるという事実を思い知らされ、日本人バイオリニスト天満敦子女史により、ここまでに表現しきれるものか!あらためて、また、あらためて、バイオリニスト天満敦子のもつ天才的感性と、その基盤にある弛まない修練の成果を、我輩の全身で受け止めても尚、受け止め切れない「偉大」な情感が伝わってくるのである。

もっとも、
シューベルトの『アヴェマリア』も、たいへん良い。
しかし、シューベルトのアヴェマリアは、多くの演奏家によって演奏され、加えてそこそこの歌唱力ある世界中の歌手に歌い継がれているから、我々には親しく耳慣れている。
この2曲は、決して比較対比できるものでもなく、する必要すらない。作曲された時代背景の違いと、二人の異なる名作曲家の感性の違いにより、聞き手に訴えようとしている「フィールド」の大きな違いがあるからだ。

本日の我輩、ただただ『大声で喋りたい』事あり!
それは、いかに天満敦子さんのヴァイオリン演奏が素晴らしいか!唯その一点である。
 
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PS:「あまぞんどっとこむ」の音楽CDの評論文の中、天満敦子さんの演奏法について、そうとう辛口の「評価・批判」をしている感想文がある。何を持って辛口になったか?その辛口批判内容を読解するに、天満さんのヴァイオリン奏法をして「重っ苦し」く且つ「執拗な粘っこさ」がある、という批判である。
さる人から、聞いたことがある。
「ヴァイオリンの演奏中に、やたら弦をヴァイヴレートさせて哀調を漂わせる奏法は、正調クラシック奏法においてして邪道であり、上品ではなく下品である、と、、。そういう角度から「天満さんの奏法」を評していけば、そうなるかもわからないというほどに、最初にこのCDを聴いた時点で、我輩にしてすでに仰天している。
しかし、ヴァイオリンという楽器はクラシック奏者の「独占的楽器」ではなく、広く深く民族を超え一般大衆民衆に基盤を持つ大衆的楽器と解釈すれば、ヴァイオリン特有の奏法を駆使し表現するは、邪道でもなく品格をそこねるものではないと、我輩は思う。天満さんの奏法は、若き頃から渡欧し、音楽留学し、長期に滞在し、地元の人々に囲まれ生活。もって欧羅巴独特の風土と文化に体当たりし、直に触れつつ、感じつつ、総合的且つ包括的に会得された「何か」を、ヴァイオリンという楽器で表現されているのであり、そんな基盤に立つ天満流表現方法に異論を唱える場合、欧羅巴の本質を知らない似非音楽評論家の「典型的・愚論的批判」であると逆批判したい。
ともあれ、
「こ、これは日本人の正式にクラシック奏者の演奏するバイオリンの音か!?」
「天満さんは、本当に日本人人種の奏者か?」
などと、あまりにも(適切に、適切な状況においてのみ)弦を微細に震わしてヴァイヴレーション等の技巧を巧みに取り入れておられるから驚いた。が、欧羅巴大陸において、まして東欧という(特殊な)環境風土と民族性を現すに、この程度のヴァイオリンの技巧の使用は、玄人ならば凡そ99%以上の奏者を以ってして、天満さん以上に取り入れているものであるから、比較対照なる他の奏者の演奏を聴いた数だけ「評論家」の耳は(耳障りと断定する以前に)受け入れなければならない程度の技巧にすら至っていない「天満さんの技巧」は、多いに「受入れ可能」。許容の範疇を云々する『評論』の方が、基準に達していないと再考慮すべきであり、一度2~3年かけて、東欧の音楽を聴き歩く旅にでも、お出掛けになったら宜しいのではないか。と、結びたい。

(他の音楽評論など、以下「あまぞんcom」から検索可能です。「鑑賞者の感想」中に上記(批判的)感想のピックアップは可能です。よろしかったら我輩の感想と対比してみて下さい。比較対照することは、論評の面白さを倍増します・・・)

望郷のバラード(ピアノ伴奏版)
天満敦子, 吉武雅子, ポルムベスク, ヴィターリ, クライスラー, シューマン, バルトーク
キングレコード

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