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感想:『とらドラ!』

2009年11月06日 18時11分35秒 | とらドラ!
とらドラ!1とらドラ!1
価格:¥ 536(税込)
発売日:2006-03-25


TVアニメを見て読みたいと思っていたライトノベル。

キャラクター小説たるライトノベルと青春小説のハイブリッド。それがTVアニメを見たときの感想。そして、第1巻にあたる本書の感想でもある。
本書ではこの両者のバランスが上手く取れている。ただアニメで観た範囲では、常にバランスが取れているとは言えない。

青春小説として、若い世代特有のイライラ、苦悩、怒りといったもやもやした感情がリアルに伝わってくる。だが、これが強くなりすぎるとキャラクターの魅力は弱まる。それでは本書の魅力の半分が消失する。
キャラクター小説として、個性的な登場人物に惹きつけられる。特に、ヒロイン大河の造型は小説の枠を壊しかねないほどの強烈さを持っている。しかし、それは青春小説としてのリアリティを奪い、登場人物たちの想いを薄っぺらなものにしかねない。

TVアニメで強く印象に残ったシーンが本書にある。大河と竜児が夜電信柱に怒りをぶつけるシーンだ。
自分たちを誰も理解してくれないこと、それは今だけの問題ではなく将来に渡る不安でもある。周囲の無理解は目に見えない敵であり、足掻いても足掻いても解決してくれないと分かっている。自分が何者であるのか。
これらは決して若い世代だけの悩みではない。だが、それらにどうにか折り合いを付けていくのが大人だと言えるのかもしれない。
ライトノベルでこんな生の感情が描かれるのは珍しい。クールに気取るか、上辺の感情表現がされることはあっても、思いの丈を言葉で飾らずに描くことはめったにない。それが印象的だった。

TVアニメ以上に、大河と竜児の結び付きが強く描かれているように感じた。この1巻を読めば、二人がくっつくのが自明のように感じられる。TVアニメを観ていて、その展開が面白くなかった。終盤、残り数話を見なかった理由がそれだ。この感情を未だにうまく表現できない。二人がお似合いのカップルであることは間違いない。それでも。それは、『翔んだカップル』の呪縛なのかもしれない。
かなりスローペースになると思うが、ゆっくりとこのシリーズを読み進めていきたいと思う。原作を通して二人の結末をしっかりと見守りたい。そう感じた1巻だった。(☆☆☆☆☆☆)


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