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栗本薫死去

2009年05月28日 19時13分44秒 | アニメ・コミック・ゲーム
作家評論家の栗本薫さんが亡くなった。

代表作の『グイン・サーガ』は現在TVアニメが放送中。原作は現在126巻まで刊行されている。
40巻過ぎくらいまでは追いかけて読んでいたが、一度離れてしまうとなかなか追い付けなくなってしまう。時間的にも、文庫本とはいえこれだけ増えると金銭的にも揃えるのは一苦労だし。

SFを読み始めた頃、彼女の作品も多く読んだ。SFのみならずミステリーなど多彩だったが、当時はかなり幅広く読んだものだ。特に「ぼくら」シリーズは好きで、『猫目石』は栗本作品の中で最も好きな作品となっている。

評論家・中島梓名義では、クイズ番組「ヒントでピント」の印象が強い。また、『小説道場』は私が最も強く影響を受けた本のひとつかもしれない。

そんな読者だった私だが、彼女の作品への評価には常に特別な感情が残っていた。通常読み手として作品に没頭するタイプなのだが、彼女の作品に限り没頭よりも自分ならこんな風に話を進めたいとか描きたいといった思いが沸いてくる。
栗本薫は、エンターテイメントに徹した作家だった。悪く言えば通俗的でベタである。しかし、そんな面を圧倒的な速度と密度で忘れさせるパワーがあった。
独創性や完成度においては決して優れているわけではない。だが、それを補って余りある魅力が作品の中に存在している。特にキャラクター重視の作品作りはその後のラノベへと引き継がれていったと見なしても間違いないだろう。

ただ栗本作品においてヒロインが幸せになることは非常に少ない。男性が主役の作品が多く、女性陣は影が薄い印象は否めない。そして容赦なく女性陣には不幸が訪れる。『グイン・サーガ』においても、主要ヒロインは常に試練が与えられ、非業の最期を遂げたりとその描かれ方は男性作家にはない印象を残す。

1990年乳がん、2007年すい臓がんと病魔との戦いの中でも壮絶な執筆量を誇っていた。もちろん若い頃よりは落ちたとはいえ、『グイン・サーガ』を隔月刊以上のペースで刊行している点だけでも驚異だ。まさに物語を紡ぎ出すために生まれてきた女性と言っても過言ではない。
『グイン・サーガ』は未完となったが、完結しない物語(ネバーエンディングストーリー)として、それはそれで「らしい」感じもする。最後の最後まで書き続けられた作品としてやはり栗本薫の代表作であることは間違いない。