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『ペルソナ4』クリアインプレッション

2008年07月24日 23時55分00秒 | アニメ・コミック・ゲーム
バッドエンディング、ノーマルエンディングに続いて、真エンディングを迎えたので、改めてこの作品の感想を述べてみたい。

ゲームとしての面白さは文句のつけようもない。難易度は高めと言うべきだろうが、ゲーム好きにとっては攻略しがいのあるレベルであり、戦闘に関してはレベルさえ上げれば難易度はかなり下がる。限られた時間内で様々な目標をこなしていくという日常パートに関しても、ごく一部を除けばゲームの進行に影響しないため、極端な話それを全く放置していてもクリアには問題ない。

戦闘は、いかに敵の弱点を衝くかというものであり、魔法主体の戦い方となりやすい。選択した難易度にもよるが、レベル差が少なければかなり歯応えある戦いを体験できるだろう。特に、ザコ敵に個性があるのが印象的だ。仲間の行動を指示できる点は、P3をプレイしていないので比較は難しいが、ない方が仲間の個性がもっとはっきりできたかもしれない。

主人公はレベルを上げただけでは強くなれない。ペルソナ合体を繰り返すことで強くなれる。ランダムで引き継がれるスキルをどれだけ粘って気に入るものが出るまでやり直すかでプレイ時間は大きく変わりそうだ。ペルソナ全書に登録されたものは、お金を払えば呼び出せるので、大昔の『メガテン』の頃に比べれば合体は楽になったけれど。ただベルベットルームで所持ペルソナの並び替えができない点はちょっと不満に感じた。

学園パートでの目的は、コミュのランクアップだ。そのためには主人公のステータスを伸ばす必要もある。限られた時間でいかにやりくりするかが醍醐味だが、初めてのプレイでは不意のイベントで予定がつぶれることも何度もあった。まあこれはそう予定通りにいかないものだと納得できる部分ではある(思えば『涼宮ハルヒの戸惑』でもハルヒによって予定が覆されるシステムだった)。ただ学校行事関連の日程はもう少し前もって分かるようになっていてもよかったのではないか。

自由度は低いが、このシステムはそれなりに面白いと感じた。ただシステムがシナリオより上位に位置するので、シナリオに関する評価は高くない。個々のコミュの進行度が他のコミュやメインストーリーの展開に影響を与えないので、所詮は「ゲーム的」なシナリオである。個々のコミュのストーリーは、よく頑張ってると思わせるものもあったが、全体に凡庸に感じた。これはプレイヤー側からシナリオに対して影響力を振るえないため、よほど印象的なシナリオでないと没入しづらいからだ。
メインストーリーにもそれは顕著で、仲間たちだけでストーリーが進み、プレイヤーの意志は置いてきぼりになっている。シナリオ進行のためにプレイヤーの動機付けを与えたいがための仲間たちの会話が、単にくどく感じてしまう。話を振って最後にプレイヤーが選択というスタイルよりも、プレイヤーが選択しそれから仲間が会話して必要なら方向性を変えるとかした方がもう少しシナリオに入っていけたように思う。

シナリオという点では、ノーマルや真エンディングでのラスボス戦で、「FF?」って感じを受けた。こんな勧善懲悪は、「ペルソナ」シリーズの元となった「メガテン」の初期の頃をプレイしていた身にはちょっとショックだった。『女神転生』シリーズは様々な斬新さがあったけれど、非常に強いインパクトを受けたのはゲームとしては珍しく単純な正義と悪の対立に持ち込まなかったところだ。大仰なテーマの作品だが、その中で主人公たちは道を模索し続ける。悪の元凶を倒してめでたしめでたしとなるパターンのRPGが多い中でそこに心惹かれたものだった。しかし、本作はラスボス倒せばオールOK!って感じで、それまで「噂」などけっこう面白く表現してきたのに全てを吹っ飛ばしてしまった。今のプレイヤーってこういう単純なのが好きなのかね。分かりやすいものだけを求める、「噂」に惑わされる人々のように。話が単純化してしまった終盤はストーリー的に非常につまらなくて、折角の面白いゲームなのに評価を下げざるえなかったのは残念だ。

音楽は素晴らしい。世界観にマッチしている。ここまで優れたものは他に思いつかないかもしれない。
演出はイマイチ。シナリオの質も問題もあるが、それをどう見せるかという点で独創性を感じなかった。先に挙げた「FF?」という思いは、しかしFFほど演出をはじけてないのでその縮小再生産って感じだ。

最後に、『ガンパレ』との比較。学園パート+αというゲームは数々あるが、どうしても『ガンパレ』と比較してしまう。『ガンパレ』はストーリーより自由度を優先した稀有なゲームだから、特別なのだけれども。
『ペルソナ4』はもちろん自由度よりストーリーが優先されている。あくまでも作り手の想定の中でプレイする、日本のゲームらしいゲームだ。ゲーム的な出来は秀逸だが、シナリオ的にはもうこのやり方では限界だと思う。ゲームとしては本当に面白い。それ以上を求めるのはもう酷なのかもしれない。