奇想庵@goo

Sports, Games, News and Entertainments

成功に導いた者

2006年03月23日 22時14分14秒 | アメリカンフットボール
スポーツネタをもうひとつ。

ポール・タグリアブーNFLコミッショナー、7月に勇退(NFL JAPAN)

最も成功したスポーツビジネスNFL。アメリカでいまや不動の人気ナンバーワンプロスポーツの座を獲得し、現代アメリカを象徴する文化となった。
これを生み出したのがピート・ロゼールであり、それを更に洗練したのがポール・タグリアブーだった。

弱冠33歳でコミッショナーの座についたロゼールは、対抗リーグのAFLと合併したり、スーパーボウルを創設したりと今日の礎となるシステムを作り上げ、およそ30年に渡ってリーグを全米で最も人気のあるスポーツに育て上げた。
1989年にロゼールから引き継いだタグリアブーは、フリーエージェント制とサラリーキャップにより、よりエキサイティングなリーグを作り上げた。

昨年、TV局との放映権の新規契約がなされ、今月には懸案だった労使協定が延長された。
放映権はNFLの屋台骨であり、この収入が全チームに分配されサラリーキャップの根幹となる。今回はFOXと6年42億7000万ドル、CBSと6年37億3000万ドル、NBCと6年36億ドル、ESPNと8年48億ドルと大型契約を結んだ(金額は推定)。4大ネットワークのうち、NBCが復活し、ABCが撤退した形だが、ABCの担っていたマンデーナイトフットボールが系列であるESPNに受け継がれることとなった。
一方、最も厳格なサラリーキャップ(選手等の年俸の合計に枠を嵌めるもの)は今回の労使協定でも維持され、今後6年間継続される。ドラフト制とともに、現在のパリティ(均衡)な戦力状況を作り、どのチームにも優勝のチャンスがあり、どの試合も勝敗に予断を許さないシステムは今のNFLの最大の魅力となっている。
こうしたNFLの将来に関わる契約を終えての勇退。次のコミッショナーがNFLをどんな方向へ導いていくのかが今後の関心事となっていくだろう。

ビジネス面のみならず、スポーツの発展には環境を整えるリーダーの存在が不可欠だ。日本でもJリーグ創設に川渕氏が多大な役割を演じたが、日本のスポーツ界に最も欠けている要素だろう。


WBC ワールドベースボールクラシック

2006年03月23日 20時51分39秒 | スポーツ
今更ながらWBCのお話。

開幕前、盛り上がるかどうか微妙な気配だったが、特にアメリカ戦の誤審以降非常に盛り上がり、日本国内では大成功の大会となった。個人的には日本以外のカードも見たかったのだが、時間的に見ることができず、日本の試合もアメリカ戦を見逃すなど熱烈な観戦者ではなかったのではあるが、優勝にはかなり興奮したし、感動もした。
とりわけファンであるイチローの活躍には目を見張ったし、またメディア等が彼を再評価する姿が素直に嬉しい。

イチローに対しては、「鈴木」時代から注目していた選手で、当時既に野球に対する情熱は薄れていたもののかろうじてそれを繋ぎとめていたのが彼の存在だった。
今回イチローの変化について語られることも多いが、よく言われる「クール」なイチローというのはあまり彼のプレーを見たことのない人の意見で、彼ほど熱いプロ野球選手はいないと昔から思っていた。ただ今回大きく変わったのは、メディアに対する姿勢。言葉だけが独り歩きしたり、あることないこと書かれてしまうスポーツ報道の世界に対して、彼なりの対応策が「クール」なイメージを築き上げる要因となった。
WBCでの彼のはしゃぎっぷりは、オリックス時代に優勝したときに見た姿と変わらず、もともとの彼の「いちびり」な部分が久しぶりに見ることができて嬉しかった。

プロ野球選手の中でも、とりわけ野球に対する熱意が多い分、他の選手との温度差は常に彼につきまとう点だ。プロと言えど野球に賭ける姿勢には個人差があるし、イチローの目からすれば真剣さに欠ける選手たちも大勢いたと思う。今回のようなトッププレイヤーだけが参加し、一つの大きな目標に短期決戦で挑むチームは、ある意味彼の理想だったのだろう。
イチローやサッカーの中田英寿のように貪欲な向上心を持ったプレイヤーは、日本ではなかなか真っ当に評価されない。イチローの再評価もスポーツメディアの向上ではなく、彼自身が分かりやすくアピールした結果に過ぎない点は残念だ。

WBCでもうひとつ、巨人偏重、セ・リーグ偏重のプロ野球にわずかながらでも風穴を開けられたとしたら、日本の野球にとって大きな価値があったということになるだろう。スポーツが日本で文化と呼べるものとなるには、まだまだ足りない要素が多い。選手自身もモデルロールとしての意識が低いし、オーナー等の関係者も文化として認知しえていない。特に課題の多いメディアはいまだ惨憺たる有様で、ほとんど絶望的な状況だが、それでも変わっていって欲しいという想いだけは失わずにいたいと思う。

アメリカ国内でのこの大会への評価は思いの外高く、意外な驚きだった。3月と言えば、言わずと知れたマーチマッドネス。カレッジバスケットのトーナメントに全米が熱狂することで知られる3月に、野球がある程度の関心を得たということは、大成功と呼べる成果だ。人気低迷にあえぐMLBにとって、今後に繋がっていく第1回大会となった。課題の多い大会でもあったが、第2回にそれが改善していけるかどうか、そしてアメリカがそこで力を発揮できるかどうかが3年後、そしてその後の大会の意義に大きく関わってくるだろう。