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奇想庵@goo

Sports, Games, News and Entertainments

スポーツファンとして

2010年02月14日 02時39分29秒 | スポーツ
2006年3月1日、トリノ五輪が終わって書いた記事がある。各競技の感想を述べた後に、「最後に」として次の文を載せた。

2月27日付読売新聞朝刊より、アルベルト・トンバのコラム「冬の詩」から引用。

「競争相手には、常に尊敬の念を忘れないこと。相手も、勝ちたい気持ちは、君と同じなんだよ」

最近、国際舞台での試合で対戦相手に敬意を払ったり、日本を破った相手を讃えたりする場面を見ることが少ない気がする。昔あのドーハで日本が韓国を破ったとき、韓国代表の盧延潤選手が日本の報道陣に対して日本の勝利を讃える言葉を贈ってくれたことを印象深く覚えている。今大会でも、ショートトラックの男子リレーが終わった後、アメリカのオーノは勝利した韓国チームの一人一人に握手しに回った。前回大会での因縁を乗り越え、スポーツマンらしいその姿に感動した。
勝ち負けは大切だ。勝利のために日々努力してきた成果を発揮する選手たち、それを応援する人々がいる。ただ試合が終われば、勝者に拍手を贈り、敗者の健闘を称える。こうした当たり前のことが当たり前に行われて欲しいのだけど。


先日のスーパーボウルで敗戦したコルツのQBペイトン・マニングが試合後に勝利したQBを祝福せずにフィールドを去ったことが話題となった。敗れた時こそその選手の真価が問われる。
それは選手だけでなく応援するファンも同様だ。結果に一喜一憂し、時に感情的になることもあるだろう。ただ公の場で感情のままにそれらを吐露するのは、みっともないことだ。正当な批判や分析はいいが、冷静さを欠き感情のままに罵る姿は醜い。自戒の思いを込めて、ここに記しておく。


WBC日本優勝

2009年03月24日 19時00分26秒 | スポーツ
正直、予想を覆す日本の連覇だった。

昨年の北京オリンピックでの戦いぶりから苦戦すると思っていた。だが、韓国に二度敗れたものの他の国との対戦ではかなり余裕のある戦いができていた。終わってみれば日本と韓国が突出した印象を残す結果だった。

国内の期待が極度の重圧となる中での優勝は素直に評価したい。前回大会はまだ手探りの中での勝利だったが、今回は期待が高かっただけにより厳しい状況だった。その中で、特に投手陣の活躍は見事だった。こうした大会では投手力の差が勝敗の鍵を握るが、日本の投手陣は抜群の安定感を見せた。MVPに輝いた松坂と、後がないキューバ戦と今日の決勝戦で素晴らしい投球をした岩隈は傑出した内容だったし、他の投手たちもそれぞれの役割をよくこなしていた。
一方、打線は安打の割りに得点に繋がらず、この決勝戦でもダメ押しのチャンスが何度もありながらことごとくそれを逸したあたりに物足りなさを感じたが、それでも最後の最後にイチローが結果を出してチームを優勝に導いた。打線は小粒感はあるものの日本らしい野球は見せられたと思う。

五度にわたって対戦した韓国も昨年のオリンピックの優勝がフロックでないことを証明した。日本との初戦で屈辱のコールド負けを喫したがそこから立て直し、投手の出来が大会前の構想通りにいかない中でも日本以外に敗れることなく決勝までやって来たのだからたいしたものだ。
勝敗の価値が乏しい順位決定戦を除くと韓国の1勝2敗。しかし、サンディエゴで見せた速攻はインパクトがあった。今日の決勝戦でも終盤の粘りはさすがだった。

今日の決勝戦は、岩隈の好投から日本に流れがやって来たが、そのチャンスで最低限の得点しか奪えず、好機を逸し続けたことで相手に流れを渡す悪い展開。特にノーアウト1・3塁から城島、小笠原連続三振を喫した5回と、ノーアウト2塁からランナーを進められなかった9回で、その裏に失点しているあたり流れをうまく呼び込めなかったことがよく分かる。
延長10回表、ツーアウト1・3塁でイチローとの勝負に出たことが結果的に敗因となった。ただ韓国は9回裏に同点に追い付くために主軸の3・4番に代走を使っており、残りの野手が一人だけという状況になっていた。この勝負はイチローを抑えることでチームに勢いを呼び込もうと意図したものだったのだろう。だが、不振といえどもイチローはイチロー。史上屈指の安打製造機相手にこの選択はやはり無謀と言われても仕方ないだろう。

見応えある日韓戦はあったものの、大会自体への評価は前回と変わらない。所詮はメジャーリーグが始まる前の前座に過ぎない。日本や韓国など本気で取り組んだ国はごく一部に過ぎず、オリンピックと比べても価値が高いと言えないだろう。
特にメジャーリーグ所属の選手たちの起用法に対してはチームからの制約がかなり厳しいものだった。村田が離脱して、日本では三塁手だった岩村を回さず、不慣れな片岡らをサードに使わなければならなかったのも恐らくチームからの要請によるものだろう。メジャーリーグの選手を揃えたチームはそうした制約の中で戦わねばならず、とても本気の戦いとは言えない。オランダが予想外に活躍したのもこうした背景があったからだ。
WBCはアメリカ国民には関心を持たれていないが移民の間で盛り上がっているという報道もある。決勝戦は5万を超える観衆だったと言うが、アメリカ在住の日本人・韓国人が多い西部での試合だったことが要因だ。

WBCが今後権威ある大会へと進化するかどうかはかなり疑問の余地がある。現状では金の稼げるコンテンツとは言いがたい。特にシーズン制であるアメリカで受け入れられるには、夏か秋に開催しなければ意味がない。しかし、メジャーリーグの試合を中断して行う価値は誰も感じていないだろう。今はメジャーリーグのマーケット拡大のための大会に過ぎないのだから。
真に野球の国際大会を望むのなら、それに見合う価値を創出しなければならない。メジャーリーグの言うがままでは価値は高まらないが、メジャーリーグを欠いても価値は見出せない。WBCを参加国の意見によって改善していければチャンスはあるかもしれないが、その道のりは非常に遠い。それでも積み上げていくしかないのかもしれないが……。


スケートアメリカ2008女子フリー感想

2008年10月28日 01時28分22秒 | スポーツ
米NBCのサイトなどを見てすでに結果を知った上でのテレビ観戦。ラスト6人の演技をざっと見た程度だけれど、数名の感想を。

☆長洲未来

両親は日本人ということだが、日本人離れした手足の長さに目を見張る。もちろんそう見せる演技構成が素晴らしいわけだが。
スピード感があるのは何よりも評価できる点だ。キムのSPもスピードを感じたが、彼女もその点が印象深かった。また、最初のスピンは先にも述べた手足の長さを巧みに表現していてインパクトが強かった。このスピンだけなら既にトップクラスの演技だろう。
後半ミスも目立ち若さを露呈したが伸びしろはかなりあると感じられた。まだまだ若いが、バンクーバーは十分射程内にある。最近の女子フィギュアではピークの一つは15、6歳あたりにある。長洲は2010年の冬季五輪を16歳で迎えることになる。

☆安藤美姫

彼女に対してはいつも厳しいコメントを書いている気がする。マスコミが騒ぎすぎることが原因で、常にオーバーレイテッド(過大評価)されている印象があるからだ。もちろん世界選手権を勝った選手であり、世界のトップクラスの選手であることに全く異論は無い。ただ現段階で浅田・キムの二人に勝つには相当の幸運が必要であることも間違いないだろう。
フリーの安藤は精彩を欠いた。ジャンプに大きなミスも無く(トリプルトリプルが回転不足に判断されたが)、それでいて得点は伸びなかった。おそらく四回転を成功させたとしてもキムには届かなかっただろう。もともと安藤はジャンプの印象が強いが、それ以外の面も力を付けて世界選手権を取った。それなのにこの日の演技はジャンプしか記憶に残らないものとなった。
ひとつにはスピード感のなさが挙げられる。ジャンプ以外は全体に緩慢で演技のキレが感じられなかった。SPのステップで転倒したせいか力を入れていたステップも印象に乏しいものとなった。ジャンプとジャンプの繋ぎでも目を惹くようなものがなく、ひたすらジャンプを飛んでいたという記憶しか残らない。
四回転に賭ける意気込みは分かるが、四回転が安藤を縛っているという思いはトリノの頃から感じ続けている。もちろん四回転を綺麗に跳べたなら高い評価に繋がるのは間違いない。だが、本番で試せないレベルの技に頼るのはどうかと思う。四回転を跳べなくとも世界選手権で勝てるほどの力を持っているのだから。四回転に挑戦する姿勢は素晴らしい。ただマスコミなどによって呪縛されているように見えてしまう。
ジャンプはともかく、それ以外の要素を次の中国での大会までにどこまで修正できるのか。今シーズンをどう過ごすかがオリンピックへの重要な布石となるだけに注目したい。

☆中野友加里

安藤ばかり注目されるが、中野の成長はかなり充実しているように見えた。演技の深みという点ではキムには劣るが、それでも高い表現力は見事だ。中野らしさというものが表情だけでなく演技として出せるようになってきた。
課題ははっきりしている。トリプルアクセルとトリプルトリプルのコンビネーションジャンプだ。日本のトップスリーで甘んじるならばこれらは必要ない。しかし、世界のトップスリーの座を狙うには絶対に必要となる。試合後のインタビューで自ら真っ先にこの課題を挙げていた。しっかりと自覚している点で伸びる余地は十分にあると思った。
フリーの演技だけ見れば、安藤よりもいい内容だった。それでもキムとの差は大きい。先に挙げたジャンプを安定して跳べるようになった上で初めてキムとの勝負の舞台に立ったと言える。バンクーバーまでの時間を考えると、今シーズン中に一度はこれらのジャンプを本番で見てみたいところだ。この日の調子は万全ではなかったが、それでも安定した演技を見せた。次はしっかり調子を整えて、チャレンジして欲しい。

☆キム・ヨナ

ミスがなかったわけではない。それでも圧倒的な勝利だった。スピード、表現力、ジャンプの安定感、そして自信。着実に成長している様子が窺えた。
浅田真央もそうだが、たとえ失敗してもそれを乗り越える精神的な強さが伝わってくる。それが演技の細部にまで宿り、見る者を惹きつける。高いスケート技術が表現力の礎になっている。
もちろんまだまだ現状に満足していないだろう。何と言っても高いレベルで競い合うライバルの存在が互いを高めているのは間違いない。自国開催のグランプリファイナルで3連覇も掛かっている。また女子では未だに達成していない200点越えも視野に入っているだろう。こうした高い目標の先にはもちろんバンクーバーがある。
現状世界で彼女を脅かすのは一人だけだ。恐らくキムは現在のレベルの維持と精度の向上に力を注ぐだろう。技術的なレベルでの新たな冒険は必要ない。完璧なキム・ヨナの演技を見てみたいと思う一方、それを上回る浅田の演技も見てみたい。バンクーバーに向けた二人の戦いに世界中がワクワクしているのではないか。


サッカー日本代表とウズベキスタン戦

2008年10月16日 18時08分30秒 | スポーツ
ウズベキスタン相手にホームで引き分けたものの、大騒ぎしなくてもワールドカップ出場の可能性は高いと思っている。5チームの中ではオーストラリアが頭一つ抜け出ているが、2位までは自動的に出場できるのでその1つの椅子を日本、カタール、バーレーン、ウズベキスタンで争うこととなる。この中では経験の差で日本が紙一重上回ると思う。
だが、ワールドカップに出場したとしても期待できるものは何もない。ホームで戦った日韓W杯のような奇跡は起きず、1次リーグ敗退は間違いない。

誰が監督になっても変わらないとは思ってはいないし、岡田監督を評価しているわけでもないが、日本の現状はそう簡単に変えることは難しいだろう。
代表チームとは単なる選手の寄せ集めではない。極端な話、その国民性の結露である。スター不在も決定力不足も監督の指示以外できないプレイスタイルも日本代表チームだけの問題ではない。
出る杭を叩かずにいられない国民からスターが輩出されることは難しい。中田英寿の孤独は、日本人の悲しい性が生み出した。
事なかれ主義が蔓延する社会から決定力のあるストライカーは出てこない。総理の椅子を簡単に投げ出す時代にサッカー選手にだけ責任を求めても仕方がない。
サッカーは創造性のスポーツである。戦術という型にいかに押し込めようとそこからこぼれでる生命の息吹こそがサッカーの喜びだ。型の中に埋没してしまうプレイには誰も見向きしなくなる。しかし、現実社会でも個人は組織の枠の中に埋没してしまっている。大衆はスポーツにその枠からの逸脱を期待するが、スポーツもまた社会の一部なのだ。

とはいえ、変えようという努力なしに変わることは決してない。そして変化は常に痛みを伴う。
岡田監督のサッカーは変化を求めるのではなく、現状のベストを求めている。ワールドカップ出場という目的のための方法論としては間違ってはいない。もちろん具体的な戦術に対しては批判する余地は多分にあるが。
前任のオシム監督のサッカーは変化を求めた。結果が出るまでには相当の時間を要すると思われた。その過程において、ワールドカップ出場を逃すことも大いに考えられた。今の日本代表を芯から変えようと思えば、5年や10年のスパンが必要となる。たかだか1年や2年の結果で評価するようなものではない。
どちらがいいか、正解はない。ワールドカップ出場を積み重ねることも決して間違いではない。アジアの出場枠が増えたことが最大の要因だとしても、出場できなかった長い時代を知る者にはその価値は計り知れないものだ。
ただ個人的な想いとしては、今の日本のスタイルを一度打ち壊すくらいの荒療治が必要だと思っている。世界のトップレベルと肩を並べるためには、今のスタイルの延長では無理だ。アジアで勝てるサッカーで世界相手には戦えない。

もう一つ気になることがある。黄金世代の後、今の日本代表の中核を占めるのは”谷間”と呼ばれた世代だ。そして、その下にはプラチナ世代など評価の高い若手の世代がある。
谷間の世代は確かに世界で結果を残せなかった。だが、闘莉王、大久保、松井らは気持ちが伝わってくるプレイを見せる。これに対してその下の世代は技術の高さは窺えるが、気持ちが伝わってこない。北京での惨敗振りはオーバーエイジ枠を使ったかどうかではなく、戦う姿勢の問題に映った。
当たり前だが、サッカーは気持ちだけでは勝てない。しかし、最後の最後に鍵を握るのは精神力だったりする。自分のパフォーマンスではなく、チームの勝利のために何ができるのか。無駄かもしれない一歩の積み重ねが大きな力となることもある。

最後に昨日のウズベキスタン戦。前半あまりボールタッチできなかった大久保だが、それでも相手に警戒されるだけの動きは見せていた。特別運動量が落ちたわけでもないのに62分で交代した時点で、日本の勝利の目は消えたと思った。どうしても岡崎を入れたいのならあそこなら香川と変えるべきだろう。正直、岡崎に状況を打破する力があるようには見えなかったが。


清原和博

2008年08月20日 01時08分21秒 | スポーツ
桑田真澄に続いて清原和博も今シーズン限りでの現役引退を表明し、一つの時代の終わりを感じる。

スポーツの面白さの一つは、記憶の積み重ねにある。高校野球で様々な強豪が出現したが、未だに桑田清原のいた時代のPL学園を超える高校は存在しないと思っている。当時は最も熱心に高校野球を見ていた時代であり、その前後は綺羅星の如く輝く選手たちがいた。

横浜の愛甲猛と早実の荒木大輔の決勝戦。報徳学園金村義明や名古屋電気の工藤公康の活躍。畠山準、水野雄仁らの豪打に慄いた池田。中京野中徹博らの活躍もあった。そして、PL学園の桑田・清原。特に夏は大阪大会の激闘も鮮明に記憶している。彼らが1年生の時は、打倒池田が合言葉だったが、PL学園の優勝からそれが打倒PLへと変わった。それでもPL学園は春準優勝、夏準優勝、春ベスト4と甲子園で結果を残し、最後の夏を優勝で飾った。

1年の夏から中心選手として活躍し、優勝を果たし、その後も常に注目されながら結果を残し続ける。当時のPLは本当に強い野球をしていた。奇を衒わぬ王道の野球。それをいかに倒すかがどの試合も注目の的だった。岩倉の山口重幸、取手二の石田文樹、伊野商の渡辺智男。PL学園を破った投手たちは輝いていた。負けたことが記憶に強く残るチームだった。

ジャイアンツという日の当たる場所へ進んだ桑田と異なり、清原は西武へ入団した。当時は今以上にパ・リーグは日陰の存在だった。TV中継もほとんどなく、プロ野球ニュースでも結果だけということもあった。一握りのパ・リーグファンを除くと、清原はオールスターか日本シリーズでしか見ることがない存在だった。
当時の西武は広岡から森へ監督が替わり、田淵・スティーブ・テリー・大田・山崎・片平といったベテラン陣主体のチームから若返る最中だった。石毛をチームリーダーとし、秋山・伊東・辻が主力となっていた。投手陣も工藤・渡辺・郭泰源らが中心となりつつあった。そして、清原は入団後の9年間に8度のリーグ優勝を飾る。特にデストラーデ加入後の、石毛-平野-秋山-清原-デストラーデ-田辺-吉竹(苫篠)-伊東-辻というオーダーは恐るべきものだった。本塁打の破壊力という点では決して高くはないが、野球を知り尽くし、誰もがチームバッティングに徹することが出来るまさに究極の「打線」だった。
清原は首位打者・本塁打王・打点王の三冠には一度も届かなかったが、西部時代を知る野球ファンにとっては間違いなく一時代を築いた偉大な打者という称号を送ることになんら躊躇いはないはずだ。

ジャイアンツへFA移籍して以降は逆に私が清原を見る機会は減ってしまった。マスコミやファンに持ち上げられたり、叩かれたりする様は清原への興味を失わせる結果となった。ジャイアンツ以降の清原しか見ずに彼を評価する声がネット上でよく見られるが、残念だと言う外ない。オリックスへ、パ・リーグへ帰ってきても、試合出場が激減し、限界という印象が拭えなかった。最後の一花という気持ちは理解できるが、プロの世界は厳しい。
ジャイアンツ時代の言動から毀誉褒貶が激しい選手となったが、全盛期の力量は間違いなく時代を代表するバッターであり、最も勝利に貢献できる選手の一人だった。

彼の右中間へのライナーは今も目に焼きついている。


女王の貪欲さ

2007年11月20日 21時54分23秒 | スポーツ
先日の東京国際女子マラソン。
野口みずきが素晴らしいレースで優勝した。実はこれまであまり彼女を評価していなかった。もちろん、オリンピックの金メダリストであり、現在の日本記録保持者という輝かしい実績は認める。ただどうしても、高橋尚子と比べて見劣りする印象があった。高橋の勝ちっぷりの凄さは他の日本人選手ではとうてい及ばない。そのため、どうしても低く見がちになっていた。
レースでは実力はありながらもここ一番で結果を残せないでいる渋井陽子を応援していた。しかし、またもや中盤で失速し、勝負弱さを露呈した。その後コスゲイを振り切った野口が大会新記録で優勝を果たした。

北京オリンピックの選考レースとなったこの大会だが、大阪、名古屋と比べてタイムが出にくく、また今回は残り2枠しかないということを考えれば、この大会に挑むという選択はかなり無謀な感じを持っていた。過去に高橋がそれで失敗したこともまだ記憶に新しい。11月ということで寒暖の差が激しく、前回のように寒すぎたり、今回のように暑かったりする気象条件も不利に働く。そして、最大の難所である長い上り坂の存在。一応、ここで失敗しても名古屋あたりで再挑戦が可能というメリットはあるものの、それは事実上非常に困難な道のりであり、このレベルの試合では不可能に近いとも考えられる。
そんな背景もあり、たとえ勝利しても代表選考に漏れる可能性が強いと見ていた。実際、スタートからペースは決して速くはなく、大会記録よりもかなり遅れてのラップタイムだった。このままなら渋井も野口も選択を誤ったと見なせると思ったのだが。
それを払拭する走りを野口が見せた。35kmからの5kmを17分を切るタイムで走り切った。上り坂を上り坂と感じさせないまでの走り。後半どうしたってロスタイムが出るというそれまでの常識を打ち破るような驚異的な走りに圧倒された。
このコンディションで大会新記録。内容も文句のつけようがない。これを上回ろうと思ったら世界新記録でも出さないと無理だろう。あと2レースあるものの当確と言っていい野口の走りだった。

五輪で金メダルを取り、日本新記録も出した。夏冬どちらのレースでも結果を残し、これ以上何を望むのかと端から見れば思えてしまう実績を作り上げた。そして、その後怪我に見舞われ、年齢的なものを考えてもそろそろピークは過ぎたかに見えた。だが、このパフォーマンスはそうした見方を吹き飛ばすものだった。それを支えているのは彼女の意欲だろう。どこかで満足してしまったら、もうこんな走りはできない。まだ、より高みを目指す飽くなき意欲がひしひしと画面から伝わってきた。もともとそうした面はあったが、長いレース間隔のうちに純化されたのか、この東京でそれが爆発したように思えた。

女子フィギュアのワールドグランプリシリーズ、スケートフランスで浅田真央が見せた涙もまた強い意志を感じるものだった。ショートプログラムでトップに立ちながらも、その内容に満足できずに涙した。シニアデビューしたシーズンはほとんど大きなミスもなく活躍し、グランプリファイナルを軽々と制した。だが、昨シーズンはグランプリファイナルも世界選手権もあと一歩届かずに終わってしまった。それは他の選手が優れているというよりも、彼女自身のミスによる。そして、そのミスはより高い次元へと進化するために自らに課した結果のものだ。
日々進化し、有望な若手が次々と現れる世界で、トップを守ることは容易ではない。より高いものを常に目指していなければ、あっという間に追い越されてしまうだろう。それを誰よりも自覚しているからこその涙だったのだろう。今シーズン、ショートプログラムもフリーもまだ彼女が満足する演技は出来ていない。しかし、バンクーバーまでの長い道のりを考えれば、今はそのためのステップを少しずつ確実に消化していく時期なのかもしれない。今だけでなく将来まで見据えて、高みを目指している姿が感じられた。

彼女たちだけでなく世界の最先端で戦う者たちは、そうした貪欲さなしには勝負ができないことを知っている。彼ら、彼女らの姿を見て、改めて人間の凄さが感じられ、また、それが最も端的に現れるスポーツの面白さもまた実感できる。スポーツはスポーツの中にこそその面白さがある。それが感じられる試合をもっと見たいものだ。


「大相撲」とは何か?

2007年09月03日 18時00分02秒 | スポーツ
マスコミの朝青龍バッシングには辟易している。彼のこれまでの行いに問題があったのも事実だし、今回のサッカーに関しても軽率だったのは間違いない。これに対し、相撲協会から厳しい処分を受けた。しかし、なおもマスコミは彼を叩き続けている。
犯罪を犯したわけでもない一個人をここまで執拗に叩き続ける様は「いじめ」というより「狂気」に近い。ネット上では、こうした気違いじみた行為はよく見かけられるが、マスコミのこの姿は日本人の心性の暗黒面を表出しているようで本当に見るのが嫌になってしまう。横綱に品格を問う前に、己の品性をもう少し省みられないものか。

こうしたマスコミは結局のところ一般大衆の欲望に迎合して行動しているとも考えられ、繰り返すがこれはマスコミだけの問題ではなく、やはり日本社会の深層に根差したものだろう。この報道ぶりを日本に暮らす外国人はどう見ているか、その視点さえ今は語られることが非常に少ない。

ただこのようなマスコミの姿は今に始まったことではない。日本社会のあり様に既に絶望しているので、これに関して論じても意味がない。

今回取り上げたいのは、「大相撲」とは何か?である。現状の大相撲は国技とされ、日本伝統の、神事に根差すものとされる。一方で、競技であり、国際化する中でスポーツとして見られることもある。
大相撲が単なるスポーツであれば、横綱に品格など求めないし、朝青龍の今回のようなトラブルもさして大きく取り上げられることもなかっただろう。しかし、スポーツでないのであれば、本当に外国人力士という存在が必要なのか疑問に思う。
そもそも伝統や神事といったものは、技術的なものはともかく、その精神的な面を理解するのは非常に困難だ。特にそれが明文化されていないものなら尚更だ。
例えば、今回の騒動でも、「常識」という言葉が様々な場面で使われている。しかし、その「常識」のほぼ全てが現代の日本の常識に過ぎない。「常識」は時代により変わるし、場所によっても変わる。この言葉を使う大部分の者はそれを理解していない。世界共通の「常識」なんてありえないと言っていいほどなのに、それが理解できない。朝青龍の「常識」のなさを叩く人は、自身の「常識」のなさを晒しているに過ぎない。
日本で無く海外で育った外国人を入れるということは、明文化されない様々な「常識」をいかに共有していくかという難題と向かい合うことだ。高見山の時代など外国人力士が少数の時は、彼等に「常識」を押し付けているだけで済んだ。だが、外国人力士が増えれば、そうした押し付けでは成り立たなくなっていく。彼らにも彼らなりの「常識」が存在している。大相撲の理念を教えつつ、彼らの「常識」も取り込んで融合させていかなければこうしたトラブルはなくならないし、互いの不信感も募ってくるだろう。
大相撲の伝統を守りたいというのなら、外国人力士を受け入れるのをやめればいい。日本人だけで細々とやっていけば済む話だ。外国人力士を受け入れるのならば、お互いの「常識」をすり合わせていくコミュニケーション無しにはこんな事例を繰り返すだけだろう。そして、これは単に大相撲だけの問題ではなく、外国人労働者受け入れといった課題を抱える日本社会全体の問題として考える必要のあるテーマだ。

大相撲の側面としてもう一つ、興行としての面がある。朝青龍問題はイメージダウンでもあるが、一方でこれだけ連日取り上げられて大相撲協会も宣伝効果としてはかなり喜んでいるかもしれない。これで朝青龍が土俵に戻ってくれば注目度はかなり高まるだろう。だが、現実にはそう筋書き通りになるかどうか微妙なところだ。
これで朝青龍が引退すれば、将来への負の遺産がかなり協会を圧迫するだろう。現在外国人力士の受け入れはストップしている状態だが、受け入れる側も成り手の側も今後は簡単にできなくなりそうだ。つまり、10年もすれば外国人力士はほとんどいなくなるのではないか。それで果たしてファンを満足させられるのか大いに疑問だが。また、現在いる外国人力士にとっても今回の騒動はかなり悪い印象を与えるものとなっただろう。朝青龍は横綱と言ってもまだ20代で間違ったり失敗したりすることはある。それを指導できず、外から叩かれてもかばうこともしない協会のあり方は他の力士の目にどう映ったか。外国人力士の中に早々に見切りをつけて他の格闘技へ移る者が現れないか心配だ。


佐賀北

2007年08月23日 23時59分00秒 | スポーツ
第89回全国高等学校野球選手権は誰も予想できなかった佐賀北の優勝で幕を閉じた。開幕戦を戦い、延長15回引き分け再試合を経験し、優勝候補帝京相手に延長サヨナラ勝ち。そして、迎えた決勝戦は奇跡の逆転満塁ホームランが飛び出す始末。いったい誰がこんな筋書きを描けるのか。野球の神様の祝福ゆえなのだろう。

決勝戦は佐賀北を応援していたが、2点を先制され、更にピンチの連続。なんとか代わった久保が抑えていたものの、攻撃陣は完璧に沈黙していた。そして7回についに2点を追加され、ジ・エンドと思って見るのをやめてしまった。その後、ふとテレビを見ると優勝インタビューで佐賀北の選手が話をしていた。驚いて見ているとなんと8回に満塁逆転ホームランが出たという。
ちなみに、批判の声も上がっている主審のストライクボールの判定だが、問題の8回裏に限らず初回からなかりストライクゾーンが狭かった。佐賀北の先発馬場も主審の判定にかなり苦しんでいた。それがあっての8回裏なので、佐賀北贔屓の判定では決して無い。ストライクゾーンが狭すぎるのはちょっとどうかと思ったし、ある程度の範囲のぶれは高校野球の審判のレベルからすれば仕方が無い。1試合を通じて細かくチェックすれば、片方に偏った判定とは取れないだろうし、少なくともそういう流れを見て発言してもらいたいものだ。

ほとんど無名の公立高校が甲子園を制する。特待生問題に揺れた大会だけに、高野連の連中はホクホクだろう。かと言ってもちろん狙っての躍進ではない。最も過酷な戦いとなったのはまぎれもない事実だし、帝京戦など相手に恵まれたとも言えないだろう。二人の優れた投手がいたから乗り越えられたのも確かだ。
話は少し変わるが、以前サッカーの日本代表が頻繁に「経験が足りない」と言われたことがある。具体的に何が欠けているのか捉えにくい表現だったが、この佐賀北の勝利から見えてくるものがある。一介の無名の進学校の野球部でも全国を制する力を持っている。野球のセオリーはもちろん、様々な状況判断や基本的な技術を出場した選手たちは備えていた。それが「経験」なのだろう。
アニメ「おおきく振りかぶって」にも場面場面での細かな状況判断の描写がある。実際にひとつのプレイごとにやるべきことが決まっていて、それに関わるプレイヤー全員が共通認識を持ってプレイする。そうした共通理解は日々の練習の中から築き上げられる。
例えば野球の後進国のプレイを見ていると、いいプレイもあるけれど共通認識を持ってプレイすることが少ない。理解不足から来るミスも目立つ。この場面ではこうするのがセオリーであり、一方でそのセオリーを崩すプレイはどんなプレイかといったことを日本の選手は心得ている。数多くの選択肢があり、その中からチョイスするのが監督の役目だ。もちろん、高校野球レベルとプロレベルではその認識にも差がある。しかし、佐賀北の野球を見て、高校野球レベルのそれの高さを改めて思い知らされた。

今大会目立ったのが二遊間のコンビネーションだ。セカンドからグラブトスでショートへ、といったプレイは昔は基本に反するゆえにやると怒られたりもしたものだが、最近は積極的にああいうプレイを狙ったりしている。野球は本当は守備こそが面白い。グラブトスはその面白さを見せ付けるプレイのひとつだ。いい守備は単に基本に忠実なだけでなく、ミスを恐れず、あらゆる状況を予測し、最善を尽くすのみならず、楽しんでこそだと思う。今大会いくつかそういうプレイが見れただけで満足している。


高橋由伸

2007年07月27日 21時35分49秒 | スポーツ
今朝の「とくダネ!」のオープニングトークで小倉智昭が、昨日先頭打者本塁打のプロ野球記録を塗り替えたジャイアンツの高橋由伸1番起用への疑問を喋っていた。スポーツファンとして知られ、特に筋金入りの西武ファンの小倉にしてこういう意見が出ることに複雑な思いがした。
今シーズンの高橋は打率.330で打撃成績4位、本塁打23本はセ・リーグ2番目と絶好調だ。特に長打率.621はトップの成績を誇る。一方で盗塁数はわずかに1個。特別足が遅いわけではないが、走塁技術などは1番バッターとしては見劣りするのも事実だ。

昨日の勝利で久しぶりに首位の座を奪還したジャイアンツ好調の主要な要因に私は高橋一番を挙げる。確かにこれだけ好調な高橋の前にランナーを貯めたいという考えも理解できる。しかし、これはランナーが少ない状況が多いがゆえに達成できた数字とも見ることができる。
更に言えば、日本流の打順の考え方の固定観念に捉われすぎていることがここから窺える。古くはそうでもなかったがV9達成以後比較的その時の打順の役割がベストなものとして定着してしまった。よく言われることだが、メジャーでは最もいいバッターを3番に据えることが多い。日本でもアメリカ人の監督は最も信頼できるバッターを3番に置く。4番をありがたがるのは迷信のようなものだ。
もちろん日本人の監督にも打順を固定観念で見ない人はいる。仰木監督はその代表だった。打順は現在いる野手の組み合わせから生まれるものだ。それ以上でも以下でもない。掛布、バース、岡田のクリーンナップを揃えたタイガースで1番に真弓を置いたように、クリーンナップを打てる選手の多い今のジャイアンツで高橋1番は非常に理に適っている。
セオリーとはある局面における最善の策の事だ。まず前提となる状況判断があり、それを踏まえて初めてセオリーが語られなければならない。1番打者がどうあるべきかではなく、特定の打線の中での1番の役割は何かが意味のある問いかけとなる。
基本的にアンチジャイアンツだが、高橋1番起用だけは原監督を全面的に支持している。むしろ、この打順が代わることがジャイアンツ低迷のきっかけになるだろうと予測している。


白鵬対琴光喜@2007名古屋場所

2007年07月17日 19時20分04秒 | スポーツ
今場所は新横綱白鵬と大関挑戦の琴光喜が9日目まで全勝と土俵を盛り上げている。白鵬の余裕ある取り口も見事だが、それ以上に過去幾度も大関昇進を期待されながらプレッシャーに打ち砕かれてきた琴光喜の思い切りいい相撲が素晴らしい。
今日10日目にその二人が全勝対決となった。これまでの対戦成績は白鵬の6勝4敗。過去一年では3勝2敗とほぼ互角。白鵬はここまでほとんど危なげなく勝ってきたが、立ち合いから厳しく攻めて一方的に勝つ相撲はなかった。相手の相撲を受けながらなお落ち着いてうまく捌いている印象が強い。対する琴光喜は初日に苦しい体勢から思い切って前に出て勝利をつかむと、その後は迷いなく前に出る相撲で勝ち星を積み上げている。相撲内容としては琴光喜の方がいい感じだが、それが横綱に通用するかどうかが見所だった。

結びの一番は、琴光喜に対する大きな声援の中で時間を迎えた。ここ二日ほど琴光喜は立ち合いが1回で決まらなかったが、今日はすんなり立てた。最初はつっぱっていくかとも予想していたが、琴光喜はがばっと組みにいき右四つ左上手ですぐに十分な体勢となった。白鵬は上手が取れず、下手からおっつけようとするが明らかに苦しい形となってしまった。あとは琴光喜が上手から出し投げを放ち、体の開きもよく、白鵬は土俵際で前のめりに倒れた。琴光喜完勝。
今場所のここまでの流れをそのまま持ち込んだ琴光喜が立ち合いで勝負を決めてしまった格好だ。白鵬は立ち合いの厳しさに欠けた。これで全勝は琴光喜ひとり。一敗で両横綱と豊真将が追う展開となった。

琴光喜はこれで10勝目。大関昇格ラインは12番と言われているのであと2勝とした。残り5日のうち、明日の横綱朝青龍戦以外は、大関千代大海、あとは豊真将など平幕との対戦が予想される。余程のことが無い限り大関昇進は手の届く距離となった。もちろん、優勝争いでも本命に位置する。鍵は26連敗中の明日の朝青龍戦だ。これまで琴光喜の方がいい流れで対戦に入ることもあったが、朝青龍の前に立つと別人のような取り口になってしまった。大関昇進を考える上ではこの1敗はある意味織り込み済みだったりもするが、優勝争いとなると別だろう。勝てば昇進はほぼ確定するだけに、プレッシャーも相当にかかるだろうが、今場所の琴光喜ならあるいはという期待もある。
朝青龍の今場所は決して万全ではない。初日の敗戦からあとは連勝を続けているが、相撲内容はあまり褒められたものではない。それでもここ一番の集中力と、横綱としての経験は侮ることはできない。スポーツの一流選手には、結果よりも内容にこだわるタイプと内容よりも結果にこだわるタイプがいる。朝青龍は典型的な後者だ。それゆえに相撲界では異端に見られるが、その精神力は尋常ではない。琴光喜が注目されているがゆえに対戦相手も立ち合いの変化などしにくい状況だったが、朝青龍はそうした周りの目は気にしないだろう。それを分かっていてなお立ち合いに思い切っていけるかどうかが琴光喜にとって勝敗を分けるものとなりそうだ。