たそかれの散策

都会から田舎に移って4年経ち、周りの農地、寺、古代の雰囲気に興味を持つようになり、ランダムに書いてみようかと思う。

施設入所者に対する責任 <介護中に窒息 准看護師に有罪判決>などを読みながら

2019-03-26 | 医療・介護・後見

190326 施設入所者に対する責任 <介護中に窒息 准看護師に有罪判決>などを読みながら

 

TVで放映されているような病院における医師の長時間労働はまさに自ら生死の狭間にいるような過酷な労働実態ですね。では看護師や准看護師はどうかですね。

 

以前、ある看護師の依頼で仕事をしたことがあります。夜勤してその後日勤するとかというのは月に相当回数あり、それが普通だそうですね。TV放映された医師ほど緊張感がないかもしれないですが、患者の生死に関わる仕事をしている点では似ている状況にあって、明らかに過重労働状態ですね。

 

それが特養施設や介護老人保健施設だとどうかというと、似たような状態ではないでしょうか。しかもこちらは認知症であっても結構ベッドを抜け出して自由に移動する人やときに奇声を上げたり大変です。昨日の毎日記事では訪問介護の場合のセクハラなどの被害が半数くらいあるそうですが、施設でもかなりの比率であることは元施設職員から聞いたことがあります。

 

そんな過酷な職場環境にあって、今朝の毎日記事<長野・安曇野の特養入所者死亡介護中に窒息 准看護師に有罪判決 地裁松本支部>は、気になる内容です。

 

<長野県安曇野市の特別養護老人ホーム「あずみの里」で2013年、入所者の女性(当時85歳)を死亡させたとして、業務上過失致死罪に問われた准看護師、山口けさえ被告(58)=長野県松本市=に対し、長野地裁松本支部(野沢晃一裁判長)は25日、求刑通り罰金20万円の有罪判決を言い渡した。>

 

一体どんな事実関係であったのでしょう。

<被告は13年12月、施設の食堂で女性におやつとしてドーナツを誤って配り、食べた女性を窒息させて低酸素脳症で約1カ月後に死亡させた。>

 

ドーナツを誤って配って食べさせたことが過失?とは一体どういうことでしょう。

 

女性が窒息したのは、ドーナツが詰まったからといのが検察の主張で、弁護側は被告に中止義務がないことに加えて、<ドーナツも約1センチ四方>で、窒息の危険性がなかったと主張しています。

 

判決では、<詰まらせる1週間前におやつをゼリー状のものに変更していたとし、被告は「記録などで確認すべきだった」とした。>とされています。おやつをゼリー状にするか、個体物にするか、個体物でも細切れにするかは、たいていの施設職員は注意して、選択決定していると思います。判決の認定からうかがえるのは、この施設では施設利用者の状態に応じて個別にその選択をしているかのようです。そしてわずか一週間前に、ドーナツからゼリー状にこの女性について変更したようですね。その変更は通常、介護記録など書面に書かれているでしょうから、被告が確認しなかったと認定したのでしょうか。

 

その前提として、<女性が食べ物をそのままのみ込む癖があり>という点と、<心肺停止後にドーナツを吐き出すと呼吸が戻った経緯>という点を並べて認定しているようですが、前者は事件以前の女性の癖でしょうね。他方で、<心肺停止後にドーナツ吐き出す>云々は、今回の事件で生じたことではないかと思うのです。とすると、本件でドーナツが吐き出されたことから窒息状態があったことは推定できたとしても、それ以前では女性が飲み込む癖があっても詰まらせたことがあったかどうかははっきりしないように思います。

 

そうだとすると、弁護側が主張するドーナツを焼く1㎝四方に細切れにしている対応で、果たして窒息する危険性があったかは、そのことを予見できたかとなると、判示認定となるか疑問があります。むろん小片に切ったとしても、いっぺんに飲み込めば詰まる可能性もあり、細切れするだけでは十分ではないかもしれません。ただ、そういった詰め込んで食べる癖があり、そのことを知り得たとすると、注視義務があったかもしれません。

 

ただ、判決では、<被告が別の要介護者の世話をしており、「女性の異変に気付く注視を求めるのは困難」として退けた。>判決は、ドーナツからゼリー状のものに変更したサービス変更は重大なもので、それに注意して確認する義務を認め、それを怠りドーナツを配布したこと自体に責任を認めています。

 

私はこの認定を見て、少し違和感を抱きました。

 

最近、私が担当している施設利用者の方で、体調の少し悪化を受けて、看護師、ケアマネ、介護職の会議に参加しました。この会議では、食べ物も含め服用などのあり方について協議し、食べ物については従前通りとなったのですが、処方薬について見直しが検討されて、その結果について医師に判断を仰ぎ、承認を得て、見直すことになりました。

 

一人ひとり、丁寧に議論して施設内で一定の共有意識をもってサービス提供していることが分かります。むろん看護師も、介護職員も十分な人数とは言えない状態ですから、利用者の大満足は得られないかもしれませんが、相当の配慮をしていることは看取できます。

 

では、この事件の特養施設では、准看護師はそういった変更について、ノータッチだったのでしょうか。通常、准看護師も看護師と同等の仕事をされていると伺います。おやつの変更、とくにドーナツからゼリー状に変更と言った情報は本来、共有されているはずではないかと思うのですが、この点腑に落ちません。

 

他方で、個別的な対応が容易でない、施設が少なくないように思います。私が担当している別の特養施設では、生活保護受給者の方が入所されていますが、たしかそこの食堂では全員がゼリー状のおやつではなかったかと思います。

 

本来は、健康維持のため、できるだけ固形物というか、咀嚼できるようなものを食する方が、長く健康を維持するにはいいように思うのですが、現実にはスタッフ不足もあり、個別対応せずに、ゼリー状のものを出す傾向は多くの施設で見られるように感じます。

 

本件の施設では、個別対応の努力をされてきたのでしょうか。現場はそういうリスクをかかえながらも一定の配慮をしてきたようにも見えます。

 

結城康博・淑徳大教授(社会福祉学)の話>では、<介護はリスクと背中合わせの仕事なので、現場は萎縮するだろう。多くの介護施設では今、できるだけ利用者の自由度を高め、介護の幅を広げようとしている。(判決で)リスク回避を最優先にする介護に傾斜する可能性がある。>と批判的です。私も同感です。

 

ところで、私自身、看護師と准看護師の実態を知りませんで、ちょっとウェブサイトで調べると<看護師と准看護師の違い>では、前者は若い年代で、病院勤務が多く、後者は診療所勤務が多いようですね。介護施設となるとどうかはここではわかりません。看護師は医師の指示に基づき業務を行いますが、准看護師は医師だけでなく、看護師の指示に基づくとなっています。ただ、実態は同じ業務内容かも知れません。

 

その業務内容については<バイタルサイン(意識・体温・血圧・呼吸・脈拍)が正常か測定を行い、異常があった場合医師に報告>に加えて、<採血や点滴など医療行為・・・また、患者の病室の環境を適切に保つために、環境整備を行い、食事や入浴・排泄の援助>となっています。これは病院でのことで、介護施設では、食事や入浴・排泄の援助は介護職員の業務となっているのではないかと思います。

 

そこで、ドーナツを配ることが准看護師の業務かというと、これは本来、主たるものとは

違うのではないかと思うのですが、介護施設ではスタッフが減少気味で、看護師、准看護師も、忙し食事時はヘルプしているのでしょうか。食事の援助というのは、あくまで介護職員の主たる業務で、判決認定のような注意義務が妥当か気になります。

 

またまとまりのない話となりました。今日はこれにておしまい。また明日。


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