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環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

「経済」 「社会」(福祉) 「環境」、不安の根っこは同じだ!

「将来不安」の解消こそ、政治の最大のターゲットだ

CO2の増税を首相に陳情するスウェーデンの業界

2007-06-11 06:11:11 | 温暖化/オゾン層


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6月6日のブログ「国際社会への提案が多い国と国際社会からの勧告を受けることが多い国」の説明の最終回として、米国の著名な環境コンサルタントであるポール・ホーケンさんが、日本で行なわれたシンポジウムで語ったエピソードをご紹介し、ひとまず「スウェーデン発のCO2税の話」を締めくくることにしましょう。

このシンポジウムは、2001年9月29日/30日の両日、国立京都国際会館で開催された第6回環境経済・政策学会大会における市民公開シンポジウムで、その詳細な内容が「環境保全と企業経営」(環境経済・政策学会編 東洋経済新報社 2002年10月10日 p1~56)に収録されています。


テーマは「環境経営の革新-新産業革命とナチュラル・キャピタリズム-」です。ホーケンさんの発言の当該部分(p45から46にかけて)を引用します。

7年くらい前、スウェーデン最大手の石油精製会社のCEOが、20人ぐらいの他の会社のCEOとともに首相を訪問し、政府にガソリンや燃料に対する二酸化炭素税の増税を陳情した。ビジネス界の要望としては、きわめて珍しいことだった。
 
首相がその理由を尋ねると、イケア、アレックス、トラック会社、スーパーマーケットのチェーンなどさまざまな業種の代表からなるそのグループは、「我々のビジネスは将来にかかっている、廃棄物に関しては、細心の努力を払っていかなくてはならない。炭素に対する課税は我々が企業として、アメリカのようにエネルギーを大量に消費するような馬鹿な会社に比べて、競争面で優位に立つことができる」と答えた。
 
後日、炭素の含有量が最も少ないクリーンな燃料を開発したのが、やはりこのグループのメンバーだったスウェーデンの会社であった。

ここにも、「スウェーデン企業」「日本経団連」のスタンスの相違を見ることができます。



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スウェーデン発のCO2税 企業のインセンティブを高めるのが目的

2007-06-10 08:00:17 | 温暖化/オゾン層


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日本では、2004年5月24日、経済産業省の合同会議(議長・奥田碩日本経団連会長)が、CO2税の早期導入にあらためて反対する方針を決めました。


合同会議は、総合資源エネルギー調査会と産業構造審議会で構成されており、反対の主な理由として、 「効果に疑問がある」「産業部門の国際競争や国民生活に悪影響を与えかねない」 などを挙げています。このような発言が出てくるのは、直接的な規制効果を期待するからでしょう。



上の2つの記事は、京都議定書の発効が半年後に迫った時点(京都議定書は2005年2月16日に発効した)でもまだ、政府内部(経産省と環境省)で基本的な共通認識が共有されていないことを示しています。

また、下の図は10年以上前の省エネルギーセンター発行の雑誌「省エネルギー」(1996年1月号)に掲載された欧州視察ツアー参加者の座談会で示された企業技術者の「省エネ」と「環境保全」に対する認識をまとめたものです。すでに、10年前に日本の企業と欧州の企業の間に、そして、日本と欧州の政府の間も意識の大きな相違があることを示唆しています。この意識の落差は現在では当時よりも大きくなっています。


しかし、スウェーデンのCO2税の導入がめざすのは、「炭素を燃やさないですむようなエネルギー体系」をつくることに向けての、国民や企業のインセンティブを高めることです。
3月26日のブログ「環境政策における経済的手法①」で紹介したように、スウェーデンをはじめとする北欧諸国は環境問題に対してこのような「経済的手法」を活用することに慣れています。

6月6日のブログ「国際機関への提案が多い国と国際機関からの勧告を受けることが多い国」で提起したスウェーデンと日本の国際社会における振る舞い、そして「予防志向の国」から「治療志向の国」への情報の流れとそれに基づく行動の相違をおわかりいただけたでしょうか。



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スウェーデン発のCO2税に、EUの大国の反応は

2007-06-09 06:34:45 | 温暖化/オゾン層


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1990年から92年にかけて北欧諸国で導入された「環境税(CO2税)」は、97年の京都議定書以後、形を変えて、99年にイタリア、ドイツで、そして2001年にはフランス、イギリスで導入されました。



上の2つの図を比べてみて、気がつくことは環境税先発国の税収と後発国の税収の使途が異なることです。先発国の税収は一般財源となり、所得税や法人税の減税に使われています。その結果、4月21日のブログ「税制の改革② バッズ課税・グッズ減税の原則」で紹介しましたようにスウェーデンの法人税は先進工業国の中では最も低く、日本は最も高くなっています。

石光弘・前政府税制調査会会長は、環境税のベストは北欧型だとおっしゃっておられます。


およそ15年前に環境税を導入した北欧の国々は、EUの大国であるドイツ、フランス、イギリス、イタリアなどの環境税導入後発国よりも経済状況は好調ですし、グローバル化した国際経済のなかでも高い国際競争力を維持していることを、国際機関のさまざまな報告から容易に知ることができます。たとえば、世界経済フォーラムの「06年版 国際競争力ランキング」もその一例です。




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スウェーデン発のCO2税に、日本の対応は

2007-06-08 07:16:07 | 温暖化/オゾン層


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スウェーデンは、国民の合意を踏まえて、1991年1月1日からCO2税の導入に踏み切りました。

この種の規制を世界に先駆けて導入したわけですから、当然のことながら、スウェーデンの産業界は「国際競争に不利だ」と主張します。そこで、スウェーデン政府は国民の声を背景に、OECDのような国際機関に、CO2税の導入を提案しました。
 
提案を受けた国際機関は専門家を集めて独自にこの提案を検討し、「提案が妥当なものである」と判断すれば、加盟国にこの提案に基づいた勧告を出します。勧告を受けた加盟国政府は、この提案の是非を国内で検討し、態度を決めるということになります。

それでは、一昨日のブログに掲載した「環境・エネルギー分野の外圧」という図に沿って、CO2税に関するスウェーデンの議論が日本に到達し、日本でどうなっているかを「情報の流れ」として把握おきましょう。


1.スウェーデン国内での議論を経て、1991年1月1日に「CO2税」が導入。

昨日、当然起こる市民の反応を報じる記事を紹介しました。


2.「国際競争に不利だ」という産業界の要請に答えて、スウェーデン政府はOECDに「CO2税導入」提案。

次の記事をご覧ください。


3.提案を受けたOECDは

次の記事をご覧ください。


そして、世界の環境税の現状を調査・分析したOECDはその結果を本にまとめました。


「4.日本の産業界では」で紹介する日本経団連と経済広報センターは、2006年11月のHPを立ち上げるに当たって、この本を参照したのでしょうか。


4.日本の産業界は

この意見広告の枠内のメッセージをリライトします。

今必要なのは一人一人の「参画」です。「環境税」を支払うことではありません。
○地球温暖化問題に、産業界は自ら目標を定め自主的かつ積極的に取り組み成果を挙げていま す。
○今後も目標達成のため全力をあげて取り組みます。
○産業界は、省エネ製品の開発や自動車燃費の向上などを通じて国民生活にも貢献していきま す。
○使途も効果も不明確な環境税の創設は、産業の空洞化、地域経済・中小企業・雇用への悪影 響が避けられません。
○産業界は、環境税や経済統制的な施策には、断固反対です。


2006年11月、(社団法人)日本経済団体連合会(日本経団連)と(財団法人)経済広報センターは、協力して「環境税では地球は守れません! 私たち産業界は、地球温暖化防止に真剣に取り組んでいます」というHPを立ち上げました。そして、このHPで、次のような疑問を呈しています。

Ⅰ 「環境税」には本当に効果があるのでしょうか?
  「環境税」の導入によって、「CO2削減効果」「財源効果」「アナウンス効果」という3つの効果が期待できるとされています。これは本当でしょうか。

疑問1:「CO2削減効果」?
疑問2:「財源効果」?
疑問3:「アナウンス効果」?

Ⅱ 「環境税」は国民生活・企業活動に悪影響を与えます。導入するべきではありません。
  「環境税」は国民生活と企業活動にダメージを及ぼし、わが国経済に打撃を与えます。しかも、「環境税」はかえって温室効果ガスの増大につながるおそれすらあります。「環境税」を導入することによって、以下の3つの悪影響が考えられます。

悪影響1:家庭と企業のダメージ
悪影響2:企業の自主的な取り組みの基盤を阻害
悪影響3:地球規模での温室効果ガスが増大


このように、スウェーデン発の「CO2税導入」の提案は、早い時期にOECD加盟国である日本に届き、政府の導入方針も決まっていました。提案を受けたOECDは、「環境税は国内的、国際的な環境問題の解決により効果的に貢献する」として、国際機関として初めて環境税導入の有効性を打ち出しました。そして、世界の環境税の現状を調査・分析し、その結果を本にまとめました。それにもかかわらず、その後の経過は皆さんご承知のとおりで、日本ではいまだにCO2税の導入は実現していません。



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予防志向の国・治療志向の国 16年前に「CO2税」導入

2007-06-07 07:14:44 | 温暖化/オゾン層


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6月6日からドイツのハイリゲンダムで「気候変動」を主テーマにG8のサミットが開催されています。ちょうどよい機会ですので、今日から数回にわたって、地球温暖化防止政策の重要な柱の一つである「CO2税の導入」を例に、国際社会からの日本に対する“環境・エネルギー分野の外圧”を考えてみましょう。

余談ですが、「経済分野の外圧」は米国から、「環境分野の外圧」はEUからという傾向がすでに定着してしまったようです。

1月23日のブログで触れましたように、CO2は、炭素が燃えて発生するものです。そこで、化石燃料に含まれる炭素の量に応じた課税をして価格を引き上げれば、相対的に炭素の少ない天然ガスへのシフトや、自然エネルギーへの転換が起こるでしょう。こうしてCO2の排出量を減らそうというのが、CO2税の目論見です。

これは長期的には、「資源・エネルギーの消費をできるだけ抑える」という、21世紀の経済成長のめざす方向と一致しています。企業にとっては当面のコスト増ですが、行政が先回りして手を打っておけば、結局は社会全体のコストを低減することになる、というのがスウェーデンの判断なのです。

スウェーデンは、国民の合意を踏まえて、1991年1月1日からCO2税の導入に踏み切りました。この種の規制を世界に先駆けて導入したわけですから、当然のことながら、市民からの当然の反射的な反応起こり、スウェーデンだけのCO2増税では、スウェーデンの産業界は「国際競争に不利だ」と主張します。

当時の新聞記事がその様子を伝えています。 





偶然か,必然かはわかりませんが、上の記事の前半は英国、後半はスウェーデンの当時の状況を伝えています。ともに、現時点で京都議定書の目標を達成できそうな国です。16年経っていまだ日本で実現されていないことがスウェーデンで始まったことが読み取れるでしょう。一言で言えば、民主主義の成熟の相違ということでしよう。

この記事の中に、「政府は検討段階から、80年の伝統と約20万人の会員数を誇る自然保護協会の協力を仰いできた」とあります。 
国民共通のこの課題に対して、日本ではいまだに、政府と環境NGOの協力体制ができているようには思えません。



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あの時の決定が日本の「地球温暖化対策」を悪化させた

2007-02-26 22:34:20 | 温暖化/オゾン層
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日本の企業は環境問題という現実に直面し、しかも、なお、「従来型の経済の持続的拡大」のために、日本型経営の維持と再構築の間で苦悩しているのが現状です。大量生産・大量消費・大量廃棄に特徴づけられる「直線的な20世紀型の経済の持続的拡大」と「21世紀型の持続可能な社会」は方向性が正反対だからです。

私たちは口では「環境保全」だの「循環型社会」や「持続可能な社会」などと言いながら、目の前の生活防衛のために、国も、自治体も、企業も、環境へ多少の配慮をしつつも、言葉とは正反対の行動に向けた政策を策定し、予算をつけ、既存の組織の拡大に全力を傾けていると言っても過言ではないでしょう。

今回は日本の地球温暖化対策がなぜこうも実効性がないのかを考えてみましょう。私はそのルーツは縦割り行政による「16年前の考え方」にあると思います。つぎの3つの新聞記事をご覧下さい。

1990年10月12日の毎日新聞の記事は「国の地球温暖化防止に関する方針」を決める段階での関係省庁の考えを報じたものです。表題に

総排出量は規制外
通産省方針 経済活動を拘束

とはっきり書いてあります。


そして、記事の中には

②一人当たりCO2排出量などを対象とし、CO2総排出量に規制の網をかぶせない方向で関係省庁に働きかける

と書いてあります。

この時の縦割り行政の決定がその後の日本の地球温暖化対策の方向を誤らせ、その解決を困難に導いているのです。そして、その対立は今なお引き続いているように見えます。

2つ目は日本政府の「温暖化対策新大綱」の見直し作業について報じる2004年6月1日の朝日新聞の記事に添えられた大変分かり易い図です。

記事は「ガス削減議論足踏み」という大きな見出しを掲げて、「8審議会、調整がカギ」と書いています。8つの審議会の背景には、内閣府、国土交通省、環境省、経済産業省、農水省、総務省のそれぞれの思惑がからんでおり、「京都議定書」の否定論まで取り沙汰されているそうです。
 
8つの審議会の調整がむずかしいのは、行政の縦割構造の問題だけでなく、8つの審議会やそれらの審議会を構成している委員の間に、温暖化問題に対する基本的な共通認識が不十分なために足踏み状態が続いているのだと思います。

このような行政的な整合性の無さを見せつけられると、私には、つぎの記事は当時の環境庁長官の本音が示されているように思えます。

オゾン層保護に向けて 

2007-02-07 16:45:33 | 温暖化/オゾン層
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17年前の1990年1月、スウェーデンで「Saving The Ozone Layer A Global Task」と題する24ページの小冊子が発行されました。この小冊子は「オゾン層保護」という地球規模の環境問題を広く国民に知らせ、議論を起こし、国民の間に共通の基本認識を育てるために、当時の最新の科学的知識をコンパクトにまとめ、わかりやすい形で提供したものです。

スウェーデンの環境NGO「自然保護協会」(会員数約20万人、ちなみに日本の自然保護協会の会員数は約2万人)の主導のもとに進められたこの共同プロジェクトには、スウェーデン労働組合、スウェーデン産業連盟、スウェーデン研究計画調整協議会、スウェーデン環境保護庁、スウェーデン国際開発協力庁、スウェーデン理工学アカデミーおよびスウェーデン自然科学アカデミーが参加しました。

17年前にこのような官民共同のプロジェクトが行なわれたこと自体が驚きですが、さらに興味深いことは、この小冊子英語、フランス語、スペイン語、ポルトガル語、ロシア語、中国語、タイ語および韓国語に翻訳され、無料でスウェーデン自然保護協会から入手できる体制がとられていたことです。

ですから、この資料をある日本の環境NGOに提供したとき、「どうして、日本語版がないのですか」と真顔で問われ、私はショックを受けました。

この問いに対して、私は「おそらくスウェーデン自然保護協会は、日本が米国につぐ世界第二位の経済大国であり、科学立国をめざしている日本には独自にこの種の資料を作り、国民に配布する能力があることを知っていたから日本語版をつくらなかったのでしょう」と答えました。
 


IPCCの第4次報告

2007-02-04 15:36:41 | 温暖化/オゾン層


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地球温暖化の科学的根拠を審議する「IPCC(気候変動に関する政府間パネル)」の第1作業部会の会合が2007年2月1日にフランスのパリで開かれ、「第4次評価報告案」を承認したと、新聞各紙が報じています。報告書では、温暖化が確実に進み、人間活動による温室効果ガス排出が要因の可能性がかなり高いことを確認し最終的には90%を超す確率であることを示す「人為起源の可能性がかなり高い」と表現した、とのことです。


ここでは、この事実を報ずる2007年2月2日付けの朝日新聞の記事を掲載しておきます。この資料は今後、各国で温暖化政策を議論するときの最も重要な基本資料と位置づけられるものです。







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2007-01-24 12:03:01 | 温暖化/オゾン層


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2007年1月19日付けの毎日新聞が、国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の第4次報告書案の概要を掲載しています。IPCCの報告は90年、95年、2001年に次いで4回目となりますが、いつ正式な第4次報告書が公表されるのかには触れていません。温暖化議論の方向性を見据える上で、有益な資料ですので、記事をそのまま掲載しておきます。






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