環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

「経済」 「社会」(福祉) 「環境」、不安の根っこは同じだ!

「将来不安」の解消こそ、政治の最大のターゲットだ

90年代日本の温暖化政策⑨ 15年前、日欧で対応策に大きな相違

2008-02-16 09:21:20 | 温暖化/オゾン層
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今日ご紹介する記事は、同じ地球温暖化対策でも日欧に大きな相違があることを示しています。15年前の記事ですが、日本の主張は今なお15年前の考え方とほとんど変わっていません。つまり、地球温暖化という21世紀前半社会の最大の問題に対して、日本はこの15年間ほとんど有効な対策を打ってこなかったことがこの記事からわかります。




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90年代日本の温暖化政策⑧ 16年前の「温暖化防止条約案」の舞台裏

2008-02-15 10:35:07 | 温暖化/オゾン層
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皆さんもご承知のように、 「温暖化防止条約」1992年6月の地球サミットで採択された条約です。1992年5月10日の朝日新聞は地球サミット直前の交渉の舞台裏をつぎのように報じています。




この記事の下から2段目の青の網をかけた部分に次のように書いてあります。

当初はEC、日本とも厳しい一律規制を求めたが、「実際に実行できるのは日本とスウェーデンぐらい」(日本代表団員)との見方もあった。・・・・・ 

15年経った現在、その成果を見れば、スウェーデンは見事に日本代表団員の予測通り実行できましたが、日本はどうだったでしょうか。余談ですが、スウェーデンは当時、EC(現在のEUの前身)に加盟しておりませんでした。スウェーデンがEUに加盟したのは1995年1月1日です。

関連記事

「環境問題をリードしてきた国」と「そうでなかった国」(07-12-04)


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90年代日本の温暖化政策⑦ 16年前、2000年のCO2安定化目標は早くも「黄信号」 

2008-02-14 16:59:23 | 温暖化/オゾン層
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1990年10月23日、政府は地球環境保全閣僚会議で「地球温暖化防止行動計画」を正式に決めました。その中で、温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)排出量を「2000年に1990年水準に安定化する」という目標を初めて設定し、10月29日からジュネーブで開かれた国連の「世界気候会議」で、この目標を国際的に公約しました。そして、1992年5月22日に地球環境保全関係閣僚会議で「CO2排出抑制目標」を次のように正式決定しました。

●1990年10月23日の「地球温暖化防止行動計画」のCO2安定化目標である1990年度のCO2国内排出総量を、「11憶7000万トン(炭素換算で3億1800万トン)」とする。

ところが、1992年5月14日の読売新聞は、環境庁の分析で、「このCO2安定化目標が早くも達成困難になった」と報じています。





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90年代日本の温暖化政策⑥ 16年前 日本政府も「環境税」の導入の検討を開始!

2008-02-13 21:37:39 | 温暖化/オゾン層
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2000年以降、日本は国際環境団体から「気候変動対策に前向きではない」というようなレッテルを貼られ、そのような評価に甘んじてきましたが、90年代は日本の産業界も政府も比較的前向きでした。そのことは、今日紹介する日本政府が90年代前半に「環境税の導入」を検討し始めたことからも明らかです。次の記事をご覧ください。



関連記事

今なお低い日本の政治家の「環境問題に対する意識」(07-09-28)


改めて、10数年前のこれらの記事を読んでみると、行政がこの10数年間にほとんど実効性のある政策を打ち出さなかったことがよくわかります。



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90年代日本の温暖化政策⑤ 16年前、「炭素税」のOECD指針案

2008-02-12 08:58:57 | 温暖化/オゾン層
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OECDは16年前の1992年4月に、二酸化炭素の排出量抑制のために有効とされる「炭素税」の指針案を公表しました。これを伝える1992年4月23日の日本経済新聞の記事を紹介します。

面白いのは、青の網をかけた部分です。「炭素税導入に積極的な欧州も『欧州だけが炭素税を導入すると、日米に対する産業競争力が落ちる』との懸念を持っており、競争力に影響しないように、国際的に均一な税制導入を提言している」という部分です。どこかで、聞いたことのあるセリフではありませんか。 17年前の『欧州だけが』を「日本だけが」と置き換えたのが、今なお炭素税(現在では環境税と呼ばれることが多い)に反対の日本の産業界の言い分の一つだからです。 



関連記事

治療志向の国・予防志向の国 16年前に「CO2税」導入(07-06-07) 

スウェーデン発のCO2税導入に、日本の反応は?(07-06-08) 

スウェーデン発のCO2税導入に、EUの反応は?(07-06-09) 

スウェーデン発のCO2 企業のインセンティブを高めるのが目的(07-06-10) 

CO2増税を首相に陳情するスウェーデンの業界(07-06-11) 



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90年代日本の温暖化政策④ 18年前、OECD、日本にCO2税導入圧力

2008-02-11 05:32:44 | 温暖化/オゾン層
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今から18年前の1990年頃から、国際社会ではOECDを中心に環境問題に対する対応は、技術的な対応に加えて、経済的手法が重要(下の関連記事を参照)であることが認識され始めました。当時の関連記事を紹介します。ここに示されている考え方が現在の地球温暖化に対する政策の方向性を決めてきたという流れが、理解できると思います。ここでもスウェーデンをはじめとする北欧諸国が牽引車としての役割を担っていることがおわかりいただけるでしょう。









青の網をかけた部分に日本の地球温暖化への対応が技術優先に傾斜していることがわかります。


関連記事

環境政策における経済的手法とは①(07-03-26)

環境政策における経済的手法とは②(07-03-27) 

「国際社会への提案が多い国」と「国際社会からの勧告を受けることが多い国」(07-06-06)

90年代日本の温暖化政策⑧ 15年前、日欧で対応策に大きな相違(08-02-15)




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90年代日本の温暖化政策③ 18年前の1990年、第2回世界気候会議で11カ国がCO2削減目標を発表

2008-02-10 18:03:39 | 温暖化/オゾン層
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1990年10月29日からジュネーブで始まる第2回世界気候会議に11カ国がそれぞれのCO2削減目標を発表しました
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この記事によりますと、日本は「2000年に1990年レベルに安定化」を発表し、欧州の評価を受けたそうです。



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90年代日本の温暖化政策② 1990年の「地球温暖化防止行動計画」と92年の「CO2排出抑制目標」

2008-02-09 11:24:49 | 温暖化/オゾン層
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90年代前半、日本政府は現在の地球温暖化への対応に直結する2つの大きな決定を正式に決めました。一つは1990年10月23日に地球環境保全閣僚会議で正式に決めた「地球温暖化防止行動計画」です。

●温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)排出量を「2000年に1990年水準に安定化する」という目標を初めて設定した。
●政府はこの行動計画を基に、1990年10月29日からジュネーブで開かれる国連の「世界気候会議」で、CO2の早期規制を国際的に公約する。


もう一つは1992年5月22日に地球環境保全関係閣僚会議で正式に決めた「CO2排出抑制目標」です。


●「地球温暖化防止行動計画」で定めた1990年度のCO2国内排出総量を、 「11憶7000万トン(炭素換算で3億1800万トン)」と定める。
●CO2排出量の発生源別の内訳(炭素換算)は、石油、石炭などの化石燃料によるものが、2億8810万トン(90.6%)となっている。
●一人当たりのCO2排出量は2.57トン(二酸化炭素で約9.4トン)となっている。


●今後はこれらの数値を基に各種の温暖化防止対策が実施される。


もう何回も繰り返していますが、私の環境論では、これらの政治的、行政的決定が今後の日本の「地球温暖化防止への対応」を原則的に決めることになります。 これらの決定が行われたのが1990年でしたし、決定後17年余り経ち、日本がいま大変混迷していることを見れば、この経験則が十分に機能していることがお分かりいただけるでしょう

関連記事

混迷する日本③ 私の環境論 今日の決断が将来を原則的に決める




これら2つの日本政府の正式決定を伝える当時の記事を掲載します。


★1990年10月23日の「地球温暖化防止計画」

★1992年5月22日の「CO2の排出抑制目標」





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90年代日本の温暖化政策① 1988年は「温暖化が地球規模の環境問題」と国際的に認知された年

2008-02-08 19:53:09 | 温暖化/オゾン層
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「地球温暖化への対応」に関する国際社会の動きが活発になるにつれて、マスメディアの報ずる記事が今年に入って急に増えてきました。現在のEUと日本の対応の相違がしばしば目につきます。この分野の専門家ではない私たち市民がその相違に関心を持ち、なぜだろうかという疑問に対する答えを見つけようとすれば、20年前の1988年にタイムスリップすれば十分です。それ以上遡る必要はないでしょう。


「地球温暖化問題への対応」に対して積極的なEU、消極的な日米という構図があるとすれば、この相違は今に始まったことではありません。今日から過去20年間の国際的な動きの中からその答えを探す旅に出かけましょう。ご一緒ください。

まず、次の図をご覧ください。今でこそ、地球温暖化に対して、国際社会では「気候変動」という言葉が定着していますが、1988年6月にカナダのトロントで開催された国際会議の名称は「大気変動」という言葉で、時代の流れを感じます。

そして、この年にIPCCが創設されます。

翌年の1989年11月に「大気汚染と気候変動に関するオランダ会議」が開催されました。その直前の日本政府の準備段階の模様を次の記事が伝えています。


この記事から読み取れますように、「地球温暖化問題への対応」に対して積極的なEU、消極的な日米という構図はすでに20年前にでき上がっており、地球温暖化への日本の消極的な姿勢はすでにこの時点で始まっていたのです。つまり、私の環境論でいう「今日の決断が将来の状況を原則的に決める」という経験則が具体的な形で見えてくるのです。

記事の内容は20年前の状況ですが、掲げられた見出しは今日、2008年2月10日の朝刊、一面トップの記事であったとしても、あまり違和感がないのではないでしょうか。そうだとすれば、この国の「問題意識」と「対応策」が極めて不適切、不十分ということであった、そして、その状況を20年後の今なお引きずっているといってよいのではないでしょうか。


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混迷する日本⑰ 京都議定書が守られなかったら、どうなる?

2008-02-02 12:09:50 | 温暖化/オゾン層
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今日の表題に掲げた「京都議定書が守られなかったら どうなるか?」。私は講演会でこの種の質問を何回か受けた記憶があります。しかし、いつも答えられませんでした。一昨日の朝日新聞が多くの人が抱くこの疑問をとりあげ、答えてくれています。

今年から京都議定書の約束が始まりましたが、私には現在の日本の対応策ではこの約束を守れないと思います。この記事によれば、この約束が守れたか否かが判明するのは2015年夏ごろだそうです。

 


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EU、CO2削減の国別数値目標を提案

2008-01-30 10:47:01 | 温暖化/オゾン層
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1月24日の朝日新聞が「EU域内の温室効果ガス削減のための国別削減目標を提案した」と報じています。まずは次の2つの記事をじっくりお読みください。 




上の2つの記事の柱は次の3点にあります。

(1)EU全体で温室効果ガスの排出量を2020年までに90年比で20%削減 する。そのためにCO2削減の国別数値目標を設定する。

(2)EU全体で再生可能エネルギーの利用率を2020年までに20%まで高める。そのために再生可能エネルギーの利用率の国別数値目標を設定する。

(3)EU域内の排出量取引制度(EUETS)を拡充・強化する。

欧州委員会がスウェーデンに割り当てた(1)のCO2削減数値目標は2005年比17%、(2)の再生可能エネルギーの利用率の国別数値目標は2020年までに49%でした。正式な決定は来年になる見通しです。




関連記事

緑の福祉国家26 エネルギー体系の転換⑤ 10年前の1996年の状況(07-04-26)


ちなみに、10年前の京都議定書で決められた 「EUのCO2削減国別数値目標」 と 「現時点での成果」 を再確認しておきましょう。

緑の福祉国家14 気候変動への対応③(07-01-24) 

国連気候変動事務局(UNFCCC)が公表した温室効果ガス排出量 1990-2005(07-11-23) 





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混迷する日本⑭ 「CO2排出権」取引論の虚実、 10年前の議論だが.....

2008-01-28 12:12:43 | 温暖化/オゾン層
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今、世界はあたかも「排出権(量)」取引が唯一の実効性のある温暖化防止対応策であるかのような雰囲気になってきたように思います。昨日放映されたNHKの「クローズアップ現代」も、その流れに乗っているかのようです。私の環境論から考えると疑問がありますし、ある種の懸念があります


そこで、今日は、日本で世界初の「温暖化防止法」が制定された10年前に、「排出権取引」の議論に異議を唱えていた小野五郎さん(埼玉大学教授:産業政策論)という方が朝日新聞の論壇に投稿した記事を紹介します。私の環境論の立場からは、小野さんのお考えの方がわかりやすいのですが、皆さんはいかがでしょうか。



この投稿記事は、1997年9月8日に掲載されたものですので、地球温暖化防止京都会議が開催される3か月前に掲載されたものです。私はこの投稿記事を読むまで、小野さんがどういうお立場の方存じあげませんでしたが(10年たった今も状況は同じですが)、私にはこの方のお考えのほうが好ましい考えだと思います。小野さんのお考えはこの10年間で変わられたでしょうか。

次の図は京都議定書で決められた温暖化対策のメニューですが、排出権取引あるいは排出量取引「柔軟的措置」と位置付けられていますように、あくまで補完的ということではなかったのでしょうか。




米国や日本のように、国内での削減努力を十分にすることなく、補完的措置を優先するのはおかしいのではないでしょうか。


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混迷する日本⑫ 今日の道路特定財源が、将来の温暖化問題の状況を原則的に決める

2008-01-26 11:45:16 | 温暖化/オゾン層
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今日のブログの表題「今日の道路特定財源が、将来の温暖化問題の状況を原則的に決める」は、もちろん、私の環境論の根底にある「今日の決断が将来を原則的に決める」という経験則をもじったものです。

今月18日に始まった通常国会で「道路特定財源」が、混迷する日本の大きな議論となりそうな状況になってきました。今朝の朝日新聞の記事をご覧ください。

首相官邸(福田首相、町村官房長官)、国立環境研究所、日本経団連、石弘光・放送大学学長、NPO法人「環境・持続社会」研究センターの足立治郎事務局長、民主党、自民党のプレーヤー(アクター)がこの記事には登場し、それぞれの持論を展開しています。かつて政府税制調査会長を務めた石弘光・放送大学学長は「道路特定財源は、今の仕組みのままなら『地球温暖化促進税制』だ」と述べたと、興味深い発言を紹介しています。

この記事には、すべての導入国は税収を一般財源とし、使い道を限定していないとありますが、この情報は正しいのでしょうか。2003年の時点では90年代初めに導入した北欧諸国は一般財源とし、10年遅れて2000年以降に導入した欧州の主要国は一般財源ではありませんでした。今日の朝日新聞のこの記事が正しければ、欧州の主要国は2003年以降に税収を一般財源化したことになります。次の図をご覧ください。


関連記事



環境税の議論は北欧では80年代後半から始まっており、90年代初めには導入され、2000年に入るとドイツ、フランス、イタリア、英国で導入され、その効果も確認されています。つまり、北欧から遅れること15年、欧州の主要国から遅れること5、6年、日本ではこの間に断続的に議論はありましたが、いまだ結論が出ず、再び議論再燃というところです。


日本の行政は、自ら「21世紀環境立国戦略」などという看板を掲げながら、このような議論を再燃させているのは恥ずかしくないのでしょうか。経済だけでなく、環境分野でも失われた15年」を更新し続けるのでしょうか。15年前の1992年の新聞記事で石さんがおっしゃっていた「成長が鈍るとか、国際競争力が弱まるなどどいわず、むしろ環境対策で世界に対してリーダーシップを発揮してほしい」という言葉が混迷する今の日本を象徴しています。


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混迷する日本⑪ 温室効果ガスはどのように測るのか?

2008-01-25 09:46:50 | 温暖化/オゾン層
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温室効果ガスはどのようにして測るのか、このことをある程度知っていれば、「日本の地球温暖化対策」ほんとうに妥当性のあるものかどうか は難しい議論をしなくても、その道の専門家でもない私たちでも容易にわかるのではないでしょうか。

詳しいことはその分野の専門資料に譲るとして、まず、次の2つの記事を読んでみてください







上の図から、2005年の日本の温室効果ガスの排出量は13億6000万トンで、そのうちのおよそ90%(図では89.11%)が化石燃料の燃焼などエネルギー関連であることが明らかです。

このことは、温室効果ガスの排出削減には、実質的には既存のエネルギー体系を化石燃料の少ないエネルギー体系に転換していくか、様々な事情によりエネルギー転換が難しい場合には、エネルギーの総供給量(総消費量)を削減する(単にエネルギー効率を向上させるだけでなく、それによってエネルギーの総供給量・総消費量が実現されることが必要)しか手段はないことがわかります。

このことが理解できましたら、次の図をご覧ください。

日本が97年の京都議定書で公約した削減率は基準年である1990年のCO2排出量の6%減(-6%)でした。そして、京都議定書の趣旨からすれば、この-6%は上記のエネルギー体系の転換あるいはエネルギーの総供給量・消費量の削減によって達成すべきものでした。ところが日本が策定した温室効果ガス削減計画は-6%の削減目標のうち、「エネルギー起源」は±0、-5.4%を「森林吸収(-3.8%)と排出量取り引きなどの京都メカニズム(-1.6%)」となっています。つまり、CO2の主たる発生源であるエネルギー体系への対応策が極めて不十分なのです。

関連記事

日本政府が温室効果ガスの排出枠をハンガリーから購入(07-11-30)

国連気候変動事務局が公表した温室効果ガスの排出量 1990~2005(07-11-23)
 




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混迷する日本⑩ 世界初の「温暖化防止法」、今月中にも成立! でも、10年前の話

2008-01-24 09:11:16 | 温暖化/オゾン層
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一昨日、今月18日に行われた福田首相の施政方針演説で、「持続可能社会」という21世紀のキーワードが消え、代わって「低炭素社会」というまだ十分な概念が確立していない輸入概念(?)が登場したことを紹介しました。そして、昨日は環境省が「地球温暖化防止対策推進法」の改正案を自民党に提出した、というニュースをとりあげました。

今日は、なんと、10年前に、つまり、京都議定書の成立した翌年に、この国に世界初の「地球温暖化対策推進法」ができたというお話です。まずは次の記事をじっくりとご覧ください。


この記事をどう読むかは皆さんにお任せしますが、30年以上日本の環境政策をフォローしてきた私にとって、「この国はほとんど30年前の発想と変わらない」ということです。この記事の中に「・・・・・・調整は難航したが、自民党としてCOP4にぎりぎりのタイミングで成立させたいとの思惑から修正案をのんだ格好だ。」という記述がありますが、「COP4」を「7月の洞爺湖サミット」に置き換えれば、今の状況は10年前とほとんど同じだといってもよいのではないでしょうか。

この記事には、日本の政治、行政、マスメディア、審議会、企業など立法にかかわる「プレーヤー(アクター)の役割」「予想される結末」が見事に凝縮されています。

地球温暖化対策推進法は、京都議定書が成立した翌年の98年に成立し、99年4月1日施行、2006年4月に改正され、再び、今国会で改正されることになっています。日本の法律の改正の仕方は、最初に不十分な(あまり実効性が期待されない)法律を作り、それを時間の経過に合わせて徐々に「規制の対象」を広げていく(改正)という方法です。したがって、その間に「新しい被害者」「余分な経費」を増加させる特徴を持っています。まさに、「治療志向」の発想です。次の関連記事を参照してください。

関連記事

なぜ先駆的な試みを実施し、世界に発信できるのだろう⑫ プライバシーの保護(07-09-03)


昨日紹介した改正を伝える記事の最後の部分に「京都議定書に義務付けられた90年度比6%削減の達成を確実にさせる狙いがある」と書いてあります。「一歩前進」という言葉とともに、「抜本的○○」という正反対の言葉が大好きな(でも、行動に移すことはほとんどない)国民として、ここは、 「抜本的に」にいかなければならないのではないでしょうか。


関連記事

 「環境基本法」成立から14年① (07-12-06) 

 「環境基本法」成立から14年② 不十分なので、このままでは反対だ!(07-12-07) 



現状は、世界初の「地球温暖化対策推進法」が日本で成立し、施行された10年前よりも明らかに厳しい状況にあります。対策に必要なコストも10年前に比べて明らかに増えています。私の環境論の根底にある「今日の決断が原則的に将来を決める」という経験則を今こそ真剣に考え、文字どおり抜本的な改正をしなければなりません。

関連記事

私の環境論:今日の決断が将来を原則的に決める(08-01-17)


余談

 ● 地球温暖化対策推進法の制定に当たって(平成10年10月6日 真鍋大臣談話) 

1.地球温暖化対策推進法案は、去る10月2日の参議院本会議で可決され、10月9日に公布される運びとなった。本法は、昨年末のCOP3での京都議定書の採択を受け、まず、第一歩として、国、地方公共団体、事業者、国民が一体となって地球温暖化対策に取組むための枠組みを定めたものである。

2.これは、地球温暖化防止を目的とする世界最初の法律であり、COP3議長国として地球温暖化対策に積極的に取り組む我が国の姿勢を世界に示すことができるものと考える。  

3.本法の全面的な施行は、半年後に予定されるが、環境庁としては、早速、「基本方針」の策定等の法律に基づく措置の準備を開始することとしている。  

4.私としては、全体の温室効果ガスの排出量の約8割は事業者関連であることから、広範な事業者の取組を促すため、事業者との積極的な対話を私自身がトップ同士で進めていきたい。また、NGO・ボランティア、企業、地方公共団体などの有意義な温暖化防止の活動について大臣表彰をしたいと考えている。  

5.さらに、早期に京都議定書を発効させるため、11月のCOP4が大きな前進となるよう全力を尽くすとともに、京都議定書の批准に際しての総合的な国内制度構築の諸準備に万全を期していきたい。



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