べそかきアルルカンの詩的日常“手のひらの物語”

過ぎゆく日々の中で、ふと心に浮かんだよしなしごとを、
詩や小さな物語にかえて残したいと思います。

金魚のお花

2007年02月02日 23時58分52秒 | 掌のものがたり

金魚が死にました
お祭の夜にもらった金魚です
ある朝、金魚鉢の中でぬけがらとなって
ぽっかり浮んでいたのです
うちにきて 七日目の朝のことでした
小さなまぁるいお口をぱくぱくあけて
あんなに愛らしかったのに
水の中を優雅にただよい
あんなにきれいだったのに
とっても短い生涯でした
わたしがすくってしまったばっかりに
わたしにすくわれてしまったばっかりに
小さな命の灯火が
ある朝ふっつりかき消えてしまったのです

かわいそうなわたしの金魚

わたしはお庭の隅の陽だまりに
小さな穴を掘りました
ちょうど
レモンがひとつ入るくらいの穴でした
穴の底に金魚を横たえ
静かに土をかぶせて
そうしてお水をかけてあげました
来る日も 来る日も
お水をかけてあげたのです
それがわたしの
せめてものつぐない
それがわたしの罪ほろぼし
だって、わたしがすくってしまったばっかりに
わたしにすくわれてしまったばっかりに
ある日とつぜん金魚の命の灯火は
ふっとかき消されてしまったのですから

かわいそうなわたしの金魚

秋が過ぎ 冬が去り
季節はめぐって
あくる年の春のこと
小さなお花が咲きました
お庭の隅の陽だまりに
紅いお花が咲いたのです
そこはあの
金魚を埋めた場所でした
紅くて可憐なお花です
花びらは透きとおるように美しく
そよ風にひらひら揺られておりました
きっとわたしの可愛い金魚が
紅い小さなお花となって
わたしをなぐさめにきてくれたのです
わたしの金魚は
やさしい やさしい金魚です
だって、いままたこうして
わたしを癒してくれているのですもの

じっとお花にみとれていると
しょっぱいお水がひとしずく
わたしの頬を
流れて落ちてゆきました
あぁ、これで
わたしの罪は許されたのでしょうか
わたしはつぐなうことができたのでしょうか
小さなお花はなにも語らず
ただひらひらと
そよ吹く風に揺られておりました
水の中を優雅にただよう
愛らしい 愛らしい金魚のように




☆絵:エプコ・ウィルラン☆
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