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べそかきアルルカンの詩的日常“手のひらの物語”

過ぎゆく日々の中で、ふと心に浮かんだよしなしごとを、
詩や小さな物語にかえて残したいと思います。

空ばかり眺めています

2018年09月02日 09時21分40秒 | 慕情




この空は
どこまでも続いています
きっとあなたの暮らす遠くの町にも

きょうもまた
ぼくは空を眺めて過ごしています
あなたのもとへ続くこの空を

あなたの髪をとかした香しい風が
いまぼくの傍らを
吹き抜けていったような気がします



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べそかきアルルカンの“徒然読書日記” 
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べそかきアルルカンの“銀幕の向こうがわ”
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遥かな情景

2018年06月02日 16時06分15秒 | 慕情


あの日あなたは 夕陽を背にして
小さく 胸の高さで手をふった

青い風が吹きぬけて
ぼくらの淡い季節が 
静かに終わろうとしていた





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文箱の中で色あせていくもの

2016年10月16日 16時14分48秒 | 慕情

薄水色の便箋と
あわい桜色の封筒を手に入れました
あなたに手紙を書くためです
ペンとインキも買いそろえました
そのしなやかなペン先は
太すぎも細すぎもせず
ちょうどほど良い感じです
小瓶に入ったインキは
深い海の色をしています

そしてわたしは何通も
何通も手紙をしたためました
すべて あなたに宛てた手紙です
言葉を紡ぐということは
吹き溜まりの落ち葉の中から
とくべつな枯葉を一枚
選び出すようなものです
あるいはまた砂浜で
芥子粒ほどの宝石を見つけ出すことに
似ていなくもありません

とにかくわたしは
そのペンとインキでもって
薄水色の便箋に
藍色の文字を書き連ねていったのです
けれどこれらの手紙があなたのもとに
届けられることはありません
手紙をしたためることで満たされた心を
わたしはそっと
文箱の中に仕舞っておくことにしたのです
言葉は無慈悲です
どんな想いも言葉にした途端
哀しく色あせてしまうのですから

あなたの町でもいまごろは
秋桜が咲いて
風にゆらゆら揺れているのでしょうか




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美しい日 

2016年08月14日 09時40分35秒 | 慕情

朝露の残る
シロツメクサの原っぱを
ひとり素足で歩いてみました
濃密な草いきれ 透きとおった静寂
きょうは一年でもっとも美しい日

ただひとつ信じられるもの
それはきょうという日の美しさ
この世にあなたがいるだけで
世界はこんなにも
やさしくなれるのですから



~8月14日に寄せて~
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そんなふうにしてぼくは

2016年04月02日 19時45分46秒 | 慕情

あなたの肩先でゆらめく木洩れ陽
それはぼくです
あなたの影に降りそそぐ枯れ葉
それはぼくです
あなたの部屋の窓をつたう雨粒
それはぼくです
あなたのかたわらを吹き過ぎる風
それはぼくです
あなたの掌でとけてゆくひとひらの雪
それはぼくです
あなたの横顔を茜色に染める夕陽
それはぼくです
あなたがふと目にとめた路端の花
それはぼくです
あなたを眠りに誘う(いざなう)夜の静寂(しじま)
それはぼくです
あなたの寝顔を照らす月あかり
それはぼくです
そんなふうにしてぼくは
いまも囁きかけているのです
あなたのことを「アイシテイマス」と





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ある花冷えの日のこと

2016年03月12日 21時31分21秒 | 慕情

伝えたいことがたくさんありました
でもなにも話せないまま
あなたのうしろをつかずはなれず
うつむきかげんに
ただただ歩いていたのです

あれは初めて心を染めた
十代最後のある春の日ことでした
前をゆくあなたの影に
だれにも気づかれぬよう
そっと寄り添ってみたのです

伝えたいことがたくさんあったのに
けれどなにも話せないまま
時間ばかりが過ぎていき
あなたの影に重なるように
ただただ歩いていたのです

そうあれはいまは遠く過ぎ去った
十代最後のある花冷えの日のことでした
あなたの背中を見つめていると
やがてやすらぎと悲しみがない交ぜになって
ますますなにも云えなくなったのです

あなたは気づいていましたか
それとも気づかぬふりを
してくれていたのですか
あなたは優し過ぎました
こんなわたしにさえ
あなたは優し過ぎたのです




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あまりに静か過ぎるから

2012年10月26日 21時09分48秒 | 慕情

ことしもまた
スノードロップの花が咲きました

ただそのことを伝えたくて
この葉書をしたためています

朝から降りつづいていた雪が
いつのまにか雨にかわりました

きょうは
いつにもまして静かです

ことしもまた
スノードロップの花が咲きました

それだけをただ
・・・・・
あなたに伝えたくて




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ひめごと ざれごと ひとりごと

2011年10月01日 11時42分45秒 | 慕情

もしもあなたのポケットの
マッチにわたしがなれたなら

あなたの細い指さきで
わたしの芯に火をつけて

あなたの深いため息で
わたしの火照りを吹き消して

わたしはあなたのマッチになりたい

ほんのつかの間あなたの中で
ほのかに揺らめく灯りになりたい




ルビ:芯=こころ


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密やかな時

2010年02月07日 14時06分55秒 | 慕情

瞳をそらさないで
あなたのすべてを受けとめたいから

涙をぬぐわないで
そのひと雫にさえ愛おしさが募るから

なにも話さないで
耳を澄ませばあなたの鼓動が
ほんの微かに聴こえてくるから

あすの扉を開かないで
やさしい時が逃げていってしまうから




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あなたの頬をつたうひと粒の雫が

2010年01月06日 21時11分54秒 | 慕情

あなたの瞳を潤す涙のわけを
ぼくは知らない

せめてあなたの唇が
やわらかな笑みを取り戻すまで
ぼくはなすすべもなく
ただただ静かに寄り添っているだけ

あなたの胸にひそむ憂いのわけを
ぼくは知らない

せめてふたたびあなたの睫毛に
おだやかな木洩れ陽が宿るまで
ぼくは黙って手を取り
その横顔を見つめているだけ

けれどそうして癒されているのは
いつもきまってぼくの方
あなたの前では
ぼくは途方もなく無力なのです

あなたの頬をつたうひと粒の雫が
ぼくにはとても愛おしく
ただひたすらに愛おしく
どうにも忍びがたいのです




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想いは降り積む雪のよう

2009年12月19日 20時30分48秒 | 慕情

すっかり葉を落とした冬枯れの木立の下で
わたしは眠っている

わたしが心を閉ざしたのは
傷つくことも
傷つけることからも遠ざかりたかったから

だからわたしはこうして
冬枯れの裸木の下で
土に埋もれてじっと眠っているのです

風が吹きやみ
どうやら雪が降りはじめたようですね
目を閉じていても
土の冷たさでわかるのです

わたしの想いは
静かに降り積む雪のよう
人知れず 音もなく 
果てなく募ってゆくばかり

けれど季節が巡ってもしもふたたび
穏やかな陽の射すことがあったなら
わたしは小さな花を咲かせるでしょう
あなたのために
あなただけのために
優しく香る綿雪のような花を



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星の瞬く冬空の下で

2009年12月15日 21時13分59秒 | 慕情

つくづく不思議なものですね
ついこのあいだまで
深い記憶の底で眠っていたきみが
今夜はこうして
肩を並べて歩いている
言葉少なに
日常とは少し離れたふたりだけの場所を
かたわらで
ぼくを見上げて微笑むきみは
遠く過ぎ去った季節に舞う花びらのよう

どちらからともなく戸惑いがちに
そっと指をからめて身を寄せあったのは
あながち
寒さのせいばかりではないはずです
星あかりに照らされた
凍てつく夜の片隅で
ぼくらはうすく口唇をかさねたけれど
失った時の長さにくらべれば
それはほんの些細なことなのですね

夏に生まれたぼくの手が
冬に生まれたきみの手よりも冷たいなんて
そんなことすらぼくらは
今宵はじめて知ったのですから



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こうして再びめぐり逢えたのは

2009年12月11日 22時23分50秒 | 慕情

あれからどれくらいたつのでしょう
あなたはふいにまた ぼくの前に現れた
美しく歳月をかさねて
しなやかな香りを身にまとい
けれどそれでいて 
少女のころの愛らしさを
そのまなざしの奥にそこはかとなく残したまま

出逢いは思い掛けないものですね
遠く離ればなれになって
それぞれ歩んできたふたつの道が
いままたこうして交わるなんて
まるで
凪いだ水面に小石を投げこまれたような
そんな心持がするのはぼくだけですか

あなたの口唇からこぼれ落ちる
しとやかな言葉のひとつひとつが
ぼくの心をざわめかせ
やわらかなあなたの微笑みが
まるでゆりかごを揺らすように
夢見心地にさせるのです

あなたはきょうまで
どこでどんなふうに過ごしてきたのでしょう
あなたの面影のむこうに
過ぎ去った時の長さと
瑞々しかった懐かしい日々が
やさしく見え隠れしています



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密やかな芽生え

2009年10月24日 17時37分41秒 | 慕情

それは突然のことでした
ふと気づけばわたしの中で
ほんの少しばかり何かが変わっていたのです

いいえそれとも
これまでわたし自信気づかぬうちに
そっと温めて続けていた何かが
ようやく芽生えただけなのかもしれません

まるで
やさしい夢から目覚めたときのような
甘酸っぱさとほろ苦さが
微妙に溶けあったような気分です

たとえばそれは
なにげなく開いた本のページから
思いがけず花びらがひとひら
はらりと舞い落ちたときのような戸惑い

たとえばそれは
なんとなく見上げた夜空に
すぅっと細い糸を引くように
星屑が流れ去る一瞬を目にしたときのような
淡いときめき

いまはただ
心の中で密やかにそっと
静かに 静かに願うだけです
この想いをたいせつに
たいせつに育てていければいいのだけれどと




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夜の片隅でぼくは

2009年06月03日 22時42分18秒 | 慕情

きみの微笑が灯した
小さな星あかりをたよりに
ぼくは夜の片隅をさまよっている
帰る場所をなくした旅人の
心もとない足取りの危うさで

きょうでもあしたでもない
曖昧な時を漂い
今いる場所を何度も何度も
見失いそうになりながら
永遠とも思える旅路の果てに
吐息はいつしか歌になる

とりとめのない夜の
深いしじまに包まれて
ぼくはきみのために口ずさむ
遥かむかし
どこか見知らぬ土地で耳にした
遠い異国の子守唄を

冷たい夜の底から
きみの灯した星あかりを見上げて
ぼくはかぼそい声で歌い続ける
きみの見る夢がいつも美しく
どうか安らかでありますようにと





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