べそかきアルルカンの詩的日常“手のひらの物語”

過ぎゆく日々の中で、ふと心に浮かんだよしなしごとを、
詩や小さな物語にかえて残したいと思います。

おだやかな情景

2015年05月31日 15時15分40秒 | 哀愁

庭先の木洩れ陽の中で
読みかけの本のページがひとりでにめくれ
ふと居眠りからさめたあなたは
そこに風があったことを知るでしょう

まだ夢からさめきらないような心持ちで
丘の頂につづく坂道にそって
たよりなげな視線をさまよわせるあなたは
うたた寝の間にすっかり冷めてしまった紅茶を
きっとひと息に飲み干すのです

すると
あなたの足もとに寝そべっていた老犬が
いかにも大儀そうに起きあがり
大きな伸びをひとつするでしょう

朝露に濡れた葡萄の粒のような瞳で
じっとあなたを見あげる愛犬の頭に
あなたは優しく手をさしのべ
まるで恋人にでも語りかけるように
その名を口にするのです

そして
窓辺にたたずんでふと
そんなごくありふれた日常のひとこまを
ゆくりなくも目にとめてしまったならば
わたしは
まぶたがひとりでに熱くなっていくのを
感じないではいられなくなってしまうでしょう

やすらぎは
悲しみをともなうものだと
知っているから

やさしさは
いつか痛みにかわると
わかっているから






べそかきアルルカンの“徒然読書日記”
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かごの中の小鳥は

2015年05月03日 11時37分03秒 | 哀愁

鳥かごの中の空は
色のない空

鳥かごの中のとまり木は
いつわりの梢

鳥かごの中を吹き抜ける風は
香りのない風

だれもが
死から逃れることができないように
かごの中の小鳥は
生きることからも
逃れられないでいるのです

鳥かごの中の歌は
哀しみの音色




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