べそかきアルルカンの詩的日常“手のひらの物語”

過ぎゆく日々の中で、ふと心に浮かんだよしなしごとを、
詩や小さな物語にかえて残したいと思います。

記憶の澱

2013年07月06日 20時29分57秒 | 哀愁

とおい遠い遥かむかし 
世界がまだ曖昧模糊としていたころ
小さな小さな
ほんの小さな命がひとつ
海の片隅の暗がりで
ふいにぽつんと生まれました

それはたぶん
確かなことに違いありません
そうです
命は海で生まれ
海からやってきたのです

潮騒を耳にするとなぜかしら
懐かしさがこみあげてくるのは
そのあかしです

心の在りようによっては
目から小さな海が溢れだすのは
そのせいなのです

けれど
海の底知れなさと果てしなさを想うとき
いま在ることの心もとなさに
わたしはただただ
途方に暮れてしまうのです

はるか遥か遠いむかし
世界がまだ有耶無耶だったころ
海の底のうす暗がりで
わたしはぽつねんとしておりました
ふと気づいたときにはすでに
わたしはそこにいたのです

ひろい広い
ただただ広い
海の片隅で生まれたわたしは
はじめて孤独を知りました

そのあまりの心細さとなすすべのなさが
ながい年月の間に胸のどこかしらで
いつのまにやら澱となってしまったのでしょう
だからわたしはいまもこうして
ゆらりゆうらり
あてなくたゆとうているのです



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