東の空が薄ぼんやりと青みをますころ
少女は羊たちをつれて荒れ野へむかいます
荒れ野では日なが一日
草を食む羊の群れを眺めて過ごすのです
草原を吹きわたる風に髪を遊ばせながら
ときおり羊の数をかぞえては
穏やかに流れ去る綿雲のゆくえを目で追ってみたり
小川のせせらぎに素足をひたしてみたり
ときには
シロツメクサで子羊の首飾りを編んでみたり
幼いころ聴きおぼえた
古くから伝わる歌を口ずさんでみたりするのです
やがて西の空がやわらかな茜色に染まるころ
少女は羊たちをあつめて家路につきます
遠く鳴り響く晩鐘に
きょう一日の無事を感謝しながら
羊たちを寝かしつけ
ロウソクの小さな灯のもとで
つつましい食事を終えると
あとは粗末な寝床で
静かにそっとまぶたを閉じるだけ
昨日と変らぬきょうが終わり
明日もまた
きょうと変らぬ一日が訪れるでしょう
つぎの日も
そしてそのまたつぎの日も
なにか新しい出来事が待っているわけではありません
けれど少女の寝顔はおだやかです
たいせつなことはみんな
神さまが行なってくださるのですから
★picture:William Adolphe Bouguereau★ ↓↓↓ ポチッっとね