べそかきアルルカンの詩的日常“手のひらの物語”

過ぎゆく日々の中で、ふと心に浮かんだよしなしごとを、
詩や小さな物語にかえて残したいと思います。

羊飼いの少女

2011年07月03日 14時32分00秒 | 慰め種

東の空が薄ぼんやりと青みをますころ
少女は羊たちをつれて荒れ野へむかいます
荒れ野では日なが一日
草を食む羊の群れを眺めて過ごすのです

草原を吹きわたる風に髪を遊ばせながら
ときおり羊の数をかぞえては
穏やかに流れ去る綿雲のゆくえを目で追ってみたり
小川のせせらぎに素足をひたしてみたり
ときには
シロツメクサで子羊の首飾りを編んでみたり
幼いころ聴きおぼえた
古くから伝わる歌を口ずさんでみたりするのです

やがて西の空がやわらかな茜色に染まるころ
少女は羊たちをあつめて家路につきます
遠く鳴り響く晩鐘に
きょう一日の無事を感謝しながら

羊たちを寝かしつけ
ロウソクの小さな灯のもとで
つつましい食事を終えると
あとは粗末な寝床で
静かにそっとまぶたを閉じるだけ

昨日と変らぬきょうが終わり
明日もまた
きょうと変らぬ一日が訪れるでしょう
つぎの日も
そしてそのまたつぎの日も
なにか新しい出来事が待っているわけではありません
けれど少女の寝顔はおだやかです

たいせつなことはみんな
神さまが行なってくださるのですから



★picture:William Adolphe Bouguereau★ ↓↓↓ ポチッっとね
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