べそかきアルルカンの詩的日常“手のひらの物語”

過ぎゆく日々の中で、ふと心に浮かんだよしなしごとを、
詩や小さな物語にかえて残したいと思います。

夜の雨にはmellowな曲を

2008年11月24日 19時48分41秒 | 哀愁

陽が落ちて
いつのころからか雨が降りはじめたようです
閉ざされた部屋の中にいても
それは微かな気配でわかるのです

わたしは夜の雨が好き

屋根や地面を激しく打ちつける
そんなどしゃ降りの雨じゃなくて
まるで忍び泣きでもするような静かな雨が
そう ちょうど今宵の雨のように

カーテンを少し開いてみると
無数の雫がか細い銀の糸をひいて
冷たい夜の底に降りそそいでいます

窓の硝子をつたい落ちる雨粒たちは
くっついたり離れたりしながら
いったいなにを囁きあっているのでしょう
ためしにそっと耳をかたむけてみても
もちろんなにも聴こえはしない

こんな優しい雨の夜は
灯りを落としたほの暗い部屋の中を
きれいな音楽で満たしてあげたくなるのです
雨粒たちの機嫌をそこねぬよう
あるいはそっとなぐさめるように 

ゆったりとしてやわらかくまろやかな
それでいて甘やかな
なんだかせつなくなるような
しっとりと美しく 
深く胸に沁み入るように心地よい
寂しい雨音にお似合いの
とってもとてもmellowな曲を



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コメント (2)
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あなたが望めば

2008年11月15日 16時35分52秒 | 慰め種

もしもあなたが
なにかをあきらめそうになったとき
その胸にとどめておいてほしいのです
あの日
あなたのなにげないまなざしに
ぼくの荒んだ心が
ふっとやわらいだということを

もしもあなたが
なにもかもなげだしたくなったとき
おぼえておいてほしいのです
あの日
あなたの小さな微笑が
ぼくのとざされた胸の中にまで
静かに沁みたということを

もしもあなたの瞳が
悲しいうるおいに満たされたとき
忘れないでいてください
あの日
ぼくの心のすき間を
そっと埋めてくれたのは
あなただったということを

もしもあなたが
生きてくことの寂しさに
ふと気づいてしまったとき
どうか どうか 
思い出してほしいのです
あなたが望めばぼくはいつでも 
夜空をよぎる星になるから





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さしたるわけもないのだけれど

2008年11月01日 13時42分23秒 | 哀愁

いつもの通いなれた道
朽ちかけた 
空き家の庭の隅の木に
だいだい色の実がなった
まるでそこだけ
ぽっとあかりが灯ったよう

ふと見上げれば
いつの間にか空はうんと高くなっていて
空気はひんやり冷たくなっておりました
とくにさしたる理由もないのだけれど
そのときわたしはなぜかしら
辺りのあまりの静けさに
小さな戸惑いをおぼえたのです




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