べそかきアルルカンの詩的日常“手のひらの物語”

過ぎゆく日々の中で、ふと心に浮かんだよしなしごとを、
詩や小さな物語にかえて残したいと思います。

balance

2009年06月21日 13時56分13秒 | 掌のものがたり

あの月はこれから
満ちていくのかしら
それとも欠けていくのかしら

いつのことだったか
ふと歩みをとめたきみは夜空を見上げ
消え入るような声でつぶやいた

そのやわらかな視線の先には
もぎたてのレモンのような月が
所在なさげに浮かんでいたっけ

蜜色の光に照らされたものうげな横顔
ぼくの心に小石が投げ入れられた瞬間だった
波紋は音もなく緩やかにひろがっていった

・・・・・・・・・

あれからぼくらの関係は
満ちることも欠けることもなく曖昧なまま
たゆたうようにここにある

けれど
これくらいがちょうどいい
たいせつな何かが壊れてしまわないように

このままずっと
満ちることも欠けることもなく
そっと そっと




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心地よい静寂

2009年06月14日 13時01分45秒 | 叙情

ぼくはきみと語りたい
空と海が滲んでとけた
水平線の不確かさについて

ぼくはきみと語りたい
出逢いがもたらす寂しさについて

ぼくはきみと語りたい
森を吹き抜ける風と
葉ずれの音の優しさについて

ぼくはきみと語りたい
夢みることの虚しさについて

ぼくはきみと語りたい
朝霧に煙る草原の静けさについて

ぼくはきみと語りたい
喪失と安らぎの密やかな関わりについて

ぼくはきみと語りたい
銀河に浮かべたパピルスの小舟の
羽毛のような軽やかさについて

ぼくはきみと語りたい
得体の知れない哀しみについて

ぼくはきみと語りたい
ほうき星の描く軌道の美しさについて

ぼくはきみと語りたい
花びらに宿る朝露の
冷ややかなきらめきについて

ぼくはきみと語りたい
きみの瞳を潤おす涙のわけについて

ぼくはきみと語りたい
けれどそこに 言葉はいらない

ぼくらに必要なのは
心地よい静寂

そっとかさねた手の温もりが
やがて静かに溶けあって
ぼくらの想いは通じあう

だからそこに 言葉はいらない





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Fade out

2009年06月07日 14時13分39秒 | 掌のものがたり

無邪気さを装うには
あまりにも時を重ね過ぎてしまった

なにかが始まるということは
いずれ終わりの瞬間が訪れるということも
知りすぎるほど知っていた

けして多くを望まなかったし
求めなかった

いまのわたしは
さよならのしるしに
微笑みながら手をふることだってできる

はず・・・・

だからせめて
やさしい最後を

人知れず
そっと花びらが散りゆくような
やさしい やさしい終わりの時を



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夜の片隅でぼくは

2009年06月03日 22時42分18秒 | 慕情

きみの微笑が灯した
小さな星あかりをたよりに
ぼくは夜の片隅をさまよっている
帰る場所をなくした旅人の
心もとない足取りの危うさで

きょうでもあしたでもない
曖昧な時を漂い
今いる場所を何度も何度も
見失いそうになりながら
永遠とも思える旅路の果てに
吐息はいつしか歌になる

とりとめのない夜の
深いしじまに包まれて
ぼくはきみのために口ずさむ
遥かむかし
どこか見知らぬ土地で耳にした
遠い異国の子守唄を

冷たい夜の底から
きみの灯した星あかりを見上げて
ぼくはかぼそい声で歌い続ける
きみの見る夢がいつも美しく
どうか安らかでありますようにと





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