べそかきアルルカンの詩的日常“手のひらの物語”

過ぎゆく日々の中で、ふと心に浮かんだよしなしごとを、
詩や小さな物語にかえて残したいと思います。

なのに なのに

2015年09月27日 10時37分58秒 | 叙情

あのひとの言葉をすべて
書きとめておきたかった

あのひとの仕草をみんな
まぶたに焼きつけておきたかった

あのひとのまなざしをずっと
胸に刻んでおきたかった

あのひとの悲しみにいつも
そっと寄り添っていたかった

それがわたしの
生きるよすがでした

それがわたしをこの世に繋ぎとめておく
たったひとつの拠りどころだったのです

なのに なのに・・・・





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Adieu Lucy

2015年09月06日 11時17分15秒 | 掌のものがたり

かつて
浴室で手首を切り
血文字でさよならと書いて
この世に別れを告げた画家がいました
ブルガリアで生まれた彼は
ヨーロッパ各地を放浪し
いつしか
モンパルナスに暮らしはじめました
絵を描きながらも酒に溺れ
家庭があるにもかかわらず
友人の妻を寝取るなどして
退廃の日々を生きてきました
放蕩の限りをつくした挙句の果て
やがて画家は精神を病み
最期は浴室を自らの血で染めたのです
血文字で書かれたさよならのあとには
友人の妻の名が記されていました
葬儀の日
パリ中のギャラリーが店を閉め
亡くなった画家のため喪に服しました
そして彼の棺のうしろには
幾千人もの人々が葬列をなしたのです
彼が成しえたこととは
いったい何だったのでしょう
残された絵はなにも語りません
ただ観るものを魅了するだけ



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