べそかきアルルカンの詩的日常“手のひらの物語”

過ぎゆく日々の中で、ふと心に浮かんだよしなしごとを、
詩や小さな物語にかえて残したいと思います。

霧雨の夜を漂いながら

2008年10月25日 20時15分51秒 | 哀愁

ひっそりと静まりかえった夜更けの街
砕け散ったビーズのような霧雨は
ゆくあてもなくさまよい歩くわたしの肌に
ひっそりまとわりついてくる
傘をさすほどのことはないけれど
まるで炭酸水の泡粒の飛沫の中にいるみたい

人影の絶えた通り
ぼんやりと闇に滲んだ街灯の薄あかり
濡れて艶めくアスファルト
凍えて立ちつくす街路樹
吹きだまりの枯葉と打ち捨てられた時間
モノクロームの戸惑い

繰り返し脳裏をよぎる不透明な旋律
覚醒する睡魔
色あせた唇に 蒼ざめた微笑 
すり切れた想い 繕いきれないほころび
剥がれ落ちそうな感情
あきらめと憔悴
甘やかな絶望 ゆがんだ陶酔 
麗しい傷痕と 芳しい静寂
こめかみに貼りついたほつれ毛

めまい

夜更けの街を漂いながら
探し求めてていたのは
わたしの居場所

そんなもの
どこにもありもしないのに







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だからほら いまもこうして

2008年10月19日 12時52分02秒 | 慰め種

空を見上げて目をとじる
と、お陽さまの温もりが
まぶたに透けて感じられます

やわらかな風が髪をと梳かし
かすかに大気が香ります
虫の羽音や小鳥のさえずり
葉ずれの音がそっと耳をくすぐります

ゆるやかに時が流れて意識がうすれ
心がほどけていくようです

けれどふたたび
そっとまぶたをひらいてみると
そこにはやっぱり
ひとりぼっちのわたしがいる

だけどもう
わたしは頬づえなんかついたりしない
世界は思いのほか愛しみ深く
さりげないやさしさにあふれていると
なんとはなしに気づいてしまったから

だからほら
わたしのくちびるが小さな笑みを
いまもこうして
ほのかに浮かべていられるのです







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せめてきみの見る夢が

2008年10月11日 11時17分25秒 | 哀愁

頬を濡らして眠る
きみのそのしなやかな黒髪を
こうしてずっと慈しんでいたい
そうすればきみは夢を見るかもしれない
ゆらゆらと水底にゆらめく夢を
あるいはふわふわと軽やかに
深い霧の中を漂う夢を

なにもかも忘れさせてあげたいけれど
ぼくは成す術もなく
涙をためたきみのやわらかなまぶたに
ただそっと唇づけてみるしかないのです
せめてきみの見る夢が
おだやかな優しいものでありますようにと






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