べそかきアルルカンの詩的日常“手のひらの物語”

過ぎゆく日々の中で、ふと心に浮かんだよしなしごとを、
詩や小さな物語にかえて残したいと思います。

泣きたい・・・・・

2007年06月30日 23時00分03秒 | 慕情

泣きたい・・・・

悲しいからではありません
苦しいからでもありません

ただ愛おしいから
せつないほどに愛おしいから









★絵:ジョアドール★  ↓ポチッっとね
  にほんブログ村 ポエムブログへにほんブログ村 ポエムブログ 自作詩・ポエムへ
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

林檎の花咲く丘

2007年06月24日 13時18分01秒 | 慕情

風かおる野辺の小径
林檎の花が咲いている

やわらかな草のうえに身を投げだすと
樹蔭を流れる小川のせせらぎが
忘却と追憶のかなたへぼくをいざなう

まぶたをとじるとそこに
忘れられぬひとの横顔

林檎の花びらが風に舞い
真珠色の大気がかおる

若草のニンフよ聴かせておくれ
美しく澄んだ歌聲を
可憐な夢の物語を

そうして
青い地平線と
無限の空とがとけあう場所へ
そっとぼくを連れていっておくれ







★絵:ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ★ ↓ポチッっとね
   にほんブログ村 ポエムブログへにほんブログ村 ポエムブログ 自作詩・ポエムへ
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

こぼれ落ちてく微粒子

2007年06月20日 21時13分48秒 | 叙情

誰かが砂時計を
コトリ・・・
と置いた
きらきらひかる微粒子が
硝子のくびれをすり抜けてゆく

ひとは
この世に生まれでたその瞬間(とき)から
死にむかって生きはじめる

まだ未熟な心は
真理と理想を追いもとめ
悦びと哀しみに酔いしれる

やがて
信じていたもののすべてが
幻想だったと思い知るとき
肉体は時の力に屈し
目に見えぬほど緩慢に
感じられぬほどゆるやかに
徐々に 徐々にくずれてゆく

硝子のくびれをすり抜ける微粒子は
あるときを境に速度をます
確固たる現実の前に
夢と理想がうち砕かれ
悦びと絶望
情熱と惰性
それら対極をなすものの狭間で
進むべき道を見失う

そうして
儚い希望と
耐えがたい現実のあわいに
ひとは自らの居場所を
さだめようと妥協する

誰かが
コトリ・・・
と砂時計を置いた

ぼくは
この世に生まれでたその瞬間(とき)から
死にむかって生きはじめた







★絵:クリムト★      ↓ポチッっとね
 にほんブログ村 ポエムブログへにほんブログ村 ポエムブログ 自作詩・ポエムへ
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

水平線はいつも遠くあるのに

2007年06月16日 16時37分10秒 | 叙情

水平線はいつも遠くあるのに
ぼくは知らぬまに
いくつもの季節をすり抜けてしまった

水平線はいつも遠くあるのに
ぼくはいつの間にか
信じられぬほどの齢(よわい)を重ねてしまった

退屈な時間だけが
容赦なく傍(かたわ)らをかけ抜けてゆく
いつかぼくは
鳥になることをあきらめ
おとなになった

空の蒼さと
朝焼けのやるせなさと
星くずのはかなさと
事実がかならずしも
真実ではありえないということと
それからほかにも
もっともっとたくさんあったはずの
たいせつなことを
ぼくはすでに忘れてしまった

水平線が
うす墨色の空にとけこんでゆく
水平線はいまも遠くあるのに
ぼくはこうして生きている







★絵:ハイビン★  ↓ポチッっとね
 にほんブログ村 ポエムブログへにほんブログ村 ポエムブログ 自作詩・ポエムへ

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ennui

2007年06月10日 15時17分47秒 | 哀愁

寄せてはかえす さざ波のように
あてどなく流れゆく ちぎれ雲のように
天空をゆるやかに巡る 星々のように
静かにくりかえされる 日々のいとなみ

いつか目にしたような景色をまえに ぼくは
ただわけもなく じっとたたずむ


風にたゆたう たんぽぽの綿毛のように
眠気をさそう 緩慢なセロの音色のように
空のかたすみに消えかかる 虹のきれはしのように
哀しくも美しく 時は過ぎてゆく

りんごの皮をむく手をとめて きみは
ふともの思いに しずみこむ


もの憂い午後のひととき






★絵:エゴン・シーレ★↓ポチッっとね
  にほんブログ村 ポエムブログへにほんブログ村 ポエムブログ 自作詩・ポエムへ


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

夏乙女

2007年06月06日 09時25分41秒 | 掌のものがたり

夏、
ローカル線の無人駅
誰もいないプラットホームに
少女はひとりたたずんでおりました

純白のワンピースに
紅いリボンのついた麦藁帽子
空はどこまでも青く澄みわたり
金色(こんじき)の陽射しは
これでもかとばかりに
容赦なく地上を照りつけています
あたりには人っ子ひとり見あたりません

激しく降りそそぐ蝉しぐれ
そのあまりの騒がしさに
かえってあたりの静けさがきわだつようです
ときおり涼やかな風が吹き過ぎて
見わたすかぎり一面の麦畑がゆるやかに波を打ちます
そのさまはまるで緑の大海原
真っ青な空 真っ白な入道雲



少女は春からやって来ました
そしていま
ようやく夏にたどりついたのです
ふと あすのゆくえに目をやると
景色が遠くゆらめいています
かげろうにゆがんで見える線路のさきには
きっと秋が待っているのでしょう
そうしてもっとさきの そのまたさきのさきには
静かに凍てつく
冬の大地がよこたわっているのです

夏の命は短く
秋は思いのほかはやく訪れるものだということを
知っているのでしょうか
少女はひとり、
誰もいないプラットホームに
たったひとりでたたずんでおりました

草いきれが青く匂いたつ夏の盛り
ひとは誰しも
ひとりぼっちなのかもしれません






★絵:カシニョール★  ↓ポチッっとね
  にほんブログ村 ポエムブログへにほんブログ村 ポエムブログ 自作詩・ポエムへ
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

帰路

2007年06月03日 14時38分07秒 | 慕情

ひとつてまえの駅で おりて歩こう
夜のしじまに 新緑の街路樹が香しいから

ひとつてまえの駅で おりて歩こう
あの日 あの頃のことを忘れないために

ひとつてまえの駅で おりて歩こう
あの小さな星の瞬きを
あなたがどこか遠くの街で
見上げているかも しれないのだから

ひとつてまえの駅で おりて歩こう
あなたの愛らしい仕草や
なにげないひとことをふり返るために

ひとつてまえの駅で おりて歩こう
少しばかり雨にぬれても 気にはならない
あなたのことで 頭の中がいっぱいだから

ひとつてまえの駅で おりて歩こう
あなたにとってなんでもない
ぼくのたいせつな想い出を 胸に抱いて







★絵:ホルスト・コーデス★  ↓ポチッっとね
  にほんブログ村 ポエムブログへにほんブログ村 ポエムブログ 自作詩・ポエムへ



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする