べそかきアルルカンの詩的日常“手のひらの物語”

過ぎゆく日々の中で、ふと心に浮かんだよしなしごとを、
詩や小さな物語にかえて残したいと思います。

想いは降り積む雪のよう

2009年12月19日 20時30分48秒 | 慕情

すっかり葉を落とした冬枯れの木立の下で
わたしは眠っている

わたしが心を閉ざしたのは
傷つくことも
傷つけることからも遠ざかりたかったから

だからわたしはこうして
冬枯れの裸木の下で
土に埋もれてじっと眠っているのです

風が吹きやみ
どうやら雪が降りはじめたようですね
目を閉じていても
土の冷たさでわかるのです

わたしの想いは
静かに降り積む雪のよう
人知れず 音もなく 
果てなく募ってゆくばかり

けれど季節が巡ってもしもふたたび
穏やかな陽の射すことがあったなら
わたしは小さな花を咲かせるでしょう
あなたのために
あなただけのために
優しく香る綿雪のような花を



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星の瞬く冬空の下で

2009年12月15日 21時13分59秒 | 慕情

つくづく不思議なものですね
ついこのあいだまで
深い記憶の底で眠っていたきみが
今夜はこうして
肩を並べて歩いている
言葉少なに
日常とは少し離れたふたりだけの場所を
かたわらで
ぼくを見上げて微笑むきみは
遠く過ぎ去った季節に舞う花びらのよう

どちらからともなく戸惑いがちに
そっと指をからめて身を寄せあったのは
あながち
寒さのせいばかりではないはずです
星あかりに照らされた
凍てつく夜の片隅で
ぼくらはうすく口唇をかさねたけれど
失った時の長さにくらべれば
それはほんの些細なことなのですね

夏に生まれたぼくの手が
冬に生まれたきみの手よりも冷たいなんて
そんなことすらぼくらは
今宵はじめて知ったのですから



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こうして再びめぐり逢えたのは

2009年12月11日 22時23分50秒 | 慕情

あれからどれくらいたつのでしょう
あなたはふいにまた ぼくの前に現れた
美しく歳月をかさねて
しなやかな香りを身にまとい
けれどそれでいて 
少女のころの愛らしさを
そのまなざしの奥にそこはかとなく残したまま

出逢いは思い掛けないものですね
遠く離ればなれになって
それぞれ歩んできたふたつの道が
いままたこうして交わるなんて
まるで
凪いだ水面に小石を投げこまれたような
そんな心持がするのはぼくだけですか

あなたの口唇からこぼれ落ちる
しとやかな言葉のひとつひとつが
ぼくの心をざわめかせ
やわらかなあなたの微笑みが
まるでゆりかごを揺らすように
夢見心地にさせるのです

あなたはきょうまで
どこでどんなふうに過ごしてきたのでしょう
あなたの面影のむこうに
過ぎ去った時の長さと
瑞々しかった懐かしい日々が
やさしく見え隠れしています



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ささやかな願い

2009年12月03日 21時29分00秒 | 哀愁

優しさをください
ほんの少しばかりでいいんです
たとえその場凌ぎでもかまわない
ほんのひと時
ひび割れた心が癒されるのであれば
ただそれだけでよいのです

想い出をください
たとえそれが
痛みをともなうようなことであったとしても
時が過ぎれば
その傷跡でさえ愛おしく
ときおりふれてみることができるのですから

囁いてください
わたしの耳もとでそっと
たとえそれが
偽りの言葉でもかまわない
その嘘を胸にわたしはきっと
微笑みながら死んでいける




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