鉄路が
大きく弧を描くその場所には
茫洋と田畑が広がっていて
春になるとあたり一面
れんげの花で埋めつくされて
線路のずっとさきには
あなたの暮らす町があって
かつて
なんども目にしたその景色
車窓を流れるあの眺めが
とても
とても好きでした
季節がめぐるとあの場所はいまも
やさしいれんげ色に染まるのでしょうか
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べそかきアルルカンの“徒然読書日記”
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べそかきアルルカンの“銀幕の向こうがわ”
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さようなら お幸せに
あれはあなたの
生まれながらのやさしさでした
ありきたりなその言葉は
ひっそり沈んでいるのです
いまもわたしの深いところに
半透明の結晶となって
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永遠と思えたものにも
じつは限りがあって
それを知ってしまったことに
悲しさを感じるかといえば
さほどでもなくて
むしろ
そのことに抗いもせず
ただあたりまえのように
うけいれてしまっていることに
ためらいをおぼえたりするのです
けれどほら
朝焼けの空は
あんなにも綺麗です
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日々のなにげないできごとを
だいじに残しておくために
折々付箋に書きとめて
そっと貼りつけておくのです
心の片隅 胸の奥の奥底に
けれどもそれは
時とともに干からびて
はがれ落ちてしまいます
一枚 そしてまた一枚
そうとは気づかないうちに
わかっていました
すべてはやがて
朽ちて消え去るということを
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口角をあげただけでは
微笑みにならない
なんてことはわかってる
だからなんなの愛なんて
かかわろうとは思わない
それならいっそ
陽のあたらない場所で
ひとり凍えて泣くほうがまし
嘘をかさねて傷つくよりは
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ふと見あげればそこに青空
雲ひとつない青すぎる空
まるで
なにごともなかったかのように
青く澄みわたった空だけが
ただそこにある
あきれかえるほど
救いようのない青さで
こんな日にかぎって
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若ものには未来があるという。やりたいこと
はなんでもできると、わけ知り顔で大人たち
がいう。でもぼくには未来なんてなかった。
さきのことは霧が立ちこめたようで、なにも
見えやしなかった。想像することすらできな
かった。やりたいことができないどころか、
やりたいことすら思いつかなかった。
ぼくが生まれたひと月あとにきみは生まれた。
きみが生まれるまでのひと月のあいだ、光の
射さないこの世界でぼくは泣き続け、わめき
続けた。きみが生まれてようやく少しは落ち
着きを取りもどしたようだけれど、きみと巡
り逢うまでにさらに十八年の歳月が必要だっ
た。やがてきみはぼくの知らない人と恋をし、
やさしい家庭を築いて、ふたりの子をもつ母
となった。
人はなぜ生きることに意味を求めるのか。生
きることに意味なんてないのに。あなたが生
まれた理由はきっとみつかる、などと薄っぺ
らな言葉を使う人間は信用ならない。若もの
には未来があるといったわけ知り顔の無責任
な大人たちとおなじ。理由なんかなくたって
生きていられる。けれどもし、取るに足りな
いぼくの人生にもなにか意味があるとしたら、
それはきみに出逢えたこと。
だからぼくはさきに死ぬ。きみよりさきに。
きみのいない世界なんて意味がないから。
きみのいない世界に生きてく理由を見いだ
せないから。きみのいない世界でぼくは生
きられない。だからぼくはさきに死ぬ。き
みよりもさきに。きみこそがぼくの生きて
る意味。きみこそがぼくの世界そのもの。
いまは遠いきみこそが。
生まれる前から好きだった。
きみはいまも美しい。
★picture:Marc Chagall★ ↓↓↓ ポチッっとね
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あぁ、なんてこと。ふと気づけばもうこんな
時間。すでに日が暮れかけている。なにもし
ないまま、また一日が終わろうとしています。
きょうやったことといえば、朝起きて熱いシ
ャワーを浴びて、目覚ましに苦い珈琲を一杯
飲んで、ラジオをつけて。
そのときラジオから流れてきたのは〝夜の女
王のアリア〟でした。まだ朝のはやい時間だ
というのにです。
その歌がオペラ〝魔笛〟の中で歌われている
ものだってことくらいは知っていたけど、自
分にはとても真似はできないな、などと感心
しつつ、窓をあけてしばらくぼんやり空をな
がめていたら、この空はきみの住む町につな
がっているのだという事実が、ふいに胸の奥
からわきあがってきたのです。ぼくはいつだ
ってきみのことを想ってる。きみは信じない
と思うけど、いつだってぼくはまだ、きみの
ことを想っているのです。たとえばいまこの
瞬間、きみはどこでなにをしているのだろう
かみたいな、他愛のないことだけれど。
とにかく朝から部屋に閉じこもっていると空
腹をおぼえることもなく、午後のひととき二
杯目の珈琲を口にしながら、本棚から適当に
ぬきだした画集をなんとはなしに眺めて過ご
しました。そのとき手にしていたのはエコー
ル・ド・パリの画家たちの作品を集めたもの
でした。モディリアーニの描いた退廃、ユト
リロの虚無、パスキンの憂鬱、シャガールの
幻想、フジタの乳白色、ローランサンのやわ
らかな色合い、キスリングの色彩のコントラ
スト。ラジオではセルジュ・ゲンスブールが
つぶやくように歌っていました。
そういえばきみはいつか、ジャン・フランソ
ワ・ミレーが好きだといっていましたね。お
ぼえていますか。学生街のカフェの壁に掛け
てあった〝羊飼いの少女〟が印刷されたポス
ターを観ながらそういったのです。あのとき
ぼくは、ぼくも好きだとこたえたはずです。
〝晩鐘〟などは好きな絵のひとつでしたから。
でも、ほんとうに伝えたかったのはそんなこ
とではなくて、きみが好きだということ。世
界中のだれよりも。もちろん、そのようなこ
とはおくびにも出しませんでしたが。きみは
きっと気づかずにいたでしょう。それとも素
知らぬふりをしてくれていたのですか。
そんなことを考えながら三杯目の珈琲をカッ
プに注いでいたとき、ラジオから聴こえてき
たのは、チェット・ベイカーが寂しげに歌う
〝マイ・ファニー・ヴァレンタイン〟でした。
きょうのような気怠い退屈な午後には、ちょ
うどふさわしい曲ですね。四杯目、五杯目の
珈琲を飲むうちに、あぁ、なんてこと。もう
日が暮れはじめました。
今夜も手紙を書きます。青い便箋に黒のイン
クで。
この便箋の青はアンダルシアの空の色を模し
たものだそうです。ぼくはスペインに行った
ことがないので、実際のところはわかりませ
ん。けれど、とてもきれいな青色です。手紙
を書き終えたらいつものように封筒に入れて、
机のひきだしに仕舞います。宛名を記すこと
も、切手を貼ることも、ましてやポストに投
函するなんてことはありません。
そうやって書き溜めた手紙が何通あるでしょ
う。ぜんぶきみ宛の手紙です。けっして読ま
れることのない手紙。
いつかまとめて火にくべます。アンダルシア
の空色の青い炎が、きっときれいに灯るでし
ょう。
ラジオからヘンリー・マンシーニの曲が流れ
てきました。十代のころ観た映画を思い出し
ます。そうだミルクを温めましょう。手紙を
書くのはそれからです。
朝がおとずれるまで時間はまだ、たっぷりあ
るのですから。
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べそかきアルルカンの“銀幕の向こうがわ”
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ほどよく冷えた炭酸水に
うす切りの檸檬がひとつ
それはまるで
いくつもの季節を通り過ぎた
遠い日の想い出
小さな泡が
はじけて消える
青すぎる空にとけていく
一羽のカモメ
まぶしすぎる太陽
そういえばむかし
Jという名のカモメがいた
彼には言葉にならない思いがあった
ぼくには語るほどのものが
なにもない
水平線のあたりに霞んで揺れる
置き去りにした日々
潮風はすこし涙の味がする
そう気づいたのはいったい
いつのことだったか
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きょうはとても静かです
どれくらい静かかというと
枯葉の舞い散る音が
聴こえるくらいの静けさなのです
もちろんこれは比喩です
木立が葉を落とす季節になったから
そうなぞらえてみただけなんです
こん夜はとても静かです
どれくらい静かかというと
オリオンの三つ星の瞬く音が
聴こえるほどの静けさなのです
もちろんこれは比喩です
都会の夜空で目にすることができるのは
あの三つ星くらいしかありませんから
けさはとても静かです
どれくらい静かかというと
あなたの胸の鼓動が
聴こえるくらいの静けさです
もちろんこれは比喩です
遠くで暮らすあなたとは
御目にかかることすら
できないのですから
★photo:Derek Langley★ ↓↓↓ ポチッっとね
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心がどこにあるのか知らないけれど
そこにはきっと
こんなふうに記されているはず
『コワレモノ 取扱注意』
でもひとは存外
そんなことはなおざりにして
気づくようすもありません
いつの間にかひび割れていたり
欠けたりしていても
だからみんな壊れていくのです
いつとはなしに知らぬ間に
少しずつ
あるいはある日突然に
★photo:Laura makabresku★ ↓↓↓ ポチッっとね
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きょうまでありがとう
夕暮れの淡い光のなかでそういって
あなたは右手をさしだした
てのひらのほどよい温もり
茜色に染まったきれいな空
ゆかしくやわらかな微笑み
あの日
さよならを言葉にしなかったのは
あなたの最後のやさしさ
いくつもの季節が足早に過ぎ去って
いつしか遥か遠い時の果て
きょうも夕焼雲がきれいです
★picture:Mark Rothko ★ ↓↓↓ ポチッっとね
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きょう花屋の店先で
スズランの鉢植えをみかけました
たまたま通りかかった小路に
ぽつんとたたずむ小さなお店です
聖母の涙とたとえられる
愛らしい花は
清らかに
慎み深く咲いていました
そのゆかしいたたずまいに
懐かしい面影が重なり
時のたつのも忘れて
ついついながめておりました
贈りものですかと
お店のひとにたずねられました
西洋のとある国では古くから
スズランの花を贈る習慣があるそうです
少し迷いましたが
首をふって家路につきました
いつのまにか
街灯がともりはじめていました
あなたはいかがお過ごしですか
やさしい時は
薄羽根のように風にさらわれ
いまはもう遥か遠い彼方です
★photo:Charles Marville★ ↓↓↓ ポチッっとね
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早春の浜辺は人影もなく
水平線にむかって投げた小石は
きれいな弧を描いて波間に消えた
ふり返ってみれば
砂に埋もれたひとすじの足跡
うす曇りの空の下
波音だけがやわらかい
★photo:Eve Turek★ ↓↓↓ ポチッっとね
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