早春の陽だまりと二十日鼠のひそひそ話
そして
真っ青な空にぽっかり浮かんだ
純白の綿雲の切れ端を少々
手風琴のやわらかな調べと
湖水のきらめきを大さじ1杯
忘れられた記念日に
気まぐれ猫の生あくび
それから それから
最果ての地ラップランドの白夜の吐息と
満月のオアシスでひと瘤ラクダが見る夢を
それぞれ大さじ2分の1程度
そうしてなにより忘れてならないのが
憂いをおびた微笑み 小さじ3杯と
ひとりでに零れ落ちてしまった
涙の粒をひとつまみ
木洩れ陽の揺らめきに
薔薇の香りとハチミツのまどろみをほんの少し
ほかにも たとえば そう
タンポポの綿毛の軽やかさや
初めてかわした唇づけの優しさなどなど
お好みによって
身のまわりにひそんでいる小さな魔法をかき集め
深めのお鍋にどんどん放り込んでみてください
分量はどれも
おおよその見当でかまわないのですから
あとはもう薪ストーブの火にかけて
コトコト煮込んで待つばかり
するとほら あらあら不思議
凍てついた気持ちが“ぽぉわん”ととろけてしまう
あったかまろやかポタージュの出来上がり
あなたもほら
心がふるえるそんな夜は
試しにどうぞ召しあがれ
★絵:エドワード・ハミルトン・ベル★ ↓ポチッっとね