べそかきアルルカンの詩的日常“手のひらの物語”

過ぎゆく日々の中で、ふと心に浮かんだよしなしごとを、
詩や小さな物語にかえて残したいと思います。

ときには心をからっぽにして

2007年04月29日 10時34分46秒 | 慰め種

ときには小鳥の歌声に耳をすましてみたり
ときには夕陽が沈むまで
じっとひとつところにたたずんでみたりして
おだやかな時の流れに身をまかせてごらんなさい

ときには記憶の底にまたたく星を数えてみたり
ときにはちぎれ雲のゆくえを按じてみたりして
しなやかに たおやかに 
心をすっかりからっぽにしてごらんなさい

ほんの小さな自然のいとなみの中に
あなたの求めるものは
そっとひそんでいるのですから

ときにはきらめく木洩れ陽に目をほそめてみたり
ときにはやわらかな風に髪をなびかせてみたりして
きっとどこかにあるはずの
心の置きどころを見つけてごらんなさい

ときには涙を流してみたり
ときには大きく深呼吸をしてみたりして
のんびり ゆっくり あせらずに
時の移ろいゆくさまを静かに愛しみながら

ときには優しく口笛を吹いてみたりして





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夢みるために 愛するために

2007年04月21日 20時14分26秒 | 慕情

つらい日常を生きてくために
夢みることは欠かせません
そして 夢みるためには
日々の苦悩に耐えていかなければならないのですね

こうしてあなたと離ればなれになることで
ぼくは夢から醒めたような気がします
けれどあなたへの愛はいまも
ぼくの中で冷めずに在りつづけているのです

哀しい日々を生きてくために
ぼくらには愛が必要です
そして 愛するためには
孤独であることの寂しさと
まっすぐ向きあわなければならないのですね

あなたのいない季節の中で
ぼくの心にふとそんなふうなことが
とりとめもなく浮かんでは消えてゆくのです
ねぇ、あなたの香るような微笑みは 
いまも愛らしいままですか








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あの日ふたりで歩いた道を

2007年04月15日 18時46分53秒 | 慕情

そういえばここらあたりは
いつかあなたと歩いた場所
疎水の流れに沿って
桜並木がつづいています
すでにもう花びらは散って
いまはつややかな若い緑が
静かに風にそよいでいます

あの日ぼくたちは
ふたり肩をならべて歩きながら
どんな話をしていたのでしょう
あなたにとってとりとめのないことが
ぼくにはとてもたいせつな
言葉の連なりだったはずなのに
もうそのことは
ほとんど記憶にありません
なのに  
木漏れ陽を見上げて微笑むあなたの横顔を
いまもはっきり思い浮かべることができるのは
いったいどうしたことでしょう

きょうはあいにくの曇り空です
若葉が木漏れ陽にきらめくことはありません
道ゆくひとの姿もまばらです
こうしてひとり歩いていると
あの日のなんでもないひとコマが
ひとつ またひとつ
ふとした拍子に
胸の底からよみがえってきます
こうやって少しずつ
記憶の断片を拾い集めるために
ぼくはまた
この道を訪れてしまうのです
とうに過ぎ去ってしまった
遥かむかしのことなのに

もう少しゆくと
たしか喫茶店がありましたよね
そうです
木立の蔭に隠れるようにして
ひっそりたたずむあの店です
あの日そこでやすらかな時を
いっしょに過ごしたことをおぼえていますか
あなたはしなやかに頬杖をついて
遠くを見つめていましたね
あのときあなたの視線のさきには
いったいなにが揺らめいていたのでしょう

きょうはあいにくの曇り空です
あの日は遠く過ぎ去ってしまったけれど
疎水を流れる水音は
いまも少しもかわりません
ぼくは色あせたアルバムを紐解くように
あの日あなたと歩いた道を
いまはただ
ひとりぽっちで歩いています
過ぎ去った日が
二度とふたたびもどらないということは
だれにもわかっていることだけど
いつまでも忘れられない時があるっていうことを
ぼくは知っているのです

きょうはあいにくの曇り空です
あの日あなたと別れた三叉路に
ぼくはいまもひとりたたずんでいます
そうして徐々に色あせてゆくのです
あなたの中で ぼくの影が
ささやかな想い出のかけらとして

きょうはあいにくの曇り空です
きょうはあいにくの
曇り空なのです








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過ぎ去ったとき

2007年04月11日 22時11分38秒 | 慕情

おなじ空の下に生きていながら
ぼくはあなたの暮らしを知らない

おなじ時間(とき)を過ごしていながら
ぼくたちはそれぞれの路を歩んでいる

おなじ季節を感じていながら
あなたには心をゆだねる相手がほかにいる

でも
ぼくは知っているのです
あの頃あなたの
いちばん美しかったときを









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あの頃きみが好きだったもの

2007年04月07日 18時50分10秒 | 慕情

あの頃きみが好きだったもの
朝もやの中の小鳥のさえずり
あの頃きみが好きだったもの
朝露にぬれた名もない野花
あの頃きみが好きだったもの
しぼりたてのオレンジジュース
あの頃きみが好きだったもの
見わたすかぎりの菜の花畑
あの頃きみが好きだったもの
むらさき霞むれんげ草
あの頃きみが好きだったもの
木漏れ陽ゆれる石だたみ
あの頃きみが好きだったもの
秋の日の霧雨

あの頃のぼくたちは
濡れて歩くことも厭わなかった

あの頃きみが好きだったもの
くっきり空をよこぎるひこうき雲
あの頃きみが好きだったもの
儚げにぼんやり浮かぶ真昼の月
あの頃きみが好きだったもの
青葉きらめくせせらぎの音
あの頃きみが好きだったもの
高台から眺めるあかね雲
あの頃きみが好きだったもの
ミレーの描いた祈りの絵
あの頃きみが好きだったもの
蒼く澄んだガラスの小瓶
あの頃きみが好きだったもの
愁いをおびたノクターン

きょう
街のかたすみの
小さな花屋の店さきで
ふと目にとまった
あの頃きみが好きだった花

あの頃きみが好きだった
あれやこれやのすべてのものが
どうしようもなく懐かしい

あの頃きみが好きだった
哀しい音色のオルゴール









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青い断片(かけら)

2007年04月01日 16時02分41秒 | 叙情

世界がとつぜん寝返りうった
ぼくは表面張力のグラスのように
視線を硬直させて立ちすくむ

ステンドグラスが砕け散る
蒼く透きとおった瞬間(とき)が遠ざかる
ぼくはいつのまにか
空の広さを忘れてしまった

ポケットの中の文庫本
赤茶けたページのすき間から
色あせた花びらひとつ
舞い落ちた
はらり はらりと
舞い落ちた
かび臭い
青春の断片(かけら)が
地に落ちた





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