脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

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Forza! Kansaiiiiiiiiii!! ~ナビスコ杯予選リーグ グループA第5節~

2008年06月01日 | 脚で語るJリーグ
 京都、神戸とダブルヘッダー観戦で見届けたヤマザキナビスコカップ予選リーググループA第5節の2試合。ACLに出場、かつ前年優勝を遂げたG大阪を除くJ1関西勢としては、決勝トーナメントに進出してその意地を見せたいところ。共にリーグでは好調の上位陣、名古屋と浦和が同居するこのグループAも終盤に差し掛かってきた。しかし、関西勢の2チームの結果は好対照の結果となってしまった。

 <京都VS名古屋 @西京極>

 

 前節、神戸に0-1と惜敗を喫した京都は、2位以内に入るためにも連敗は避けたい。首位名古屋との勝ち点差は4ながら、2位神戸との勝ち点差は1。ここで京都が勝たないと面白くならない。そんな中で、京都にとっては名古屋はこのナビスコ杯、リーグ戦合わせて今季1勝1分と負けていない。それが光明を見出す唯一のポイントだった。おまけに玉田、楢崎、吉田(五輪代表)を日本代表招集で、バヤリッツァ、山口を累積で欠く名古屋に対して絶対的優位な状況で臨めるゲームだった。
しかしバックアップ陣主体で臨む名古屋、ほぼ主力が揃う京都、共に“策に溺れた”と称すべきか、どちらが勝ってもおかしくない紙一重の激戦を演じることとなる。

 ほぼ主力で臨んだ京都はその精神的余裕も相まってか、最高の滑り出しを見せる。開始0分、MF佐藤がスローインからの相手選手のクリアをそのままミドルシュートで一閃。そのシュートがゴールに突き刺さり早くも先制点を奪う。ところが、その勢いが続かず、名古屋がボールを繋ぎ出すと一気に流れは名古屋に。と言ってもサイド攻撃からフィニッシュを狙う名古屋に対して、増嶋が名古屋FW巻をしっかり抑え、フォアリベロのシジクレイが対応力を見せるなど守備面で機能していた京都はカウンター主体の戦い方へとシフトしていく。
 前節対峙した神戸がロングボール主体で挑んできたことに比べると、名古屋は的確にパスを繋いでチャンスを作る。MF藤田、深井と右サイドのDF竹内が持ち味を出して攻撃のチャンスを作る中盤の時間帯を、京都はGK水谷の好守もあって凌ぐのだったが、できることならポゼッションを奪って攻撃を作りたかった。京都は、この日前線に復帰し、三木とのマッチアップでも絶対的な強さを誇っていた田原に上手くボールを預けたいところだったが、それが適わず、徳重と柳沢を中心にフィニッシュまで再三持っていくものの、詰めが甘かった。

 

 後半、ショートパスを繋いでポゼッションを掌握する名古屋に対して、54分にアタリバを投入する京都。この采配は一旦功を奏す。フィジカルコンタクトで絶対的な強さを見せるアタリバによって、名古屋は次第にそのペースを消されていくのだった。流れは徐々に傾きつつあることもあって、その後森岡を中山に代わって投入し、守備のウエイトを高めた京都。追加点を奪う前に失点を恐れたか、このシフトチェンジが名古屋の思惑にハマるのであった。
 ここでピクシーことストイコビッチ監督が動く。森岡交代と時を同じくしてDF三木に代えて、FW津田を投入。それは前半からペースを握りながらも、同点弾が奪えないことに再三苛立ちを見せていた指揮官の強烈なメッセージであった。71分にはFW新川、77分にはMF花井とフレッシュな若手を次々送り出し、少しでも形勢逆転を狙う名古屋。その後も耐える時間は続いたが、京都が“策に溺れた”ことを見逃してはいなかった。
 リードしている京都は依然効果的なカウンターで決定機を作る。しかし追加点は奪えない。この焦りと余裕の合わさった京都に名古屋のカウンターが炸裂する。85分に巻が起死回生の1発で1-1の同点に追い付くと完全に京都の集中力が切れた。88分には要らぬファウルで攻撃の要である徳重が退場処分。その2分後、ロスタイムに入ったところで、京都を待ち受けていたのはまたしても名古屋のカウンターから津田の逆転弾献上。京都万事休す。結局、詰めの甘さと早い時間に守備偏重を敷いたことで、それをサテライト組とすら言える陣容の名古屋に突かれた。85分までの勝利の予感は、結果的に勝ち点0という最悪の結果。なんとも後味の悪い空気だけがブーイングの鈍い音色にその姿を変え、西京極に響いたのだった。

 

 <神戸VS浦和 @ホムスタ>

 場所は変わって、ホムスタで19時より行われた2位神戸と最下位浦和の一戦。代表招集で大久保を、そしてレアンドロを警告累積で欠く神戸は勝って決勝トーナメント進出に大きく弾みをつけたいところ。一方の浦和は、五輪代表も含めた代表組が細貝、闘莉王、鈴木、エスクデロ、梅崎、阿部と6人も奪われている。おまけにケガで永井もいない。しかし、このまま素直に最下位で終わる訳にはいかない。代表から外れた高原、ここで奮起したい田中、そしてケガから帰ってきたポンテがベンチ入りとそれなりのメンバーを揃えている。17,453人が詰めかけたホムスタの一戦は一進一退を争う好ゲームとなった。

 

 神戸は前節虎の子の1点を奪ったFW吉田がスタメン。古賀に代わって鈴木が左アウトサイドに入り、右にはベテラン栗原を起用。北本の復帰したDFラインもここ2試合安定を見せていたが、開始わずか4分高原に先制点を奪われる。浦和は、エジミウソンを1トップに起用し、その後ろで田中と高原を2シャドーで起用。その3人がゴールに近い位置で互いに良い仕事をした結果だった。神戸は、本来ならば金南一とボッティが組む中盤の底が松岡、田中というコンビ。守備時の松岡の負担は相当であって、浦和の強力な2シャドーの連携に手を焼いた。それは前半攻撃参加を自重していた石櫃も同じく。再三左サイドでドリブルで仕掛ける田中達のケアに追われた結果だからであった。
 しかし神戸は、自分たちのリズムを見失わない。浦和の先制されたとは言え、怖さは感じていなかったのだろう。16分にはCKからDF小林が強烈なヘッドで浦和ゴールを脅かす。そして松田監督の采配にその力強さは現れた。わずか22分で馬場に代えて、俊足の松橋を投入。先制点以外で決定的なチャンスは与えていない。むしろ、ロングボールを松橋、ウイングの位置を彷彿とさせるポジショニングの鈴木に当てて、攻撃のチャンスを狙うのだった。36分には、鈴木のCKからフリーの栗原が会心のヘディングシュートを叩き込み、同点に追い付く。ここまで2本のCKで小林がターゲットになっていたため、その小林がニアに走り込んだことで、効果的に浦和DFを釣ることができた。

 

 両チーム後半に入ると、運動量が落ち込む。浦和もFW高原が先制点以外で全く決定機を作れなくなっていた。26分に途中出場のポンテからエジミウソンが前で潰れた所に走り込んだが、ゴールは奪えず。ようやくピッチに戻ったポンテも本調子とは言えず、強引なドリブル突破で攻撃面での不調和を招いた。結局後半の浦和の決定的な局面はこのプレーだけ。気迫の守備を見せるものの、サッカーというスポーツは必ず流れがどちらかに傾く。足の止まった時間帯を乗り越え、神戸は86分、ロングボールに右サイドを走り込んだ松橋がキープ。後ろからフォローに駆けつけた田中がクロスを入れると、中央から浦和DF隙を突いて栗原がこの日2点目となる鮮やかなシュートを決める。その瞬間グッタリと倒れこむ坪井の姿に、この日の浦和がトドメを刺された様が窺えた。

 

 タイムアップの瞬間、歓喜の大声援が巻き起こる南スタンド。そしてまさかの逆転負けに凍りつく北スタンド。選手たちの表情を表しているその対照的な光景に精神的な面で神戸に強さがあったことを実感できる。2連勝で何とか準々決勝進出に望みを繋いだ。代表組の不在を差し引いても、このメンバーでの勝利は神戸にとって大きいはずだ。それは朱勲の35歳のベテランが放った言葉に集約されるだろう。
 「誰が出ても神戸のサッカーができるというのを証明した」
 これが今季の神戸の違いを感じさせてくれる理由だ。

 明暗の分かれた関西勢。代表組がいないにも関わらず、主力メンバーで敗退が決まってしまった京都の不甲斐無さが神戸の輝きとのコントラストを浮かべた。そんな5月の最終日であった。